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海上自衛隊の潜水艦と釣り船が衝突。若き士官を襲う過酷な試練。
その父は昭和16年、真珠湾に出撃して-。
時代に翻弄され、時代に抗う、父子100年の物語が、いま始まる。
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特殊潜航艇の搭乗員で、太平洋戦争時、日本人初の捕虜となった酒巻和男氏、氏をモデルにして書かれた小説ということで読んでみた。
しかし、読めども氏であろう人物が一向に登場しない。
実は、山崎豊子最後の小説で、それは完成されることなく未完だった。
取材もだいぶ終わっていたようで、完成した作品を読むことが出来ずとても残念だ。
けれども、本書の主人公花巻朔太郎(モデルの息子という設定の人物)を通して、自衛隊とは何かという問題を改めて考えることができた。
ただ、それを考えると続きが読めないことがより一層悔やまれる。
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主人公の花巻朔太郎(はなまき さくたろう)は東都工業大学と防衛大学を受験し、防衛大学に合格する。
防衛大学入学には兄姉の反対があったが、元海軍軍人であった父は反対しなかった。
花巻朔太郎の乗る潜水艦「くにしお」は観光用の遊漁船と接触し、遊漁船を沈没させる。
民間人30人の死者を出す大事故だった。
朔太郎は過酷な試練に苦悩する。
東洋フィルのフルート奏者の小沢頼子と出会い、恋心を抱くが、事故の遺族への弔問や海上自衛隊からの聴取に時間を取られ、頼子と会う機会もなく、頼子のことは忘れようと煩悶する。
当時の自衛隊は金食い虫の役立たたずと、国民から疎まれていた。
国民の知らない所で国防の任務に携わっているのに、理解されない自衛隊とは、なんなのか?と自問自答するうちに、事故の処理が一段落したとき、朔太郎は自衛隊を辞めようと思い至る。
そんな中、過去を一切語ろうとしない父が、旧帝国海軍の真珠湾攻撃時に日本人捕虜第一号となった事実を知る。
自衛隊の存在意義、かつて米国と戦った父の日本、戦争と平和について考える朔太郎の煩悶。
本作は山崎豊子の未完の遺作となって、3部構成の1巻目で終わっている。
頼子とのロマンスの結果は? 父の捕虜第一号となった、その後は?
自衛隊を一時は辞めようと思った朔太郎のその後は?
いろいろと未完のまま終わっているので、もの足りないものとなったが、山崎豊子が病床の身で、力尽きるまで書き続けた本作は、生き続けていたら、間違いなく長編大作と成ったでしょう。
本作も実際の事故を起こした潜水艦「なだしお」関係者、自衛隊、遺族、米海軍など、沢山の取材および、膨大な資料に基づいて書かれている。
偉大な国民作家の遺作となった本書を読んで良かったとおもう。
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読み進めていくと段々と面白くなってきて、海難事故の裁判が進みボルテージ上がってきたところで終了、という。。
とにかく途中で終わってしまって未完成となってしまったことが無念でならない。最後まで読みたかった。。
最後、編集チームの方たちがおおまかなあらすじは書いてくれたけども、やはり著書が描いたものとは温度感が違い、流し読みになってしまった。
終わり方については残念無念だった一方、そんな中でも多くの人に認知され読まれている本だというのは素晴らしいと思う!新潮文庫100に選ばれた実績もあり。
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山崎豊子さんの遺作。
海上自衛隊のエリート潜水艇員、花巻朔太郎は勤務中の事故により自衛官であることの意義に悩み自衛隊の辞職を考える。彼は帰国した父の過去を知り、戦争と軍団の意味について考え始める。
大作になるはずの本作、巻末の構想の部分や秘書の方の話を聞き、お話の全容を読みたかったと感じた。時代を超えて楽しめる作品を生み出す素晴らしい作家さんの作品、コンプリートしたい。
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未完だからなのか、よけいに『続きを読みたい!』と強く思った。自衛隊、潜水艦など、かなり特殊な環境をさも目の前で見ていたかのような描写と登場人物たちの心情がリアルに丁寧に紡ぎ出されており、とても読み応えがある。
著者が執筆されていた時代よりも、より日本を取り巻く近隣諸国や同盟国との国際情勢や自衛隊の活動範囲が複雑化しており、末巻での『問題提起を受け止め答えを考える』との言葉に深く頷いた。
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山崎豊子さんの最後の小説。
執筆途中で亡くなってしまったので、物語は終わっていないが、それでも読む価値ある1冊。
山崎豊子さんは人間の心象描写がすごくわかりやすく、自分もその場にいるような感覚になります。
この小説は戦艦乗り、海上自衛隊が舞台。
日本で自衛隊というと陸上の方が目立っているが、地政学的にシーパワーである日本において海上自衛隊の重要さを改めて実感。
戦争と正義がテーマになっているが、その正義は何か、手探りで自分の正義とは何か向き合いながら生きていく主人公。
自身の正義も何か非常に考えさせられる。
山崎さんの作品は今後も読み続けたいと思いつつ、最後まで読んでみたかったと、、今でも思います。