紙の本
旧制高校と教養
2019/11/14 22:28
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
旧制高校と教養について記した本。旧制高校の教養主義はたしか平成になってゆとり教育につながっていったような気がするが、当時の担当者にも読んでもらいたいような本。日本の旧制高校とイギリスのパブリック・スクールの違いについて、前者のほうが能力主義だというのは納得がいった。
電子書籍
学歴貴族と近代日本
2019/11/23 13:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
近代日本において「学歴貴族」となるべく定められた旧制高校などの教育システムについて記した本。旧制高校については、北杜夫を通じてしか知らなかったので、面白かった。
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旧制高等学校が明治から昭和にかけていかに変質し、またどう見られてきたのかの概要がつかめる好書。さらにほかの資料をあわせ読む必要はあると思いますが、読みやすく楽しめました。
類書に見られる旧制高校への嫌悪あるいは崇拝の感情がある程度抑制されており、フェアな書き方だと思います。
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旧制高校とか帝大の歴史について、いろいろ整理できて、良い本。
高等教育のマス化・学歴インフレというのは現在は既に飽和状態で、なおかつ未だに大学は増えるし少子化は進むし。さらりまんの価値は大暴落。
著者によれば教養主義は昭和10年代に瓦解していておかしくなかったが、戦争で生き延び、学生紛争でとどめをさされた。じゃ、現代の大学は何を拠り所にしてるのか。社会に求められているのはどんなことか。結局俺たちどうすりゃいいの?って昔からずっと考えてきたことは実は同じだね。
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京都大学名誉教授(教育社会学)の竹内洋(1942-)による近代日本における社会装置としての旧制高校論。初出は中央公論社「日本の近代」シリーズの第12巻の同名書(1999年4月)であり、今回はその初の文庫化である。
【構成】
プロローグ 学歴貴族になりそこねた永井荷風
第1章 旧制高等学校の誕生
第2章 受験の時代と三五校の群像
第3章 誰が学歴貴族になったか
第4章 学歴貴族文化のせめぎあい
第5章 教養の輝きと憂鬱
第6章 解体と終焉
エピローグ 延命された大学と教養主義
「吁、宮(みい)さんかうして二人が一処に居るのも今夜ぎりだ。
お前が僕の介抱をしてくれるのも今夜ぎり、僕がお前に物を言ふのも今夜ぎりだよ。
一月の十七日、宮さん、善く覚えてお置き。
来年の今月今夜は、貫一は何処でこの月を見るのだか!
再来年の今月今夜……
十年後の今月今夜……
一生を通して僕は今月今夜を忘れん、忘れるものか、死んでも僕は忘れんよ!
可いか、宮さん、一月の十七日だ。
来年の今月今夜になつたならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから、
月が……月が……月が……曇つたらば、
宮さん、貫一は何処かでお前を恨んで、
今夜のやうに泣いてゐると思つてくれ(以下略)」
(尾崎紅葉『金色夜叉』(青空文庫版)より、改行は引用者)
尾崎紅葉の『金色夜叉』の有名な熱海の場面が、初出の単行本、文庫化された本書通じての表紙となっている。宮を足蹴にする貫一のいでたちは、学生服にマント、そして学生帽には白線が入っている。貫一こそ、本書で言及される学歴エリートの頂点に登らんとする、第一高等学校の生徒であった。
明治10年にできた東京大学は明治19年に帝国大学と名前を変えた。しかし、変わったのは名前ばかりではない。
東京大学時代は、工部省、農商務省など現業系官庁が抱えた専門学校に比して、官界への就職という点で特に優遇をされたわけではなかった。
しかし、帝国大学へ改組されるのと時を同じくして公布された官試験試補及見習規則においては、帝国大学の法科・文科については、短期間の見習いを経て高級官僚たる奏任官へ無試験で選考を進められるようになった。帝国大学令公布以後、続々とナンバースクールが整備され、帝国大学とあわせて国家の教育予算の過半を注ぎ込まれるに至り、ナンバースクールから帝国大学へ至る学歴貴族ヒエラルキーが成立したと本書はいう。
大日本帝国の官僚機構への人材輩出機関としての、東京大学→帝国大学→東京帝国大学については様々な文献で言及されているが、本書の特色はその帝国大学へ進学する本流であった旧制高校、中でも明治期に官立として設立されたナンバースクールとはいかなる学校であったかを明らかにする。
旧制高校の成立史、旧制中学から旧制高校へどのような階層的・地理的広がりをもった生徒が入学してきたか、そして寄宿舎での独特な生活に代表される旧制高校文化について、統計資料、手記・回想などを適宜引用しながら展開してい��。
その中でも特徴的な文化である「教養主義」については本書でも第5章・6章で取り上げられるが、本書初出の4年後に上梓された『教養主義の没落』(中公新書)で著者が真正面で取り上げ、掘り下げるテーマとなる。(よってここでは取り上げない)筒井清忠『日本型「教養」の運命』と併読すると立体感が生まれなお面白いだろう。
旧制高校出身者という近代日本におけるインテリ・学歴エリートが、高いプライドを持ちながら常に何を煩悶し続けていたのか、その一端が垣間見られる一冊である。
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プロローグ 学歴貴族になりそこねた永井荷風
第1章 旧制高等学校の誕生
第2章 受験の時代と三五校の群像
第3章 誰が学歴貴族になったか
第4章 学歴貴族文化のせめぎあい
第5章 教養の輝きと憂鬱
第6章 解体と終焉
エピローグ 延命された大学と教養主義