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ビアズリーの妄執のような絵にかける思いを,弟に愛憎半ばする思いで見守った姉メイベルの視点で描く.そしてビアズリーを物語りながらオスカーワイルドが際立っている構図である.サロメがまるで劇中劇のようだった.
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抜群に面白かった。まるでオスカーワイルドとビアズリーのやり取りを見ていたかのようで、どこまでがフィクションなのか全く分からない。相変わらず情景描写が秀逸。
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初読。図書館。いい題材なのにいまひとつなのはなぜだろうと考えてみた。退廃も愛憎も男色も近親も現代の舞台では薄まってしまう。その時代に比べればそういった面では寛容な世の中だ。100年以上前の時代背景の中でこそ強烈なインパクトがあるテーマなのではないか。描かれた時代への理解も含めて想像力を働かせる力が私には欠けているようだ。いや、サロメがヨカナーンの首を欲しがる気持ちを理解できない私は、物語の出発点にさえ立てていないのかもしれない。
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19世紀末のロンドンを舞台にした絵画、画家にまつわる謎解きものである。「サロメ」にまつわる様々な感情が渦巻く中、二人の画家がお互いに出会ったことで、引き起こされる新たな感情などが渦巻き、絵画の美しさや精巧さと当時のロンドンの町並み、時代背景が相まって物語の雄大さを感じさせるものだった。時代に翻弄され、灰色がかったセピア色の様な雰囲気を醸し出されている街と二人の画家の生き方が如実に表現されているのが物語のスパイスであり、良い。物語の世界観は白黒映画の世界に引き込まれてしまうかのようであった。
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ファムファタールを結局彼女は演じることができたんだ。首を欲しがるような女、弟にもその舞台を見せてあげたかった。現代の部分があんまり響いてこなかったなあ。
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禁断の戯曲・サロメの作者
オスカー・ワイルド
絵画の世界に革命 とも言える衝撃を与えた天才画家・オーブリー・ピアズリー。
二人の天才がいかにして巡り会い「サロメ」という世界を揺るがす傑作を生み出すに至ったか。
この小説では、姉で女優のメイベル・ピアズリーが、すべてのキーパーソンとして描かれている。
自身の弟にむけた異常とも言うべき愛情、ワイルドへの嫉妬、脚光を浴びることへの渇望。
張り巡らせた策謀はあまりにも皮肉な結末へ。
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ビアズリーのサロメはなぜ醜いのか不思議に思っていた。王女で魅力的のはずなのに。モローの「出現」に出てくるサロメのがそれらしいのでは?一方でビアズリーのサロメは美しくないにもかかわらずこんなに引力があるのはなぜだろうとも思っていた。そんな疑問にも答えてくれる一冊だった。
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原田マハの『史実に基づいたフィクション』シリーズ。うむ、そろそろシリーズとしてまとめて欲しい。
今回は、オーブリー・ビアズリー。絵は見たことはある。だけど、19世紀末の作品とは思っていなかったというのが正直なところ。
こうなると、ワイルドの「サロメ」が気になる。気になる…
2017/2/22読了
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天才挿絵画家オーブリー・ビアズリーと、女優であるその姉を中心とした話。
楽園のカンヴァス、暗幕のゲルニカに続く、画家の話だが、今回はイラストレーターである。さらに戯曲作家も絡む。
一言でいえば、女は怖い、ということ。
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19世紀パートに入った途端、空気が変わる。
音が聞こえてくるような情景描写。
オスカーワイルドとオープリービアズリーのサロメを下敷きにしたオーブリーの姉であるメイベルの物語。
なにか不吉な物が足元にじわりじわりと近づいてくる予感のようなざわざわした感覚に、ページをめくる手が止まらない。
徹底的に色を排除したからこその鮮やかな禍々しい感じ。
自分の中にある邪悪な物をひきずりだされてしまうような恐ろしさ。
果たして18世紀終わりのサロメは誰だったのか。
…恐ろしい話ですが、とても魅惑的。
楽園のカンバスや暗幕のゲルニカとはまた違った空気でした。
そして。あとで調べて、この本の装丁がイエローブックなのだと知った。凝ってるなぁ。
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これはフィクション
登場人物は実在ではあるが
後は原田マハの妄想である。
1890年代のロンドンそしてパリ
その時代その場所をオーブリー・ビアズリーの姉メイベルの視線で映し出す。
まさに読者もその場所にいて同じ空気を吸っているかのような思いにさせられる。
ちょっと悪趣味かと思わせる恐ろしさがたまらない。
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現代のロンドン。日本からビクトリア・アルバート美術館に派遣されている客員学芸員の甲斐祐也は、ロンドン大学のジェーン・マクノイアから、未発表版「サロメ」についての相談を受ける。
このオスカー・ワイルドの戯曲は、そのセンセーショナルな内容もさることながら、ある一人の画家を世に送り出したことでも有名だ。
彼の名は、オーブリー・ビアズリー。
保険会社の職員だったオーブリー・ビアズリーは、1890年、18歳のときに本格的に絵を描き始め、オスカー・ワイルドに見出されて「サロメ」の挿絵で一躍有名になった後、肺結核のため25歳で早逝した。
当初はフランス語で出版された「サロメ」の、英語訳出版の裏には、彼の姉で女優のメイベル、男色家としても知られたワイルドとその恋人のアルフレッド・ダグラスの、四つどもえの愛憎関係があった……。
退廃とデカダンスに彩られた、時代の寵児と夭折の天才画家、美術史の驚くべき謎に迫る傑作長篇。
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現代の研究者と学芸員のやりとりから、ぐぐっと時代を遡ってオスカー・ワイルドとオーブリー・ビアズリーの時代の生々しい出来事に惹きこまれるように入っていく手法からして見事である。主に語るのは、オーブリーの姉のメイベルであり、自らも渦中に巻き込まれながら、オスカーとオーブリーののっぴきならない関係と、そうならずにはいられなかった魂の出会いが語られていて、まるで自分もそこにいるかのように高揚した心持ちにさせられる。読後もしばらくはこちらの世界に帰って来られないような印象の一冊である。
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凄い本だ。原田マハさんの本はたくさん読んでいるけど、これはベストスリーに入る。愛する男の首が欲しいと願ったサロメ。表紙は、サロメがヨハナーンの首に口づけをするシーン。なんて狂気に満ちているのだろう。間に挟まれる黒いページが、舞台が暗転したようにも、物語に死が訪れたようにも感じられ、ゾクっとする。装丁は大久保明子さん。
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どこかで目にしたことのある絵。印象に残る絵でしたが、まったく画家のことは知りませんでした。世紀末のロンドン。時の寵児のような魅力的な作家と彗星のごとく現れた新進気鋭の画家。それらが織りなす愛憎劇が、「姉」という当事者でない目から描かれていて、ミステリーのような雰囲気もかもしだし、物語に釘づけになりました。美しく妖艶で排他的なビアズリーの絵画を、絵でなく言葉によって鑑賞したようなすばらしい本です
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現代のロンドン。日本からビクトリア・アルバート美術館に派遣されている客員学芸員の甲斐祐也は、ロンドン大学のジェーン・マクノイアから、未発表版「サロメ」についての相談を受ける。このオスカー・ワイルドの戯曲は、そのセンセーショナルな内容もさることながら、ある一人の画家を世に送り出したことでも有名だ。彼の名は、オーブリー・ビアズリー。当初はフランス語で出版された「サロメ」の、英語訳出版の裏には、彼の姉で女優のメイベル、男色家としても知られたワイルドとその恋人のアルフレッド・ダグラスの、四つどもえの愛憎関係があった……。
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話は現代のロンドンと、1900年代の、ワイルド、ビアズリーたちが生きていた時代とに分かれる。個人的にはこの時系列が違ってたらもっと衝撃を受けたかな(歴史的事実を知らないので)と思った。
登場人物は実在だけど物語だけフィクション。原田さんの作品はそういう所が面白く、もっと美術館に行きたくなる。憎悪・嫉妬・裏切り・・・でもなんか温かい気持ちにさせてくれる。