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大統領選の1年前からトランプの動向を取材していた、朝日新聞記者のルポ本。著者自身始めた頃に本になることを予想できなかったのではないかと思うほど、トランプは一部の人の人気者程度だった。しかし、取材を進める中で、ミドルクラスだったアメリカ人、ブルーカラーで炭鉱や製造業に従事していたアメリカ人にはあまりにも深刻な現状があり、それを変革するにはトランプは格好のシンボルになったに違いない。ラストベルト(五大湖ちかくの製造業地帯)、ニューヨークなどの東側のアパラチア山脈を超えた地帯はトランプ王国と化していた。
日本からは全くわからないトランプフィーバーの裏が垣間見える内容だった。
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トランプがまだ有力候補ではなかった2015年後半から、支持者への取材を積み重ねた成果。ラストベルトを中心とする普通のおじさんたちが、なんでトランプを支持するに至ったのかが、詰問することなく、丁寧に描かれている。1932年に普通の人たちに希望を与えたのがローズヴェルトだったのに対して、その84年後はトランプであることを、私たちはどう考えればよいのだろうか。
トランプ当選時の米国の雰囲気を伝えるルポとして、長く読みつがれるだろう。
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迫真のルポだ。登場する一人一人は洗練されていないが、ひたむき。いわゆる頭でっかちがいない。庶民の声だ。エスタブリッシュメントを嫌い、ビジネスの手腕を評価する人々。今のアメリカに何が起きていて、トランプがなぜ勝てたか納得できた。グローバル化はアメリカをも疲弊させているのだ。
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本書は、トランプ支持者への取材をベースにアメリカの現状を私たちに示してくれるような内容でした。
ニュースなどでよく取り上げられるトランプの過激な発言や行動だけに注目するのではなく、そんなトランプが支持された背景をもっと考えなければならないなと強く感じました。
本書の中では、「夢を失った地域は活力も失う。」(p.211)という一文が最も印象的でした。
また、日本の将来に対しても危機感を抱いている身としては、国を少しでも良くしたいという熱い思いを持った国民が多くいるアメリカに対して、少しうらやましいなという気持ちも抱きました。
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第6章までは、とても面白かった。とても丁寧に取材していて、トランプがなぜ支持されているのか、とてもよくわかった。そして、第6章では、サンダースの支持者とトランプの支持者が実は同じようなことを言っており、またサンダースとトランプも似ているという興味深い指摘があり、第7章からの分析にとても期待したのだが・・・。
トランプの支持者、またサンダースの支持者が共に抱いているエスタブリッシュメントへの不信感、なぜエスタブリッシュメントはミドルクラスの要望に応えられていないのか、どうすれば彼らの不信感を払拭して、トランプのような人物が権力を握らないようになるのかという点への切り込みが十分でなく、トランプが当選したら大変なことになる、という指摘が主で終わってしまったのがとても残念だった。まあ、トランプが本当に大統領になる前の執筆がほとんどだからと割り引いても、ちょっとがっかり。どこの国でも、日本でも起こり得る現象であるのだから、もっと深い分析があると読みごたえがさらに増したのにと思った。
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トランプが大統領に当選した後ではなく、当選するまでのアメリカの状況を描写している。
支持したのはどのような層か?に焦点が当てられている。
80年代まで続いていたかつての「強いアメリカ」像が失われ、閉塞感が漂う中、移民問題や既得権益への不満が溜まり、トランプは支持を集めていった。
書かれたのは2017年なので、(2019年の現在では)変化が早い政治の世界ではやや古い情報かもしれないが、次の大統領選がどうなるかという観点でも、当時の大統領選の推移の分析は面白い。
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トランプを支持する、メディアからはなかなか見えない主に地方のアメリカ人の考え方や感じ方を丁寧に取材してる。
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2020年の大統領選挙を経た2021年の現在から見返してみると、まさしくこの5年間に議論されていたことを2015年の段階で浮かび上がらせていた見事な取材力だと感じる。
MBA留学中に知り合ったアメリカ人のうち最も親しくなった友人がインディアナ州出身であった。他の多くのアメリカ人達が東西沿岸部出身であることに対して、彼は彼自身のことを他のアメリカ人達とは少し違うと言っていたが、まさにその背景はこの本で描かれているラストベルト、アパラチア山脈地方のバックグラウンドによるものであった。
彼の話を聞いた際にも感じた事柄であるが、アメリカを外から見る際にはこういったデモグラフィーの違いによる多様な背景があることを念頭においておかなければ見方を誤るだろう。
実際に2020年の大統領(選挙人)選挙でも依然トランプは7000万票以上を集め、2021年1月のキャピトル・ヒル襲撃を経て退任したあとも熱烈な支持者を集めている。かの共和党でさえもトランプ退任後もトランプ人気に配慮した政党運営をしなければならないことは、今後のアメリカ社会におけるデモグラフィーの動向がアメリカ政治、ひいてはスーパーパワーをバックグラウンドとした国際社会への影響にも強い影響を及ぼす可能性を示唆しているだろう。
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ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書) 新書 – 2017/2/4
アメリカン・ドリームが死んだ先にあるものは現状への怒りだ
2017年5月20日記述
金成隆一(かなりりゅういち)氏による著作。
現在、朝日新聞ニューヨーク支局員。
1976年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。
(大学の恩師は久保文明氏)
2000年朝日新聞社入社。
大阪社会部、米ハーバード大学日米関係プログラム研究員、国際報道部などを経て、ニューヨーク特派員。
教育担当時代に「教育のオープン化」をめぐる一連の報道で第21回坂田記念ジャーナリズム賞(国際交流・貢献報道)受賞。
好物は黒ビールとタコス。
他の著書に『ルポMOOC革命―無料オンライン授業の衝撃』がある。
2015年11月~2016年11月まで
アメリカの特にラストベルト周辺、アパラチア山脈の人々へのインタビュー、連載記事をまとめた本。
TVの特集などでトランプ支持者について何となくわかった気になっていたけれども、本書を読んで問題はより根深く深刻であることがわかった。
トランプが強かったのはバーニーサンダース上院議員に人気があったのとつながっていた。
本書では第6章でサンダース支持者について紹介している。
可能であればサンダース支持に関してもより深く取材し記事を読んでみたかった。
著者はプロローグにあるように米大手メディアのトランプ番記者にトランプが大きく伸びる理由を教えられた。
このことが大きな示唆として取材のはずみになったに違いない。
しかしこの番記者、トランプの遊説先を地図に落としてみるなど分析に優れている。
本書を読むとウォール街、シリコンバレーなど一部の地域しか1990年代の好景気の恩恵を受けていなかったことが分かる。
野口悠紀雄氏が指摘するような米は日本と違い新産業が生まれ新しい経済構造があるという指摘を読んだりすることもある。
しかしそれはあくまで米の一部に過ぎないのだ。
むしろ大半の州はそうではなかった。
本書を読んでいてまるでバブル崩壊後の日本の不況と大差が無いではないか。
あくまでアメリカはアメリカ合衆国であり多くの国の連合体だということを再認識した次第である。
増えない給料、老朽化するインフラ、工場移転で地場産業が無くなり孫世代の就職先が無い。
白人中年層の寿命が短くなっていること。
広がる薬物汚染。
インタビューしていた3人組女子大生の内、1人が夢は学費を返済することだと返答していたのには驚いた。
アメリカン・ドリームは完全に死んでいる。
ミドルクラスの象徴でもあった長期休暇を取って家族旅行に行くことも出来なくなっている。
多くのミドルクラスが貧困層に陥る中、企業献金に頼らず労働者、生活者、有権者の為の政治を求めている。
トランプの行った敵意を焚き付ける方法は正しいとは思わない。
それでもトランプ躍進、サンダース躍進の背景問題が解決に向かわない限り、既存政治の延長線はあり得ないだろう。
それは次のアメリカ大統領選挙でも同様だろう。
その辺りを踏まえた政策が民主党にも求められているのではないか。
とは言っても著者の指摘するように製造業や石炭産業の復活などあり得ないとは思う。
メキシコ国境沿いの壁建設も資金面で
難しいかもしれない。ただ人々は簡単には国境を越えれないし簡単に転居出来る訳でもない。
(逆に言うと転居を厭わず動ける人の強みも見えた気がした)
非常に難しい問題だ。またそれは日本にも当てはまる問題だ。
夢を失った地域は活力を失う。
夢を喪失せず希望を見いだせる社会を築く為には
何が出来るのだろう。
放置して時間が解決する問題ではない。
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面白かった!廃れていくラストベルト。細っていくミドルクラスこそトランプを支持したんやな。反エスタブリッシュメントがキーワード。
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トランプさんを支持する人はどういう理由かを迫った書籍です。
現地の人の訴えが分かるため、貴重な本です。
ラストベルトの人々の訴えは日本と全く同じだと思い、危機感を感じます。
基本的には、移民問題による雇用の減少がテーマとなっております。著者は統計データに基づき、トランプへの疑問や反対意見も挙げてますが、賛同できるところとできないところがありました。ですが、そこも含めて良いです。
私は、この本の反対意見も踏まえた上でトランプさんを支持しています。
この本で取材に応じておる現地の人々が、日本人より人情が溢れている感じがして、凄い好感を持てました。
現地の人の声で、「テレビが伝えるアメリカはエスタブリッシュメントばかりだ」「映画で見るアメリカはニューヨークやロサンゼルスばかりだ」という言葉には、確かにそうだと胸を打たれました。移民問題や人種差別問題が多く取り上げられ、少しずつ改善はしていってますが、裏では忘れ去られた白人の人々が貧困になっていることは見向きもされません。
あと、アメリカ国民の政治への関心がとても強いです。私の周りでは選挙に行かなきゃだめだとという考えを持っている人は多いですが、政治についての関心は他国と比べて本当に低いと思います。テレビやネットを見てなんとなく投票するでなく、国の命運をかけているという自覚を持ち、できる限り勉強をして投票をしてほしいです。
もしアメリカに行く機会があれば、この本で登場をした人々の街を旅行して地域貢献をしたいです。
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新聞社のニューヨーク駐在記者がトランプ支持者が多いラストベルトやアパラチアを歩く。出会った人たちの声から見えてくるアメリカの今、そして大統領選の結果。
これからもこういう時間をかけて生の声を集める取材が必要だと思う。
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先入観を持たず現地で聞き取りを行うジャーナリズムを感じさせる一冊。グローバリズムによって経済状況が向上したのは、先進国の上流階級と途上国の中間層であり、没落したミドルクラスのエスタブリッシュメントに対する反感をうまく集めたのがトランプ。高卒でもミドルクラスになれたという状況が例外的なものだったということを踏まえ、アメリカという共同体をどう維持するかは引き続きの課題といえる。
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トランプがアメリカにムーブメントを起こした過程を、トランプの支持者がいるエリアに入り込んで取材をしながら生の声を届けている。
指示者の感情や背景を押さえながら、臨場感を持って書いているので、次に次にと引き込まれるように読んでしまった。著者の文章技術に脱帽。
アメリカで問題になってる不満は、日本など他の先進国でも同じ現象ではないだろうか。一生懸命目の前の仕事に働いていれば、そこそこの生活を堪能できた時代から変わってしまっている。
所々にも出てくるように、情報技術に基づく職業は確かに利益を生み出す業界であるけれども、雇用や街、生活を作り出す点では、製造業は違っていて、には違う指標が必要だ。
一方、サンダースについて。彼も、結局、現場の人々の生活や社会行動には課題認識を持っている。ただその伝え方がトランプとは異なっていたと言うだけだろうか。
ソガ氏(サンダース)のコメント:
昔は多くの人がテレビで同じ情報を得ていたが、最近は自分の情報を選り好んで、自分と同じ意見の人としか話さないから、不満を持つ人同士がどんどんつながるようになった。
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トランプ関連書籍を読み始めてこれが4冊目になりますが、これまでの3冊と比較すると圧倒的に質が高いと感じました(その他の3冊の書評については私のレビューをご参照ください)。大統領選挙の1年ほど前からトランプ候補の支持者が多い地域への足で稼いだ生情報、非常に参考になりました。日本のテレビだけを見ていると、トランプを支持している女性なんて1人もいないかのような報道ぶりでしたが、現実は米国女性の41%はトランプを支持している。しかも本書に登場するトランプ支持者の女性は、変人でもなんでもなく、実直に働いてきた人々、という印象を受けました。より正確には「トランプ」という個人が支持されているわけではなく、これまでの既存政治家、エスタブリッシュメントへの反感がいかに大きいか、自分自身の生活をなんとかしてくれ、という強い思いを本書から感じました。
本書の最後にも著者が問いかけていますが、これは米国の民主主義の終わりの始まりなのでしょうか。この問いは本当に難しく、トランプ政権の誕生は行きすぎた資本主義に対する民主主義の逆襲という見方もできるわけですが、その結果として選ばれたトランプが民主主義を弱体化させるかもしれない、という皮肉な結果も十分ありうるわけです。つまり民主主義的な手続きを経て、民主主義を衰退させる指導者が選ばれてしまった、という可能性です。日本の将来を考える際にも非常に示唆が多い良書だと思います。