斬新な構成による、正統派の経済学書
2003/12/15 23:44
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:石橋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
経済学や経済論争に多少なりとも興味関心を有する者にとって、本書の構成は
意外の感を抱かせる。一般に経済関係の書籍といえば、教科書か啓蒙書、あるい
は時事問題の解題のいずれかに分類されるだろう(一般に、というのは言うまで
もなく、専門書を除くという意味である)。
本書は前述のどれにも該当しないと言えるし、一方では前述の各書の要素を
何らかの形で含んでいるとも言える。また、通常の経済書のカテゴリーでは扱わ
ない論理や論理的思考の方法、さらにはデータの利用法などに多くのページが
割かれている。その点に着目すれば、「教養レベルの参考書」となる機能も
備えている。
このように特徴を書き連ねると、未読の方々にあるいは支離滅裂な構成である
かの印象を与えるかもしれないが、一読すれば決してそうではないことがよく
分かるだろう。本書は先に挙げた既存のさまざまな書籍の特質を巧みに織り込み
つつ、ある種独特な調和をもって一冊を成している。そして、その構成によって
語られる経済理論は今日的かつ正当的な経済理論そのものである。時流に乗って
軽佻浮薄な筆致で世論を煽る無責任さも、古色蒼然たる遺物といった頑迷さも
ない。経済学を志す学生や若手ビジネスマンにお薦めしたい堅実さを保つ、良質
な著作である。
ミクロ的基礎・情報の経済学・複数均衡・動学モデルの要素を平易な文章で
解説しつつ、日本経済の現状にまで言及した著書にはなかなか出会えないもので
ある。学問としての経済学に関心のある層に限らず、日本経済の今後の推移を
占う手がかりを欲するすべての人に向けて書かれた一冊と言えるだろう。
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経済学的思考の技術
「知る経済学から、使える経済学へ」の導きへを唱える意欲的な経済書籍である。
経済的な取引・契約が行われる状況を纏めて「市場」という。
取引の「買い手」「売り手」が特に情報の格差がない、といった状況を「完全競争市場」という。
モラルハザードはあくまで「契約後の行動監視等が出来ないことの問題」と定義されており、倫理・道徳とび直接的関係は無い。
複数の均衡が存在する場合、「期待」の働きが経済状態の決定に主要なキーとなる。
フローは、一定期間での状態の変化量
ストックは、一時点での存在量
財政赤字 政府資産には、有価証券などの処分可能性の高いものが含まれている。
国の重要資産である「税金を徴収する権利」が、存在する。
今現在からさらに新たな借り入れをしない場合、政府債務は利子率分毎年増加していく。それに対して税率を一定に保った場合の税収は、経済の成長率から決まってくる。すると、利子率が成長率を上回る限り、増税や歳出削減などの措置なくしては、政府債務/GDP比率は拡大し、財政は維持できなくなる。
「名目成長率が名目利子率より低い」状態では、いつか財政政策を引き締めざるを得なくなる。
実質○○率=名目○○率―価格指数の変化率(インフレ率)
経常収支の黒字=資本収支の赤字
経常収支は財・ザービスが、資本収支は債権が出て行ったほうが多いと黒字、入ってきた方が多いと赤字。
生産=消費+投資+政府支出。
生産+輸入=消費+投資+政府支出+輸出。
生産=消費+投資+政府支出+輸出−輸入。
生産=支出=分配の三面等価。
経常収支=生産-(消費+投資+政府支出)。
経常収支=(貯蓄−投資)+(税金−政府支出)=(貯蓄−投資)+(財政収支)=生産-(消費+投資+政府支出)=(貯蓄−投資)+(財政収支)。よって、財政収支が赤字ならば経常収支も赤字傾向になる。80年代米国、21世紀現在の米国経済の状態、しかし日本は、貯蓄が非常に大きく、投資をしのいでいるので、財政収支が、赤字でも、経常収支は黒字となる。
構造改革の景気回復路線の勘違い、もしくは、誤謬
最終章に為替円安リフレ策、国債引受リフレ策。通貨発行益を使ったりリフレ策の各々の検討がなされる。
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経済学を能動的に勉強しようと思って初めて手にした本。めっちゃ噛み砕いて書かれていて、基礎固めには打ってつけ☆
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経済の勉強を始めた4年ほど前に購入した本です。タイトル通り、「思考の技術」を解説しています。経済本にありがちな、「最近の経済はこうですよ、だからこうなるんじゃないですか」みたいな記述はなく、わかりやすく自力で経済を分析する技術を段階を踏んで解説しています。経済に対する自分なりの視点を持てるようになると思います。
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経済学を研究するための思考方法について書かれた本です。
新進気鋭の経済学者飯田泰之さんが著者です。
経済学を題材にしてますが、内容としては論理的な思考を行うためのさまざまなテクニックが詰められてます。
始めに論理思考とデータの扱い方に注意を述べた上で、経済学における基本的な考えかたをあげ、実例に当てはめて分析していきます。
実例としては、経済成長とその低迷、平成不況の原因、デフレ不況などがあげられてます。
個人的に面白いと感じたのは始めの論理思考のところです。
そこには誤った三段論法として次の例があげられてます。
前提A 不良債権処理策は銀行業界を活性化させ得る
前提B 銀行業界の活性化は景気を活性化させ得る
結論 不良債権処理策は景気を活性化させ得る
どこが間違っているかわかるでしょうか。
もうひとつ同じ例として次もあげられてます。
前提A すべての費用削減は利益率を向上させる
前提B すべての株価上昇は利益率向上により生じる
結論 すべての費用削減は株価上昇に結びつく
本書では必要条件、十分条件を考えれば上記の三段論法が間違いであると述べています。
私としては、必要条件、十分条件より、集合の包含関係を考えた方がわかりやすい気がしました。
本書は、率直にいって、刺激的とはいえません。
おそらく次のような記述に幻滅するからでしょう。
「ある評価軸で、より良い状態に近づけるためにはどうすべきか、という「道具を用意する」ことを中心に考えることが、経済学の役割なのです。」
「技術」をうたう以上、限界があるのかもしれません。しかし一般人として、(いまは絶滅したのかもしれない)知識人に求めるのは、評価軸自体の妥当性の検討です。
評価軸の妥当性さえ確かなら、その後の論理的な裏付けはまさに「技術的」な問題であり、それほど難しくないとさえ思うのです。
もっと言えば、評価軸が妥当であれば、論理的な間違いは重大な欠陥ではなく、修正可能とも思うのです。
ベトナム戦争時にアメリカでは、ベトナム人を殺すコスト(キリングコスト)を計算したと言われます。著者の立場にたてば、「道具を用意した」わけでまさに経済学の役目を果たしたのかもしれません。しかし、その結論がどうであれ、すでにこのような問題を考える事自体、誤っていることは明白です。
本来、大学人に求められるのは、社会であれ、学問の領域であれ、既存の枠組みを問い直す態度ではないのかと思います。
本書は、現在の社会における知的後退を示す本だと感じました。
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経済学的に考える上で必要な基礎的な論理思考やデータの扱い方、それから経済を理解するための経済学の基礎、そいでそれらを基にして考える今の日本経済と、そんな流れ。
とりあえず一章でまず勉強になった。注意していないと雑誌やウェブ上にある意見とかを鵜呑みにしちゃいがちなんだけど、これ読んでからは気をつけるわ。
日本国家破産しないについてはまださっと読んだだけで理解が浅いのでもういっぺん読み返してみる。
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前半は演繹法、データの見方など、ロジカルシンキングについて書かれており、それを踏まえて中盤からは経済"学"の基本的な部分について書かれている。
後半では日本経済の具体的な事例を挙げて理解を深めさせてくれる。
他の経済学入門書とは違った視点で経済の基本について書かれており、一層理解が深まった。
筆者の意見には必ず根拠が示されており、主張は信頼できるものが多かった。
また、ドーマーの定理を持ち出した上での(定理名自体には触れていないが..)デフレの弊害の詳しい説明が、非常にわかりやすかった。
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経済というよりも論理的思考の本と言った方が良いかもしれない。
経済の根本を、地頭で考えるようになる。
★5。良い本です。根っこの知識を地頭を高める本。
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タイトルが面白かったので手にとった。経済学思考以前の論理的思考に関する記述がなかなか面白い。「たとえ話」は自分に都合の良い方向にもっていけるし、ことわざや故事も世の中には大抵相反するものが存在するので当てにならない、という部分は説得力がある。
経済学で使われる視点がコンパクトにまとまっているところが良い。一方、90年代以降の日本経済の解釈と処方箋の議論に入ると、デフレが問題であってインフレ・ターゲットをはじめとするリフレ政策が有効という主張にまとめあげていく、ところに違和感を覚えた。
デフレが問題であることに異論はないし、リフレが有効という議論の仕方も分かるけれど、インフレ・ターゲットについては、経済学者の間でも様々な議論がなされているようなので、読者層を考えれば、それぞれの論点を併記すべきなのではないかと思った。
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経済学をやった人には不要なレベルの本。物足りない。ただ基本を確認するには悪くない。データに対する正しい見方のいろはが書いてある。
メモメモ;日本経済の問題
債務の大きさ⇨×
債務の利子率を下回る成長率の場合(税率が一定だとすれば)財政引き締めという選択ししかなくなる。
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経済学思考で実際の経済・ビジネスについて考える能力を養うというコンセプト。経済に精通していないため、1章のロジカルシンキングの章が一番腹落ちした。もう少し理解した状態で3, 4章を読めばよかったかもしれない。正直最後のほうはあまり理解できなかった。
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エッセンスとしてはおなじ著者の『ダメな議論―論理思考で見抜く』と通じるものがあるが、あっちは「論理」に、こっちはより「経済」のほうに軸足配置。
1章は「ロジカルシンキング」に「データ」をあわせて考えよ、という「経済学思考」の骨子。
2章は経済学思考の「考え方」というか、よーするに経済学は、限りある「なにかよいもの」を取り扱うのだということ、そこから「人はインセンティブに従って行動する」とか「ノーフリーランチ」とかの原則が導かれることについて書いてある章。わずかな前提から、いろんなルールが出てくるところが刺激的。
3章ではいよいよ経済理論に踏み込むが、数式ではなく図解になっているので、なーんとなく直感でもわかる、と思う。
4章では「平成大不況」脱出のレシピを題材に今までの総仕上げをしているが、その論理たるや今まで土台のブロックをがっちり組んできただけあって、ものすごい堅牢さ。主張の内容はいままで読んできたリフレ派のそれなのだが、きちんと舞台裏までまわりこんで説明してもらえると、たのしいなぁ。
まぁこれを読んだからと言ってすぐに「経済学思考」が使いこなせるようになるとは思わないが。抽象から具象へのひとつのテストケースとして見事。パーツの選び方、くみ上げ方、手際の良さ、いろんなところが気持ちいい。
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経済についいてわかりやすくまとめている。
経済学について学ぶ学生にはおすすめの本である。
しかし、図解や例文が少なく理解に苦しむかもしれない。
分かりやすい本のあとに読む2冊めにはちょうどいい内容だと思う。
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経済学思考を身につけ、論理的に考え議論する力を手にするためには本書がよいガイドとなるだろう。
前半は主にロジカルパート。
論理的思考の要点から、印象バイアスなど論理的ではないが納得してしまいそうになる罠の話。
後半は経済を軸にした話で、前半で紹介されたロジカルシンキングを駆使して経済を読みといていく。
正直、門外漢の私には後半の内容は難しかったが
それでも通読するべき内容であった。
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著者は「この本の最終目標」として、「「経済学思考」を身につけそれに基づく経済原則を知り自分の手で現実の経済・ビジネスを考える実践力を身につける」と述べています。
第一章では、ロジカル・シンキングについての解説がなされています。つづく諸章では、問題解決のための方法として経済学的な考え方をどのように使いこなせばよいのかということに焦点をあてつつ、経済学の基礎的な考え方が解説されます。とくに第四章では、平成の大不況の原因を突き止め、その処方箋について著者自身の考えが示されています。
2003年に刊行された本で、デフレからの脱却という読者に身近なテーマに対して、基本的な経済学の考え方がどのように有効利用できるのかということがわかりやすく説明されています。経済学にかんしてどこかつかみどころがないように感じている読者には、アクチュアルな問題の解決につながる本書の議論は啓発的な意義があるのではないかと思います。