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ある土地が持つ気配や記憶の総称である「ゲニウス・ロキ」。続編の本書では、建築物の意味の読み解きに力がそそがれている。
とくに興味深かったのは、丹下健三が設計した広島の平和記念公園。原爆ドームを頂点として軸線上に並ぶ一連の建築は、一見インターナショナルなようでいて日本の伝統建築の技法に根差していること。そして実は同じ広島の厳島神社を模した構造になっている(島自体が聖なる存在であり、そこに向かって鳥居ごしに祈りをささげる)ということ。
「・・・丹下健三が日本建築の伝統のなかから汲み取ったものは、さまざまな次元における空間構成の手法、さまざまな部分に現われる造形モチーフだけでなく、その根底に存在している場所性の表現という性格なのである。それは、建築物が構想されるまさに出発点において、その建物が建てられなければならなかった根本原理が、場所の性格と可能性、すなわち地霊(ゲニウス・ロキ)の発見にあるということを、彼が知っていたことを示している」(P.46)
設計コンセプト、とかいう次元ではない。「建てられなければならなかった根本原理」である。そこまで立ち戻らねばならないほどの力を土地はもっている、ということだろうか・・・。
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西洋で建築を語るときは普遍的な「空間」を基本にすることと対比させて、鈴木は固有性をもつ「場所」を意識して日本の都市や建築を考えたいと主張する。その「場所の感覚」を「地霊」と置き換え、個別の様々な事例を本文で紹介している。
この核となる思想はあとがきに書かれているので、最初から文章を読んでいると、日本各地にある名所と言われる場所が誰によって建てられ、どんな時代を経てきたのかという物語をまずは知ることになる。特に感じたのは場所自体のことより、その場所を選んだ人物が当然いるわけで、その人の強い意志で場所が出来上がっていくという感覚だ。人なくして語られるべき場所は見出せない。
自分が知らないだけで、日本各地に同じように熱意を持って場所を選び建築物を建てた人物がたくさんいるのだと思う。少しでもそんな想いを知ってみたい。地名の由来や、昔はどんな場所だったのかを教えてくれる街中の看板はこれからも立ち止まって読んでいこう。
あとがきにあった、日本建築における屋根の考え方になるほど、と唸った。
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(桂離宮と日光東照宮の)「両者に共通するものこそ、場所の性格と可能性、すなわち地霊の発見という態度である、日本の建築のもつもっとも深い存在基盤はなにかといえば、それは場所に対する感覚なのである。」