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帯の煽りが小川洋子さんじゃなければ敬遠してたかもしれない。小川洋子さんであっても台湾の話という事で登場人物名で読みにくそう…と手を出すのに勇気がいったが、読みだすとグイグイ引き込まれて一気に読み終えた。
台湾での少年時代の描写は本当に活き活きしていて頭の中に台湾の雑多な景色が浮かんできて映画を観てるよう。それぞれ影ある家庭環境のもと育まれていく友情はそれだけで十分に一つのストーリーであるが、そこに現代が加わることで更に深みが出ている気がする。
それは、この小説のもう一つの魅力である過去と現在の対比。その対比を際立たせる漢字の使い方と主語の入れ替え。このコントラストを主語の入れ替えを巧みにぼかしながら段階的に切り替えていくことで、どんどん読み進んでしまう流れになっていと思う。こういうパズル的な文章の書き方は推理小説的でもあるかな?と思ったらやっぱりそっち系の作家さんなんですね。
あと作者は私と同世代かな?出てくるアーティストが全て私のリアルタイムでちょっと楽しかった。一つ難をいうなら引用した小説をネタバレ的に説明するのはちょっとどうかと…
あと皆さん指摘の通り、私もスタンド・バイ・ミーが思い浮かびました。
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書店で見かけ、タイトルと表紙が気に入って借りてみた・・・あー、どこかで聞いたような作家さんだなぁ?と思ったら、直木賞の「流」の著者だったかー。
あれは舞台が台北だとかで、食指が動かなかったのよね。。
で、開いてみたら、これも舞台は台湾で、∑( ̄▽ ̄;)ゲーン!と言う感じではあったんだけど・・・しかも内容を全然知らずに読み始めたんだけど、なんだかこれが、意外や面白くて~~!!!
なにがどう、ってわけでもないんだけど、妙にいい感じで、久々に新鮮な読書体験だったわ!!
別の作品も読んでみなくっちゃ~~!!!ピューッ!≡≡≡ヘ(*゚∇゚)ノ
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またまた面白い作品に巡り合ってしまった。
東山彰良はお初。直木賞(2015)を獲った『流』は目にしていたが、その後の作品であるこちらから手に取った。
外省人を祖父に、台湾人として生まれた著者が記した『流』は、自身のルーツにまつわるものとは漏れ聞いていたけど、本作品も己が幼少期を過ごした台北で、当時の時代背景、空気感を存分に匂わせたノスタルジーに溢れる作品。時代は1984年、その年、ロサンゼルス五輪で台湾は『中華台北-Chinese Taipei-』として初出場を果たす。
その年、登場人物たちに何が起こったか?!
「1984年の夏休み前後の三か月がぼくとジェイを結び付けた。アメリカへ渡った両親においてきぼりを食ったぼくは、ジェイのおじいさんのかわりに布袋劇(ポウチヒ)をやり、バスケットシューズを万引きし、ブレイクダンスの練習に夢中になり、ジェイにキスされ、そのせいで殴りあい、また仲直りをした。ジェイはジェイでたった三か月のあいだにぼくにキスをし、そのせいで殴りあい、師範大学の学生に権力のなんたるかを教わり、その男とキスをし、そして継父に殴られて入院した。アガンだってそうだ。母親が男をつくって家を出、転校し、大好きだった父親は目も当てられないほど落ちぶれ、弟はアガンが殺したいほど憎んでいる男にすっかり懐いている。」
この数行で、物語の「序」の部分のあらすじは語られている。主人公のぼくとジェイ、アガン(とその弟)の、少年時代の体験、家庭環境がその後の人生にどのような影響を及ぼしたか。そして、この中の一人が、30年後にアメリカで少年連続殺人事件を起こす「サックマン」として裁かれる”現代”を交互に描き、殺人鬼の心の闇の中にある、少年時代のとある事件の顛末に迫ってゆく。その年、
「そして、ぼくは14歳になった。」
多感な14歳と、1984年という年が、否応にも物語のドラマ性を増幅させる。1984年という年は、『1984』『1Q84』を引き合いに出すまでもなく、どこか特別な年号なのだろう。本作は、東山彰良の『1九84』といった趣きだ。
ミステリーでもある、詳細は書き記しにくいが、映画『ミスティック・リバー』に通じる、少年時代の友情と、3人だけの秘密、そこに潜む暗い影が、現代に及ぼす影響をしみじみ考えさせられる物語。
連続殺人犯の心の闇を暴いたところで、殺された7人もの無関係な少年たちは浮かばれないわけで、常軌を逸する殺人犯の心理を描くこの手の作品のカタルシスは素直に味わえないものであるが、本作は、作品構成上のトリックもあり、やられたな、という感じでぐいぐいと読みすすんでしまった。 怪作だ。
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面白かったです。多分、東山彰良さんは初めて読みました。
舞台は台湾とアメリカ。
アメリカで連続殺人事件を起こして逮捕された「サックマン」は、描かれる台湾の少年たちの中の誰なのか…ですが、この台湾での少年時代の描写が切なくも瑞々しくて良かったです。
ユン、アガン、ジェイ…それぞれ家族に問題を抱えていて、分かりやすく一番酷かったジェイを救おうとユンが考えてアガンも賛同したことが、三人の運命をどうしようもなく変えてしまいました。
サックマンはてっきりジェイだと思って読んでたのですが、まさかのユン。そしてジェイはユンの弁護をアガンから引き受けた。「ユンがああなったのは俺たちのせい」って悲しすぎる。
ユンが「AKIRA」のファンっていうのがこう繋がるのか…ってそれも悲しくなりました。
ジェイの恋人のエリスも良い人だなぁ。
事件の被害者遺族にしたら、こんな本は存在するのも嫌だと思いますが、ジェイときっとアガンにも必要なものだと思います。そうやって、ここから離れていく。そうしないと先に進めない。
台湾は行ったことがありませんが、ここで描かれる台湾そしてアメリカ、とても映像的でした。一本の映画を観たように感じました。
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途中で世界が反転する。台湾の少年達の一夏を鮮やかに描いた傑作。
最後の3人のシーンがとてもキレイで悲しかった。
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カバーの写真がなんか不気味だったけど、
話は良かった。
いや、殺しちゃだめなんだけど
ちょっと泣いちゃった。
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2019/01/02 東山さん初めて読んだ。すっきりした文章で好き。おもしろかった。後半の視点の転換に驚く。スタンドバイミーぽさ。うまい。
「世界から色が抜け落ちてしまうほどまぶしかったあの午後、ぼくは運動場で戦うジェイにあらん限りの声援を送った。ジェイに憧れて、ジェイになりたくて、声を嗄らして叫んだ。そんな誇らしい記憶までが疎ましかった。」
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過去と現在が反転するところは鮮やか。途中まではドキドキしながら読んだ。後半の伏線回収と回想、現在の状況はただ悲しい。
タイトルの僕は誰のことを指しているのだか私には分からなかった。
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生々しく、重い話しだった。
語り手の「わたし」とは、一体誰なのか・・・その誰かが分かった時に唖然としてしまった。
何年にも渡るような濃い時間が、たった何日間の夏休みの出来事とは思えない話し。
読了後、腑抜けになった。
小雲・阿剛・ジェイの抱える過去、誰が壊れて行くか・・・読んでいて重くて辛かった。 「僕が殺した人と、僕を殺した人」という題名がまさにピッタリで、、。 きっと再読はしないけど酷く印象に残る一冊でした。
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読み終わって、他の人の感想などを検索していて気付いた。ああ、ブラックライダーの人か!混沌とした世界、共感しづらい登場人物…どうりで!(直木賞の人だとか意識せず)
猥雑さと人々の活気が共存したような台湾の描写は、映画を見ているような雰囲気を味わえた。ただ、私が生きる世界、価値観とは違い過ぎてストーリーには入り込めず。
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「流」の台湾の雰囲気が気に入っていたので、読んだらハマって1日で読み切った。
一緒に少年時代を過ごした気分になって、その後彼があんな事になってしまって、切ない気持ちになりました。
また台湾もの読みたい。
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3.9 誰も薄氷の上を歩いていて、誰が人生の氷が割れて落ちるかはわからない。薄氷をともに歩いた思いは消えないって話かな。台湾版スタンドバイミー。
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1984年の台湾と2015年のアメリカを舞台に、4人の少年たちの運命を描いたミステリー。
台湾にもアメリカにも行った事はありませんが、情景が目に浮かび、物語に入り込みました。
冒頭で少年達が殺人鬼「サックマン」と結びつくのがわかります。それでも、少年時代の貧しくも満ち足りた日々を読むのは楽しく、ずっとこのまま続いて欲しいと願わずにいられません。他愛無い事で笑ったり、何かが燻っている日々は正に青春。でも不穏な空気は消える事なく徐々に濃くなり…. 明暗がはっきり分かれるだけに切なく苦しい。
悲惨な中にも少し光を感じる、ラストに救われました。
仕掛けにあっと驚き、展開に目が離せず、読み応えがありました。
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たまらない少年時代。
豊かな映画で描かれているような少年時代。
豊かというのは、優しく温かいと同義ではなく、
その痛みまで焼き付けられてしまうような、
そんなフィルムのような豊かさ。
語り口にすっかり騙された。
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小説全体としては納得のいかないところもあるが、少年時代の郷愁に満ちた物語には文句なしに満足できた。満ち足りていないものが多かったからこそ、その反エネルギーが彼等の少年時代を満たしていたのだった。
納得のいかないところは2点。実は語り部か2人いたというトリッキーさは必要だったか?というのと、何よりもサックマンの犯罪に必然性が見いだせないところだ。全編を郷愁が覆っている作品だけに、この猟奇的な犯罪があまりにも突出して奇異な印象が払拭できなかった。