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投稿者:サイトウ - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語は面白くさくさく読み進められるが解説を読まない事には何が起こっているのか理解できず、解説も適当に読んでいると大したことがわからない。
そのためとりあえず簡単にちょっとした知識が欲しいといった場合でも解説を読む必要があるし、より深い内容への踏み台としたいならさらにいろいろ考えながら読まなけらばならない。
前者の場合結局解説を読まねばならないのでそれほど簡単に読めるわけではないし、後者の場合もっと硬派でいい本があるだろう。
しかし目次が丁寧につけられているので後者の場合は目次をよく参照するとよい。
あと丁寧な読書案内がついていないのは残念だった。
とはいえ低価格で易しいところから面白く読めるいい本だったと思う。
毒にも薬にもならないレビューで申し訳ない...
今作も面白かった
2017/09/02 01:59
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投稿者:abikko - この投稿者のレビュー一覧を見る
白と黒の扉、精霊の箱は、面白くて何度も読み返しました。
この本も早速購入して読みました。イタチたちが自分たちの代わりに働いてくれるロボットをつくろうと、(かなりずぼらながら)あれこれやってみる説話風のお話。
今作でも、楽しいストーリーの中に、人工知能ってなに、みたいな問題点が織り込まれていて、とてもお得かつ素敵な本でした。
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投稿者:だい - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.言葉が聞き取れるということ
音声の分析・音素の学習と単語の学習の同時進行により、互いを利用する。
2.おしゃべりができること
自然な会話ができたとしても、必ずしも言語を理解しているとは言えない。
言語を理解している人すべてに自然な会話ができるとも限らない。
3.質問に正しく答えること
機械は、言葉の世界から出ないで質問に答える。
人間も「実体験として知らないこと」は、言葉の世界から出ないで話をしている。
しかし人間は、ある文の内容を「理解できる」時、その内容が真実である場合に外の世界がどうなってなければならないかを経験を元にして予測することができる。
4.言葉と外の世界を関係づけられる事
言葉で画像や動画を表現することはできるが、それで言葉を理解しているとは言えない。
視覚的情報だけでなく、他の五感で感じとる情報や抽象的なモノも人間は使っており 、周囲の物体や状況を認識するだけでは言葉を理解するには不十分。
5.文と文との論理的な関係がわかること(1
論理的思考を邪魔するもの
・感情や都合
感情的に認めたくないこと、また認めてしまうと都合が悪いことがある場合、無意識に論理を歪めてしまう。
・単なる間違い
精神的に参っている時に、推論を間違えることがある。
・言葉がきちんと定義がされていない
自分と相手が同じ言葉を違う意味で使ってしまい、話が噛み合わなくなる。
・隠れた前提が意識されていない
隠れた前提の存在を、話す側・聞く側が意識できているかどうかによって、コミュニケーションの成否が左右される。
・言語の曖昧性
誰かが「AはBだ」と言った時、それがどういう意味で使われているか分からなければ、結論を正しく判断することはできない。
解釈によっては、発言者が想定してなかった結論が推論されてしまう。
6.文と文との論理的な関係が分かること(2
文の形と推論のパターンが1対1に対応していない。
また、「文の構造」に気をつける。
文の中でどの部分が「かたまり」で、どの単語がどの単語の「影響範囲」の中にあるかを知ることができる。
7.単語の意味についての知識を持っていること
機械が覚えるのは「文字に相当する電気信号の列」であり、その「意味」ではない。
可能性としては、周辺に現れやすい単語の情報を元にして、単語の意味を表現する事。
つまり、似た文脈に現れる単語同士は、似た意味を持つ傾向にある。という考え方に基づくもの。
最近では、単語の意味をベクトルで表すことが盛んに行われている。
8.話し手の意図を推測すること
「意味と意図のズレ」を生じさせる要因・曖昧性
・多義語の曖昧性
・名詞(句)の指示に関する曖昧性
例)恋人を探している
特定の個人か話し手の状況かを、その時の状況から判断する。
・文の構造の曖昧性
・会話的含み
9.私たち人間は・・・
・人間は言葉を習得する時、生まれた後で接する言葉だけを手掛かりにしているわけではない。
・人間は、言葉についてメタな認識を持っている。
・人間は、他人の知識や思考・感情の状態を推測する能力を持っていること。
この能力と言語能力の発達との間には強い相関がある。
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なまけもののイタチたちが、自分たちに代わって働いてくれる言葉のわかるべんりなロボットを作るべく、さまざまな動物の村に出かけては学び(もといアイデアを頂戴して)試行錯誤していく、という物語仕立てで、「言葉がわかる機械(AI)」とはどういうものなのか(音がわかるとは、意味がわかるとは、論理がわかるとは、意図がわかるとは…)、根本のところから学んでいく。
中学生の娘はとりあえず解説コラムを飛ばしておばかなイタチの物語として楽しんだようだが、理論的な部分を読み飛ばして物語だけ追っていっても理論言語学や自然言語処理の課題がそれなりに学びとれるようになっている。
そして、読むうちに、囲碁や将棋のような一定のルールのあるゲームで最善手を探すような作業であれば人知を超えたディープラーニングも可能になりつつあるものの、一般的に人間と遜色ない判断力を持った機械の出現までの道のりはまだまだ遠そうだな…と実感できる。
全編読み終えてみると、この寓話の主人公に「イタチ」が選ばれたのも故無いことではないと膝を打つし、児童書のようなかわいらしい装丁や挿絵にだまされて手に取った読者は思いがけない収穫を得るはず。快作。
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まずタイトルと装丁が秀逸。内容も「寓話」と「解説」が交互に並び、直観と論理の両面を相互チェックするかたちで理解が進む。文章も極めて平易で一気読み可。中学生くらいの子供なら十分読めるのでは。言語処理について現在の人工知能ができること/できないことがわかるのはもちろんだが、それを通じて我々が現に操っている言語の面白さ/不思議さにも触れることができる。
本書では、現在主流である「ビッグデータ」を利用してのAIを用いた言語処理の限界と、それを乗り越えることの困難さ(システムの無矛盾性に関するゲーデル的命題を思い出した)が提示されている。どれもなるほどと思えるものだが、ここではたと思い至ったのは、不完全なロボットの言語を、人間の方が「学習」し、「共感」して「理解」できるようになるのではという疑問。いかにAIの用いる言語が人間にとって間違いだらけで不十分でも、それを理解すべく我々人間のほうが変容してゆく可能性があるのではないか。我々が異文化を理解するとき、まずはその言語理解に端緒を求め、行動に反映させることが多い。それと同様、人間の方がAIの言語を受容し思考様式を理解することで、行動様式を更新していく。そこではAIがあたかもこれから新たにコミュニケーションを開始すべき友人や恋人のように扱われるのではないだろうか。本書で言語と人間の能力の底の知れなさに触れるにつれ、そんなイメージが浮かび上がってきた。
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まず、装丁にやられた。
手にとって、すごく中身に興味を持った。
読んでみて、面白かった。
言われて思う、機械が喋れるようになるのに必要な事って? 読んでみて、それがいかに大変な事なのか分かった。
加えて、普段何気なく交わされる言葉がいかに高度な処理を要しているのかを知った。
興味深く、面白かった。
に、しても、本の作り方が上手い。
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「言葉がわかるとはなにか?」という日常の生活の中ではあまり問わないことを、最前線の研究をベースに普通の人にも考えてもらおうとする意欲的な一冊。家の中で家電は「加熱が終わりました。」とか「お風呂が沸きあがりました。」とか話しかけてくるし、車の中でもナビが道順をめげずに伝えようとしてくれます。こちらからもスマホやエコーに、ついつい話しかけているし機械とコミュニケーションしている量は、知らず知らずのうちに上がっています。著者は理論言語学を学び、自然言語処理に取り組んでいる研究者とのこと。東ロボプロジェクトにも参加されていたらしいです。そのプロジェクトから生まれた新井紀子さんの「AIvs教科書が読めない子供たち」でも触れられているようにAI研究を進化させているコア技術、ディープラーニングって、言葉の問題にぶち当たるようです。「言語学と自然言語処理という、似ているようで似ていない、また接点があるべきなのに実際はあまりない二つの世界にいたことのある一個人から見た、現状と課題をまとめたもの」ということで、すっきりわかったぁ!という本ではなく、一進一退まさに〇〇〇ごっこの難しさを共有しているので、嚙み砕きパートの動物たちの物語やイラストも、わかりやすく、というよりまだるっこしい感じに思えたりもしました。でも、そのまだるっこしさが研究のストラグルなのかも。主人公たちのバカっぽさも著者が社会に感じているいらだちなのかもしれませんね。
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言葉を理解するとはどういうことか、ロボットを開発する
動物たちの寓話仕立てで解説している。
自然言語を理解する人工知能を作り出すことの難しさはよくわかったが、逆に読めば読むほど、言葉の意味がわかる人間の方が不思議だと感じられる。
結末は切ない。
やっとたどりついたと思ったら、ゴールはまだ先だとわかる。
イタチだけに。
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AIやITが急激に進化しているが、言葉に関してはどうだろう?
AIやIT資源が言葉を人間が思うレベルに扱ってくれるまでに、色々な問題があるということを、例え話を用いながら論じた作品。
日本語そのものが曖昧な言語なんだから、学ばされるAIやITも一様に覚えてくれないだろうな…と思うのは私だけ?
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「言葉が分かる」とは?言語学と自然言語処理の視点からこの問いに挑んだ一冊。SiriやAlexaにおいて何が技術的に難しいのかが丁寧かつ平易に解説されている。イタチをはじめとする動物のお話がハードルを下げてくれるから読みやすいし、AI幻想を抱いてる人こそ読んでほしい(自戒を込めて)
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イタチは「いたちごっご」だったんですね。
情報処理業界で禄を食む身としては、ディープラーニングをもってしても「言葉がわかる」ロボットはまだまだ難しいということはすごく理解できました。というよりも、人間の言語獲得能力の偉大さ・壮大さ・深淵さを改めて感じました。
面白い本でしたが、イタチの話は必要ですかねえ。そんなにわかりやすくも無かったですし。各章末の記載の方が十分わかりやすかったですが。
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あとがきに書いてあるように「人と機械の言語比較しながら、人工知能技術の現状を示す」本。
確かに難しい理論を平易に記載してあり、なるほどと思う。イラストが版画でとてもかわいい。
普段からSiriに接したり、将棋もコンピューターが強かったり、AIはすさまじく発達していて、人間に近付くのは時間の問題と思っていたが、この本を読んで、「人間が言葉を理解する」という事の難しさを痛感し、「コンピューターが言葉を理解する」ことを達成するのは、非常に大変な道のりなのだなということが分かった。
また、機械が必ずしも人間の模倣をして言語を理解している訳ではない(コンピューターは1/0の世界がベースなので、あくまで文字列としてしか言葉を取り扱えない。)ということが当たり前ながら、人間とのスタート地点の違いの隔たりを感じた。
説明を物語形式にしていて、動物たちのお話しがあって、その後解説というようなつくりになっている。もしドラもでも思ったが、ストーリーにすることで読みやすくもなるが、すこし不必要な「物語」に付き合わされているような気分がしてしまうところも否めない。
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物語仕立てと豊富な例示で、人工知能研究の現況と問題がすいすいと頭に入ってくる。
イタチ村の成果まで行ければ、ツイッタラーの上位70%くらいのところまでは来ているように思う。意図orientedにして致命的エラーを防げば、限定用途で使えるロボットは生きてるうちに見られそうに感じた。
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★AIの現在地を自分は知らない★理論言語学と自然言語処理の専門家が、AIに言葉を教え込むことの難しさを例え話で教える。信頼できるデータを大量に教え込むことが可能になりディープラーニングでAIが急速に進化したのだと浅く理解しているが、そのデータの信頼性の確保は素人が思うほど簡単ではないようだ。そもそも入力データである音声と音素は違い(「ん」の表記でも音は少なくとも3つはある)、単語の意味の決め方や話し手の意図の推測はかなり難しいようだ。AIが理解できるのはまだ定型の表現なのだろう。言語によってAIの理解のしやすさは違うのだろうか。
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人工知能を引き合いに出した、言語学の入門書であり、人が自然に行なっているコミュニケーションの複雑さを発見させる、哲学入門書のような側面もある。
面白かったのは、「意味を理解する事というのはこんなにも複雑で、ロボットの計算ではスムーズな人間的コミュニケーションは難しい」という主張とは真逆の、「私たち人間だって、実体験として知っているわけではないことを、言葉の世界から出ないで話している場合がかなりある」という気付きや、「実際に何がどうなっているかが分からなくても、近似ができれば応用はできる。」という発見。
私は自分の言語能力が誇らしくもなり、限界の近さに落胆もした。