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大阪の話が、2話。
どれも、地理的には、よくわかるのだが、、、タクシーに乗車した女性のスマホしか見ていないのに、運転手が問いかける・・・コンビニ、、、大阪港の堤防、、、マクド、、、ワンルーム、、、岸和田の現場、、、和歌山、、、、
場所も、人も、次から次へを代わっていく。
誰が主人公でも無い話。
パッチワークのように、柄も違う者同士が、合わさって作品になっているのだろうが、、、、頭の中で、バラバラの思いが、散らばる。
2話の「背中の月」も、何故か侘しい環境である。
サクサクと、読めたが、私の頭は、ジクソーパズルのような感覚で、ぴったりと、当てはまらないピースが、いくつも出来ていた。
そして、簡単に、自殺をしてしまう事、ちょこっとの思い付きで、辞職願を提出してしまう事、自分の家に戻らないために、鍵を捨てる事、、、、其の後は、どうするのだ!!
若者達が、未来に向かって突き進む信念や希望を、、、と、この作者である社会学者の 岸政彦氏に描いて欲しいと、思った。
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どんな人物にも背景があり、とりまく状況は自分の意思に反して、又は沿って、変わっていくものなんだなぁ。
他者と自分との境界が曖昧な文体。冷たいようで優しい眼差しを感じました。
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孤独と絶望のすぐ近くで暮らしている人たちの、でも実は自分もすぐ近くにいると感じさせる、独特なようで当たり前の、実は見慣れた毎日の風景。
この人の文章は、どうしてこんなに燻んでいて、希望が見出せないのに、引きつけられるんだろう。
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大阪が好きだ。
暮らしたのは累計で10年足らずだし、孤独と苦悩の思い出しかないのに、それでも好きだ。
たぶん、大阪という街が、自由であり、終末であるからだと思う。
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読書芸人で又吉が推薦してた本。 薄い本なので図書館で借りてそのまま行きつけのカフェで1時間半位で読み終えた。 流石に又吉が好きそうな内容だなと思う。 又吉が書く小説は好きではないが、この本はなかなか良かった。 大阪の北出身の僕だが、学生の頃新今宮のあいりん地区の職安で日雇いのバイトをしてたこともあり、町の雰囲気や細かな情景はよくわかる。 内容は自分自身の生活とは程遠く共感できる部分は少ないが、本当にこんな人生を送る人がいるのだろうか。 村上春樹や吉本ばななのような幸薄い感じの内容に少し引き込まれた。
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背中の月の彼が部屋を出て、ビニール傘の彼になるのか。
大阪愛がちりばめながら、生きづらさを孤独をつながりを感じる。
著者は社会学者。
私は音楽家から知ったので、そちら関連も読んでみたい。
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薄い本で1時間半足らずで読み終えた。
心に寂しさがありながらも薄い膜で多いながら過ごしている、どこにでもありそうな日常が文学的に綴られ細かい描写も多く没入した。
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群像劇のような構成でさまざまな人の日常が断片的に描写された小説。きちんとした傘ではなくビニール傘しか持っていないような、またはビニール傘を使うことをなんとも思わないような、物を使い捨てするような投げやりな日々を送る人たち。どんな人の日々にもそんなには何も起きない、でも一人ひとりの日々はそんなにはありふれていない。岸政彦はほんとうにすごい人だ。
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突然の雨に見舞われ、コンビニで安物のビニール傘を買う。
傘の見た目や機能性なんてどうでもいい。どうせその場しのぎの傘なんだから。
また別のビニール傘を買ったっていいんだから。
他人との関わり方が、そんなビニール傘に似ている。
なんとなく誰かと話がしたい。相手は別に誰でもいい。でも自分の話をするのは億劫だから、相手の話を聞くだけがいい。
大阪を舞台にした、寂寥感たっぷりの物語。
毎日をただ淡々と機械的に過ごす若者たちがとてもリアル。
雨が降るとすぐに水浸しになるという湿地帯の大阪。でも大阪住みの若者たちの人間関係はドライなんやな。
途方もない切なさ、寂しさがひたひたと伝わってきて、何度も胸が締め付けられた。
岸さんはこれが3作品目。男女の会話が相変わらずいい。カギカッコがない会話の方が読み手の気持ちに無断でズカズカ入ってくるのかも。勝手に入り込んでずっとそのまま心の中に居座る感じがクセになる。
寂しさ漂う余韻に暫し包まれる。
もう一作の『背中の月』
こちらは妻を病で亡くした男の話。
喪失感がすごく伝わってきて痛々しい。
この人、いつかは立ち直れるんだろうか。
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繋がりが難しいが、所々既出のフレーズでリンクしている部分が面白かった。
不思議と読んでいられた
嬉しいときよりも、不幸な時の方がどうしようもなく2人に感じる、みたいな部分が、真理かもしれないと思った
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(いま感想文用のノートに手書きで書いているのだけど、「傘」っていう漢字が全然上手に書けなくて悲しみ。)
「断片的なものの社会学」以来、それまで全然知らなかった岸政彦さんという社会学者/作家の方にすこぶる興味を持って、著作をあれこれ読み漁っている。
この小説は、おそらくカップルと思われる男女のそれぞれの視点から、彼らの出会いや日常生活が淡々と語られる。前半が男性側、後半が女性側。決して裕福ではなく、ほとんど定職にもついていないような二人。汚い部屋。塞ぎ込む彼女。日雇いの肉体労働。付き合ってすぐの頃の思い出、明るかった彼女。波打ち際。だらだらと始まってだらだらと終わる関係。自分と無関係なようで全然そんなことはない、見ず知らずの人の生活。大学生の頃に読んでいたらどんなふうに思ったかなあ。「ビニール傘」の二人と同じように、霧の中を彷徨うような生活をしていたあの頃に読んでいたら。あのときわたしは「あーこれわたしにはムリ」って思ったんだった。自分で気付いてかなり強引なやり方で一気に方向転換したんだった。その選択は間違ってなかった。間違ってなかった・・・本当に?
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岸政彦さんの作品の空気感がすごく好き。
カギカッコもなしにつらつらと
関西弁訛りの会話が良くて。
特に特別という訳でもなく、
あの時確かにそこにあって、
なんのとりとめのない時間だったけど、
今思えば、今ここのどこにもない、
かけがえのない時間を過ごしていたんだなって気づく、そんな場所から眺めているような。
淀川が見たいなって思う。眺めていたいなって。
できれば本当は大切だった人と、二人で。
ビニール傘をさして、とりとめのない話をぽつりぽつりと、雨に並んで話しながら。
なぁ「傘」って漢字あるやろ?
あれって傘になんで人が4人も入ってるん?
4人もようはいらんやろ?
あれ人ちゃうやろ。
多分傘の骨組みのとこやで。
え、そうなん?……それやったらなんかつまらん。
つまらんもなんも。4人も入られへんゆうてたやん。
せやけど、そんぐらい包んであげようおもてるよって心持ちがええやん。
ようわからん。2人でも入りきらんと濡れとるし。
そう言って肩を包むように傘の軸がこっちに傾く。
みたいな。
あぁ思わず妄想が暴走して止まらない。
もう1作『背中の月』もすごく良かった。
侘しいというか、切ないというか。
悲しみが張り付いているようなページたち。
妻の不在がよく表れていて。
妻が居てて、ちゃんといてて、今はもういない。
それが明らかに表現されている、穴。
暗い穴は時にバックスクリーンになって、
そこに映像が映し出さられて。
本当になんのとりとめのないようなシーンがぼわ〜っと浮かんできて、
あぁあの時、なんて言ったのかも思い出せないけれど、
その記憶はふとした瞬間に、穴のスクリーンに映し出されて、くり返されていく。無声映画みたいに。
〝忘れられない〟って、そういうことなんじゃないかなって。そんな風に思った。
どちらの作品もすごく好きです。
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賑やかで暖かい場所にいると、後でひとりになったときの寒さが際立つ。
舞台が大阪であることで哀愁が増す。
妻を亡くした男性が主人公の「背中の月」での独白、
「また行きたいね、あの店なんだっけと言いながら俺たちは結局、あの街にも、あの店にも、あの海にも、二度と行くことはなかった。」
に、永田和宏の
「そのうちに行こうといつも言いながら海津のさくら余呉の雪海」
という歌を思い出した。
脳内でずっと自分に、亡き妻に話しかけているような文が頭に染み込んでいくように感じた。
読み終わって自分がいる場所を確かめる。
ここでないどこかに行きたいと思う気持ち、
でもここだって一度離れればもう二度と戻れない場所になるかもしれないのだ。
そしてそのきっかけは、ドアポストに鍵を入れるというだけで引き金を引けてしまう。
波打ち際の鍵は昔誰かが落とした鍵なのか。
さまざまな人の記憶が重なり混ざり合う。
「二度とない」ことへの焦燥や恐れはいつまでも人間の共通の認識なのだろう。
誰もが、失うことはないかのように生きている。
でもそれは人間が生きている限り必ず訪れる。
喪失を喪失としてそのまま取り出して見せてくれたような物語だった。
ときどき取り出して眺めたい。
悲しみに慣れておくため。優しい自分であるため。
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過去と現在と空想が入り混じって、今がいつで誰と話してるのか分からなくなる本。
でも登場人物の耐えがたい空洞はしっかり伝わってきて、読んでいるのがつらかった。
少ない選択肢の中から選ばされて、選んだんだからお前の責任だというプレッシャーに耐えながら生きてるんだな。
閉塞した生活に物語的な奇跡なんて起きない、この程度が現実だよという感じ。はぁ〜。
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先日聞いたラジオの人生相談コーナーで、「向上心もなく仕事をし、請われるままに人と付き合い、いつも流され、自分がないのが悩み」という相談者さんにパーソナリティが、「若いうちにそんな風に何にも打ち込まず怠け者でいて、40代になったときにしっぺ返しがこないといいけどね」と言った。
でも、流されるままにどうにか生きている人はいくらでもいるし、そういう生き方をしているからといってそんな呪いをかけられて良い訳がない、と、表題作の『ビニール傘』を読みながら何度も何度も思った。