紙の本
ルーズベルト大統領の実態がわかる。
2017/09/24 10:50
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投稿者:ワインアドバイザー - この投稿者のレビュー一覧を見る
ルーズベルト大統領はアメリカでは立派な大統領として尊敬を集めているし、日本でも、ニューディール政策で大恐慌から立ち直らせたと歴史の教科書で学んだが、ハミルトン・フィッシュによれば、ニューディール政策は失敗だったという。ルーズベルトが真珠湾の奇襲を知っていたのに故意に知らせなかったとの言説が以前からあったが、本書を読み、「帝国の参謀:マーシャル」にも、日本軍が近々奇襲を行う可能性が高いが、場所までは特定できなかったとの認識が示されていたことと整合性が取れることがわかった。歴史上有名な、スティムソン陸軍長官やマーシャル元帥が全く通常語られている人物像とは全く異なる人物だったので大変驚いた。このような書物が1976年に米国で出版されたのに、歴史認識が変わらなかったのはなぜだろうか。戦勝国が書いた歴史が、正史として後世に伝わらないと、自分たちの拠りどころがなくなってしまうから、受け入れなかったのだろうか。最近は、米国の若者には、原爆投下を是としない考え方も増えているようなので、正しい歴史認識ができるように、日本人も鋭意努力しないといけないと、本書から強く感じた。
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FDRがあれだけの実績の残した割にはアメリカの歴史において評価があまり芳しくないのは以前から不思議の思っていたが、本書を読んでその疑問が氷解した。歴史の見方とは難しいものだ。
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本書より抜粋
「私は(日本に対する)宣戦布告を支持するためにこの演台に立たねばならないことを悲しく思う。そして日本に対して腹立たしい気持ちで一杯である。私はこの三年間にわたって、わが国の参戦にはつねに反対の立場をとってきた。戦場がヨーロッパであろうが、アジアであろうが、参戦には反対であった。
しかし、日本海軍と航空部隊は、不当で、悪辣で、恥知らずで、卑劣な攻撃を仕掛けてきた。日本との外交交渉は継続中であった。大統領は、日本の天皇に対してメッセージを発し、ぎりぎりの交渉が続いていた。日本の攻撃はその最中に行なわれたのである。このことによって対日宣戦布告は不可避となった、いや必要になったのである。
参戦の是非をめぐる議論の時は終わった。行動する時が来てしまった。
干渉主義者もそうでない者も、互いを非難することをやめるときが来た。今こそ一致団結して、大統領と、そして合衆国政府を支えなければならない。一丸となって戦争遂行に邁進しなければならない。日本の(信義を裏切る)不誠実なわが国への攻撃に対する回答はただ一つ。完全なる勝利だけである。われわれは血も涙も流さねばならないだろうし、戦費も莫大になろう。しかし、日本による一方的なわが国領土への攻撃に対しては戦争によって対処するしかなくなった。
私は再三再四、外国での戦争にわが国が参戦することに反対を表明してきた。しかし、わが国が攻撃された場合、あるいは合衆国議会がアメリカの伝統である憲法に則ったやり方で宣戦を布告するなら、大統領および合衆国政府を最後の最後まで支援しなければならない。
日本民族は、神が破壊せしもの(民族)に成り果てた。日本人は気が違ってしまったのである。一方的な軍事攻撃を仕掛けてきたが、これはまさに国家的自殺行為である。私は先の大戦で志願して戦った。このたびの戦いにも時機を見て志願するつもりである。そして今度も黒人部隊に入って戦いたいと考えている。
国を守るためにはどんな犠牲を伴っても致し方ない。気の触れた悪魔のような日本を完膚なきまでに叩き潰すためには、どのような犠牲であれ大きすぎることはない。
戦いの時は来た。手を携え、堂々とアメリカ人らしく戦いを始めよう。そしてこの戦争は、単にわが国に向けられた侵略に対する防衛の戦いというだけではない。世界に、自由と民主主義を確立するための戦いであることを知らしめよう。勝利するまで、わが国はこの戦いをやめることはない。
国民に、そしてとくにわが共和党員や非干渉主義を信条とする者たちに訴える。今は信条や党派を超えて大統領を支えるときである。最高指揮官の大統領を支え、わが軍の勝利に向けて団結するときである。
わが国の外交はつねに正しくあれ。万一間違っていることがあろうとも、アメリカは祖国なのである。」
共和党の重鎮ハミルトン・フィッシュの演説。ルーズベルトに騙されハルノートの存在も隠されているとはいえ、愛国心があって素晴らしい。日本の政治家にこのような人物がいるだろうか?
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米下院議員のハミルトン・フィッシュによる本書。非干渉主義者。米国での発表は70年代だが、日本語訳が出たのは最近。これは大勢の日本人が読むべき書。FDR神話に基づいた本は読んでいないので、どちらが正しいかは正直分からないが、ハミルトンの本書には説得力がある。しかし歴史はそんなに単純なものではなく、当時の空気感も含めて今の時点での状況とは大きく異なり、様々な意見を有する人がいる。正しい歴史を判断するのは難しいが、当時世論の80%近くが参戦に反対していた事、FDRは何とかしてドイツとの戦争に関わりたかった事、だから何とかして日本に最初の一撃を打たせて、米国の参戦世論を高めたかった事には大きな説得力がある事を感じた。更にヤルタ会談でのスターリンに対する大幅の譲歩や付録に付いていたドイツの反ヒトラー派からの和解提案の黙殺など、成る程と思わせる事が多い。戦前の日本の体制が続いていたとするとそれも恐ろしいが、違う歴史もあったかもしれないという事には好奇心をそそられた。フーバーの裏切られた自由も読もうと思った。