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胸を突かれる本
2023/10/10 22:28
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いや、本の内容に即して言うなら心臓を鷲掴みにされる本、と言うべきか。
少々読み進めづらい箇所もあるにはあるのだが、登山中や最高峰登頂直後の突然死という圧倒的な状況に、ページを繰る手が止まらない。
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参考になった。
ほんと、さっきまで元気だった人が突然亡くなる。日頃の体調管理、無理をしない事が大事。引き返す勇気。
水を飲む、忙しい時無理して登山しない、良く寝る。
登山のベテラン、若いときに登山部だったような人程危ないのかもしれない。
にしても、凄い登山家はたくさんいるものだと感心した。
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大学山岳部の後輩・柏澄子からその著書を強引にサインさせて略奪して読む。2009年に初版出版してその後文庫化になって、今も売っているところを見ると、それなりにニーズのある題材を彼女は掴んだと見える。
医療の素人であれ、取材力と基礎学習でここまで内容が充実した上、オリジナルな題材を掘り下げ、なおかつ読ませる内容であることに驚かされる。お固い内容なのに、読み始めたらぼくはページを繰る手が止まらなくなった。
本当に起こった事実を例に挙げ、これに専門家への取材を重ね、さらに総論に纏め上げてゆく構成だが、各実例が山に係わる者にとっては非常に間近なものに思われ、他人事ではないものとして入ってくる。
低山、国内バリエーションルート、海外遠征、そしてチョモランマのスーパー高所登山まで、突然死に纏わる実例を挙げ、謎に満ちた死、そしてそれらの各々の原因、彼らの死から学び取れる登山者の側のそれぞれの対策などが提示されてゆく。
かつては若い人が多かった登山の世界は、今ではそのまま日本の縮図のように(或いはつい先日アコンカグア登頂しを断念した86歳の冒険家・三浦雄一郎みたいに)高齢化し、山と医療は密接な課題になっている。
他人事ではない具体例として挙げられる、一つ一つの突然死。命を失った犠牲者の悲運と、残された者の悲しみに触れる、愛あふれる取材者のペン。悲劇から学ぶべきことは多いし、感じ取れるものはそれ以上に重い。
どうすればその命を失わずに済むのか? 厚みのある取材から再三に渡って繰り出される警句は、きっと、この本を書き切った柏澄子という現役クライマーの、心の奥の悲鳴でもあるのだろう。
中高年の登山者、またその家族・知人の方々に、今そこにある危機を感じ取り、正しく処方すべき手法へのアプローチとして読んで頂きたい力作。
この書を期に、さらに山へゆき、時々病院へゆき、家族と人生とを大切に、そして安全に楽しく過ごす登山愛好家が増えることを心より願います。