紙の本
戦争文学の名作がまた1つ誕生
2017/10/24 06:35
7人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:クンタキンテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
数年前に、「永遠のゼロ」という本と映画が大ヒットしたが、この本は、その「第2弾」といってもよい著作である。著者が違うけれど、大変によくできている。特に、この著作が、史実に基づいていることが重要であると思う。なお、本著作では、キスカ島からの救出作戦という、大変に地味なテーマが描かれているが、これは、敵中を突破する作戦であり、さらに言い換えれば、綱渡り作戦でもあった。なお、私は、この作戦を実行した木村氏の人柄に非常に感心した。私自身も、今後、明るく、分け隔てなく、彼のようにふるまえたらと思っている。繰り返すようですが、この本は、先の大戦における、有名なエピソードについて、広く多くの人たちに知ってもらえるように書かれた(?)著作になっています。おすすめの1冊です。
電子書籍
ぜひ、映画も観て欲しい
2017/09/15 14:52
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美恵子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
キスカ島撤収作戦のお話。史実に基づいた、内容で、素晴らしい。戦争について、これまでとは違った視点から考えさせられます。軍艦が見えるシーンは、思わず涙ぐみました。今では、あまり知られていませんが、三船敏郎さん主演で映画化されています。艦長さん、ヤケにカッコよく堂々しすぎですが、円谷英二さんの映像がスゴイです。ぜひ、白黒映画も観て欲しいです。
紙の本
あの戦いの中で
2017/12/13 11:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:真田丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
特攻、玉砕など日本人による非人道的な行動ばかりが注目されたあの太平洋戦争で、人の道を説く人達がいた。
キスカ島撤退作戦は、木村少将率いる水雷戦隊が濃霧の中で米軍を出し抜いて、成し遂げた太平洋戦争末期の奇跡の作戦(日本が勝利した数少ない戦い)としては識っていましたが、その裏に戦時下で将兵の命を守る為の内なる戦いがあったとは。
戦争の悲惨さを改めて感じさせられるとともに、われわれ日本人の民族性が人命を軽んじ野蛮であるという世界的な間違った理解を改めることが出来る、少し救われる気持ちになる作品でした。また、その日本人の民族性の間違った理解が改められて、安寧な終戦処理が進み、戦後の日本の発展につながったということは、初めて気づかされました。
骨太な物語ですが、ストーリー展開は早く、ついつい読み進んでしまいました。多様なジャンルを手掛けられている、作者の松岡圭祐さんのセンスが感じられる作品でした。
太平洋戦争を身をもって体験された世代はその大半の方が鬼籍に入られ、伝えられる人も僅かです。われわれがこのような作品を語り継ぐことで、悲惨な戦争が二度と起こらないような世界を作っていければ、と願うばかりです。
電子書籍
司令官の努力と知恵で実現した作戦を描く
2018/12/06 07:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
【8月15日】という表題の日付が暗示するように第二次世界大戦、特に太平洋戦争の一幕を取り上げた歴史小説。『黄砂の籠城 上・下』(講談社文庫)といい、今作といい、この頃著者は新たな分野「歴史小説」に挑戦しているようですね。
『八月十五日に吹く風』も『黄砂の籠城』同様、プロローグは現代です。北米局・日米安全保障条約課に務める筒井亮司が上司から、米軍の「命を軽視し玉砕に向かう」という野蛮な日本人観を変え、戦後の占領政策を変える鍵となった「1943年8月15日に関するロナルド・リーンの報告」とは何かを探る仕事を上司から一任されます。色んなつてを頼って、ロナルド・リーンにコンタクトを取ろうと画策していたある日、菊池雄介というロナルド・リーンと面識がある元ジャーナリストからの手紙が届きます。そこには筒井が知りたいことが全て記してあったのです。
そして場面変わって、時代は1943年に飛びます。まずはアリューシャン列島の「熱田島(アッツ島)」における玉砕が描写されます。隣の「神鳴島」と呼ばれたキスカ島には約5200名の兵士たちが米艦隊に囲まれていました。彼らにも玉砕命令が下るのか否か?
心ある、「命を大切にする」何人かの司令官の努力によって、北の最果てに残された5200名の救出作戦が決定されます。時期はミッドウェー海戦で敗退した後なので、燃料も巡洋艦を始めとする海戦力資源も不足している中で、陸・海軍の人員と資源を割き、知恵を絞って不可能と思われた大規模撤退作戦を実行する様子が力強い筆致で描かれています。
日本側は何人かの司令官及び従軍記者の菊池雄介の視点、米軍側の様子はロナルド・リーンの視点で描写されており、その対比も本書の面白さのエッセンスの一つだと思います。
恐らくこのような人命尊重のための救出作戦は当時の日本軍にあって非常に例外的な事象であると思います。司令官の努力と知恵で実現した作戦。それはつまり、その他の玉砕戦線も司令官の努力次第では大本営を説得して、回避できたかもしれない可能性を示唆し、それをしなかった司令官たちの責任の重さを改めて浮き彫りにするものでしょう。
紙の本
キスカ島を知る
2018/01/27 15:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:端ノ上ぬりこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
太平洋戦争の史実に基づくキスカ島からの5,200人の帰還の物語。北方の小さな島で繰り広げられた戦争の様々な状況。物資不足の中での人命救助。そこに至るまでの軍上層部の決断。平和ボケと言われて久しい日本の国。歴史に学んでほしいと、切に願うのは、私だけではないと思う。一人でも多くの人に読んでもらいたい作品。戦争の犠牲になったのは、尊い命を平等に持った一人一人だ、ということを忘れてはいけない。
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1943年、北の最果て。戦史に残る救出劇
戦後占領政策転換の決め手となった、命を軽視し玉砕を好むといった野蛮な日本人観を変えた米軍諜報部の報告とは? キスカ島に残された兵員五千人救出のため、日本軍は人道を貫いた。戦史に残る大規模撤退作戦。
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史実に基づいた1943年の北の最果てキスカ島での救出作戦を描く。
玉砕等が叫ばれる中、島に残った兵士5,200名を救出したという作戦。
それは戦時下にあって、人命を大切にする指揮官たちの熱い想いが込められていた。
気象士官という天気を予測する人物も乗艦した。
戦争と言えば原爆投下が強烈だが、様々な戦いが繰り広げられ、終戦の玉音放送後もなお攻め立てるソ連軍と戦わざるを得なかった北海道の地。
八月だからこそ、更に深く胸を打つ。
あの時代に生き、戦わざるを得なかった人々の苦難と計り知れない覚悟。
もうあの過ちを繰り返してはいけないと、月並みかもしれないけど、願わずにはいられない。
2023.8.13
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アメリカ兵、日本兵。
ひとくくりにされてしまい、固定されたイメージを持ってしまう。
この本を読んで、当たり前のことだけれど、一人ひとり違う人で、違う考えを持っているのだと実感できた。
自分の行動一つ、決断一つが人の命に直結してしまう時代。今では想像もできない状況だけれど、その中で必死に生きていく人々を見てすべての人を応援したくなった。
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この作品は今日読まねばと思っていた。人命救助に心を砕く様は感動とともに特異な時代であったことを浮き彫りにする。当時の日本のことを熱病、洗脳という表現で語られることがあるが私は脅迫の方が近い気がする。脅迫に負けずに立ち向った人達を忘れてはいけない。
あらすじ(背表紙より)
アメリカが敵視した、人命を軽んじ易々と玉砕するという野蛮な日本人観が、一人の米軍諜報部員の報告で覆った。戦後占領政策転換の決め手となった一九四三年、北の最果てキスカ島での救出劇。日本は人道を貫き五千人の兵員を助けた。戦史に残る大規模撤退作戦を、日米双方の視点で描く感動の物語。
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こんなに清涼感に溢れる戦争小説は産まれた初めて読みました。
凄惨な場面もあるのに、なんて清々しいお話なんだろう! と本当にびっくりです。もう後が無く自決しか無いような人生の終点とも思える場面において、見え隠れする家族や自分が率いる部下などへの思いやりがたくさん詰まった一冊だと思います。
島で窮地に追い込まれた全員が自決してしまいそうで、読んでいてはらはらしましたが、部隊を率いた隊長も隊員も付随してきた記者の気持ち全ての連携が上手くいったと思います。悲しい思いも背負うことになりますが、上に立つ人がとても立派だと思いました。
戦争小説といえば、酷い有様や玉砕、特攻隊など無慈悲で悲しいお話が全部と言っても過言ではありませんが、そんな戦争小説のジャンルを1つ増やしてくれたまさに明るい希望が見えるお話で、とても感動しました。
有名な戦艦や駆逐艦、作戦名などの名前も随所にでてくるので、歴史の時間軸的にもとてもわかりやすい作りだと思います。
戦争のあらゆることは次の世代に伝えていかなければならないと思いますが、そんな中、こんなお話もあるんだよとぜひ多くの人に読んで欲しいと思いました。
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アメリカが敵視した、人命を軽んじ、易々と玉砕するという野蛮な日本人観が、1人の米軍謀報部員の報告で覆った。
戦後占領政策転換の決め手となった1943年、北の最果てキスカ島での救出劇。
日本は人道を貫き5200名の兵役を助けた。
歴史に残る大規模撤退作戦を日米双方の視点で描く感動の物語。
この小説は史実に基づく
登場人物は全員実在する
戦後の日本の運命を大きく方向付けたキスカ島の休日劇。
多分ほとんどの日本人は知らない事実。
かなり考えさせられる一冊だった。。。
『本土決戦、一億玉砕、一億総特攻、神風。軍部の呼びかけに国民から強く反発する声もなく、むしろ積極的に応じているとの報告が多々ある。… どの戦術でも、日本の軍事司令は玉砕を強いて、無慈悲に兵を見捨ててばかりだ。なのに遺族は訃報を聞いても感謝を捧げている。…』
『兵士ばかりか非戦闘員までが玉砕をためらわないがゆえ、上陸による戦闘は熾烈を極めるとの意見が、いつしか大勢を占めました。空襲や原爆投下の決定にも、少なからぬ影響を与えたでしょう。しかし、日本人が国のため命を投げ出す危険な民族という見方は、かなり偏っていると考えています。彼らはわれわれと同じく人命を尊重し、殺戮を忌み嫌い、平和を愛しているのです。』
『日本国民が人命について、私たちと同様に重く考えているとお伝えください。犠牲を払い、無理を押してでも仲間の救出に向かう、これは私たちの心理となんら変わりません。彼らの玉砕も、戦局全体でみれば民族を絶滅から救おうとする自己犠牲であり、積極的な戦闘行動の一つだったのです。けっして自滅や破滅に肯定的ではありません。そこまでして戦う必要はないと教えることが、私に課された義務だと思います。』
by ロナルド・リーン(キスカ島への戦闘に同行した通訳)
→ 米国は日本人が、自決行為を積極的に行う野蛮な民族で、上陸による戦闘は熾烈を極めるため、それを避けて原爆の投下を決断したという、おそるべき事実。
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キスカ島の奇跡の撤退作戦の話。
キスカ島における、奇跡の撤退作戦は知っていました。小説なので、いろんな脚色はあるでしょうけど、人命を大事にした木村昌福少将は、そんな感じの人なんでしょうかね?現代人の感覚からすると、この小説で描写されたような感じがぴったりくるんでしょうけど、当時の軍人ですからねぇ。しかも、将官まで登った人ですから、そこまでほのぼのとするような人だったかは疑問。
物足りなかったのは、この作品のもう一つのテーマが、「人命を軽視する、狂気の民族」と言うアメリカの認識を一変させた出来事は何かと言うことなんですが、確かに、キスカ島撤退作戦は、人命を重要視したがための作戦ですが、それを目の当たりにした通訳官の、アメリカ軍上層部への過酷な占領政策の転換を呼びかける訴えの描写が、意外にあっさり。なんか、もう少し厚みを持たせられなかったですかね?「え?それだけ?」とちょっと思いました。
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「この小説は史実に基づく
登場人物は全員実在する」
第二次世界大戦中、アッツ島玉砕後、同じ運命を辿ることになると思われたキスカ島5,200人の救出劇
本の最初と裏表紙にこう書かれていたら、もう、読むしかない、と思わせた。結果、読んで良かった、と期待を裏切らなかった。
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『黄砂の籠城』に続く2冊目を読破。前著に続き、冒頭に「この小説は史実に基づく」との記載があり、従来の固定観念にとらわれた戦前の日本の姿とは違う一面を描こうという著者の姿勢が表れている。
とにかく、日本の近代史を冷静に見つめることは非常に難しい。これに対して真剣に挑戦している著者の姿勢は大いに応援したい。
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1943年8月15日、終戦の2年前のアリューシャン列島のキスカ島からの5200人の救出作戦の前後談。このような事件があったとは知らなかったが、アッツ島の玉砕の直後で米国が日本の死に急ぎ、不可解な民族との恐怖を抱かせた直後に陸軍の樋口季一郎中将、海軍の木村昌福少将らの連合作戦の見事な成功。そしてそれに振り回された米軍。1945年の8月15日以降もソ連との攻防戦で奮闘する樋口中将。そして1948年8月15日には地元で家族と共に製塩に従事する木村昌福氏が登場する。爽やかなこの2人と、それを尊敬する従軍記者菊池など、爽やかな人物たちだ。米国側の描写においても源氏物語に親しむ知日参謀としてロナルド・リーンなる人物が出てくるが、明らかにキーン氏!
そもそも8月15日という日付は終戦記念日ではない。戦争が始まる前から英霊を祀る日だったらしい。