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電子書籍
狂い切った恋の果てに成就する
2018/11/07 15:06
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投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
決して許されぬ契りを結んだ兄妹。
その片方が小野篁(おののたかむら)朝臣でなければ、悲劇には至らなかったのかもしれない。
御簾の奥深くに隠され、決して衆目の前に姿を見せない娘。
真珠とも衣通姫(そとおりひめ)とも形容されるほどの美貌を持つ。
その美しさに揺らぎなし、なにしろ共に小野姓を名乗る深草の土師(はじ)氏が拵えた形代なのだから。
形代に宿るは、冥府の官との二名を持つ篁が自ら反魂を施し蘇らせた魂魄。
哀れ、娘はいつしか己を傀儡と知り、父ではなく兄と悟る。
老いもせず死すらも望めないわが身、落涙もできず恋慕も分からぬ身の上。
しかし、それを知ってもなお、御仏にも極卒鬼にも魂魄は渡さぬと篁。
そんな兄を、とこしえに恨み・慕う、それだけを胸に秘め、悠久の時を過ごす。
後に鳥辺野に打ち捨てられた骸を見た男が語る、
秋風の 吹くにつけても あなめあなめ 小野とは言はじ 薄をひたり
絶世の美女の生に独自の解釈を加えつつ、"平安"とは名ばかりの陰鬱とした時代を切り取った中編。
現代文でありながら、うまく時代を感じさせる筆致が味わい深い。
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