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言葉で全て説明し尽くさない、匂わせるようなところがハードボイルド。でも一方で、情景や登場人物の外見描写はものすごく精密。そのバランスの良さがレイモンド・チャンドラーの凄さなのかな。なにより、村上春樹の翻訳がチャンドラーにぴったりはまっていて、なんの違和感もなく、古臭くもなく読めます。翻訳家の文体の魅力がこんなに発揮された翻訳小説に出会えたのは幸運でした。
タイトルが最後、泣かせます。でもそこはハードボイルド。全編を通じてフィリップ・マーロウのかっこ良さ、シニカルさが光っていました。
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面白かった。以前読んだ「ロング・グッドバイ」「リトル・シスター」よりも、マーロウが酷い目にあっている。マロイやインディアンなど、登場人物たちが一癖あって魅力的。
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初めて読んだチャンドラー
タイトルが改題前の『さらば愛しき女よ』だったら、読後感は全く変わっていたと思う。
誰に共感するかで評価も違ってくるのでしょうなぁ。
ミステリにハードボイルド要素は求めないタイプなので、正直かなり退屈ではあった。渋いと想像してたマーロウ、なんか若いし。アル中かってくらい酒浸りな上、よくわからん比喩連発。
しかし読後がさわやかなのでまぁいいか。
『ロング・グッドバイ』に期待。
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出所したばかりの大男ムース・マロイは、昔愛したウェルマを求めて彼女が働いていた店に来るが、なりゆきから黒人2人を殺害する。偶然その場に居合わせた私立探偵マーロウは興味を抱き、その店の昔の経営者の夫人を訪ねてウェルマのことを問う。その直後に、失われた宝石を買い戻す立会いという変わった依頼がマーロウに入るが、依頼者のマリオットは殺害される。マリオットの死の原因は?ウェルマの正体は?全てがつながってゆく。村上春樹の訳は簡潔。チャンドラーは人物も情景も巧妙に描写。ユーモアにも溢れるが、50年代のユーモアは少し時代遅れ。
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刑務所から出所したばかりの大男マロイは八年前に別れた恋人ヴェルマを探して黒人街へやってきた。しかし、ヴェルマは見つからなく、殺人を犯してしまい、行方をくらます。
偶然、居合わせたマーロウはマロイとヴェルマを命がけで追う。
マロイが可哀想。でも、八年も思い続けられるのは羨ましい。
マーロウは今回もすんごい気障!!男女問わずに瞳の色で人を見る。中でもレッドという小太りで整った顔をした若い男が気になる。本では見たことがあるが実際にはお目にかかれないすみれ色の瞳をしているってどんな人だろう。。
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チャンドラー『さらば愛しい人』読了。ハードボイルドがミステリではないのは、きっとハードボイルドというかたちをとりながらもそれが必ず一貫した情緒においてとりなされているからなんだろうな。これは非常にメリバなお話であり、悲恋であったけど、依頼以上を動かない彼はハードボイルドそのもの
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あらゆる意味でアメリカらしさに溢れた小説だ。マーロウはタフ・ガイなのだが、作中では一度も銃の引き金を引いてはいないし、拳を振るうことさえ稀である。というよりも、むしろ自分自身が痛めつけられっぱなしだ。それも、徹底的にこっぴどく。それでも、諦めることなく、ともかく前に前に進んで行こうとする。そんな姿こそが本当の意味でのタフなのだろう。この小説は、どこまでも通俗に徹することで、逆にその中から通俗を超えて浮かび上がってくるものを描いたのだ。マーロウが時を経てもなお強烈なリアリティを持つ由縁はそこにあるのだろう。
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マーロウのなんだか気障ったらしい台詞回しは、訳者である村上春樹の小説の登場人物に通じるところがあるように思った。
ハードボイルド=やせ我慢、と思ってしまうのは僕だけか?
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『ロング・グッドバイ』に続いて、村上春樹訳の私立探偵フィリップ・マーロウシリーズ。
原作はこちらのほうが前の作品のようで。
『ロング・グッドバイ』に比べると少々物足りなかったけど、こちらのほうが物語の展開がわかりやすくて読みやすかった。
--
まったく洗濯桶みたいにキュートな女だ。
(P47)
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”タフガイ”の私立探偵がフィリップ・マーロウが活躍する
チャンドラーの小説シリーズ。
推理モノ、として楽しむよりは、
ハリウッド界隈の上流階級のスキャンダルを覗き見たり、
警察内部の人間模様を垣間見たり。
そういったいろんな人間の生き様を見ながら、
主人公マーロウをはじめ、
小洒落た台詞の押収を楽しむ、そんな小説な気がします。
基本的には、いろんな人間の横顔や裏側をだんだん解き明かす、
そんな話が好きな人にお勧めかなぁ。
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本作でも相変わらずフィリップ・マーロウはクールでタフでハードボイルドなわけですが、「ロング・グッドバイ」に比べると、やはり少し見劣りします。
「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」のような名言もなく、マーロウさんがぐだぐだ言うセリフが多いです。
また、人生の悲しみに対する描写もイマイチです。
しかし、やはりメタファーは非常に凝って独特であり、村上春樹氏は本当にレイモンド・チャンドラーから多くのものを学んだ(若干パクリぎみの部分も)のだなと思わされます。
ロング・グッドバイに比べると、素晴らしい!ってほどではないですが、中々読めます。
最後の方に出てくるアンの『私はキスされたいのよ、ひどい人ね』というセリフと、最後の最後の「しかしさすがにヴェルマが向かったところまでは見えなかった」という終わり方は割と素敵かな。
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シリーズで読んだのは2作目。主人公のフィリップ・マーロウは、金字塔のような「ロング・グッドバイ」中ではどこまでもタフでクールな感じであったのに比べて、今回はどこか隙のありそうな、迷いもありそうな、それもあって人間味があって好きになれそうな感じだった。
主人公のマーロウが酒場で刑務所から出所したばかりの大男と出会い、その男が殺人を犯すところから物語は始まるのだけど、初めから終わりまで全体的に物語が変化に富んでいて飽きることなく読めた。
マーロウがいよいよ客船に乗り込む前夜、ホテルの部屋に一人で物思いに耽るシーンなんかは、物語全体の盛り上がりを静かに感じることができて好きだなぁ。
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チャンドラー長編7作目最後はこれ。いやあ、よかった。ロンググッドバイには及ばないけど、他の作品よりもストーリーも入り組んでいないし、それぞれのシーンごとマーロウの動きや言動がとっても印象的でかっこよくて入り込んでしまう。ヘラ鹿マロイや霊媒師アムスリー、ギャングのブルーネットをはじめ出てくるキャラクターも皆個性的だし、個人的にアンがとっても可愛げがあって好きなんだけど、マーロウは違うみたいだね。「男であることというのは、時々とてもきついことがある」と酒を片手につぶやいてみたいね。
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銀行強盗で8年間服役していた心優しき大男のムース・マロイ。
別れた踊り子の恋人ヴェルマを探して黒人街の酒場フロリアンを訪ねるが、酒場で冷たくあしらわれ激情に駆られた彼は殺人を犯して逃走してしまう。
現場に偶然居合わせた私立探偵フィリップ・マーロウはアテにならない警察に憤慨し、シンパシーを感じたマロイのため、ロサンジェルスの街でヴェルマ及びマロイ捜しを開始する。
そんな中、盗まれた宝石を取り戻すため、8000ドルの受け渡しに一緒に同行して欲しいとの依頼を受けたマーロウだったが、自らの失態により依頼人を殺害されてしまう…。
次第に絡み合う二つの事件。
果たしてマロイの一途な愛は成就するのか?
1940年に発表された私立探偵フィリップ・マーロウシリーズの長編第2作目。
今回は2009年に発表された村上春樹の新訳版に挑戦。
「10代の頃に読んだ作家を再読しよう」企画(笑)の第三弾。
いやぁ~、 この作品はチャンドラーの小説の中で
『長いお別れ』に次いで僕が好きな作品。
初めて読んだのは高校時代だけど、
いまだ夢から覚めやらず。
今読んでもチャンドラーの小説は抜群にカッコいい。
(やはり今でもフィリップ・マーロウは僕にとっての永遠のヒーローなのだ)
学生時代に読んだ清水俊二訳があまりにも素晴らしかったので不安だったけど、
なかなかどうして村上春樹訳も新鮮で、いろんな意味で楽しめた。
(ただ、微妙に改変したタイトルが物語っているとおり、 あえて比較するなら清水俊二訳の方がよりハードボイルドに則した硬質な文体だったのに対して、村上春樹の新訳版はいくぶんソフトな文体でハードボイルドに慣れてない人にも読みやすくなってる気がする。ただ、タイトルは清水訳の『さらば愛しき女よ』に分があるし、大男マロイは村上のムース・マロイより清水訳の『大鹿マロイ』と訳す方が僕は合ってると思うのだが…)
身長は180cm。体重85kg。髪は黒。肌は浅黒くガッチリした体型。
年齢は当時30代前半。服装は常に帽子と細身のスーツ着用。
拳銃はコルト38口径オートマチックを所持。
酒と煙草(キャメル)を愛し、
シニカルでいて、他人の気に障る冗談を好んで口にし、
どんなに痛めつけられても『痩せ我慢の美学』を貫き、警察や権力に屈しない、
孤高の騎士・ 私立探偵フィリップ・マーロウ。
今作でも、行きがかり上知り合った大男マロイにシンパシーを感じ、
頼まれてもいないのに自らヴェルマを探すお人好しマーロウが笑える。
いや、実にマーロウらしい(笑)。
変幻自在の比喩表現を駆使した詩的でストイックな文体。
社会批判を盛り込んだ深い文学性。
あふれるリリシズムと
散りばめられた宝石のような名言の数々。
チャンドラーの作品は
探偵小説としての物語の構成やプロット云々よりも
とにもかくにも文章が秀逸なのだ。
言葉の使い方、描写力、形容の仕方、優れたリズム感で読ませるシャレた会話、絢爛たる比喩の多用など
ストーリーを抜き���して、ただ文章を読むだけでも充分に楽しめるところが
数ある探偵小説の中でも異色だし、深い味わいを生んでる秘密だと思う。
(もちろん、その文体にはマーロウの心情が溶け込んでいる)
チャンドラーが大都会ロサンジェルスを舞台に描くのはいつも
上流階級と下層階級との対比で、
今作でも上流階級に生きるしたたかな女たちと
貧しいけれど誇り高い騎士マーロウ、そして天使のように純粋な犯罪者マロイを対照的に描いている。
常に弱者の側に立ち、
何度となく痛い目に遭いながら
マロイを放っておけないお節介なマーロウのドン・キホーテの精神。
常に自分のルールに従い、
敵が巨悪であっても気に入った人間のためには敢然と立ち向かう姿を男なら笑えるわけがない。
学生だった僕が打たれたのは、
力こそすべての古いアメリカ的な強さではなく、
マーロウが体現していた武士道に通じる精神の強さ、
信念を貫く不器用な生きる姿勢だったんだと今にして思う。
チャンドラー作品にはいつも悪女(ファム・ファタール)が出てくるのだが、
今回は美貌を武器に男を裏切ることでしか生きていけなかった女を描いていて
マロイの不器用な生き様と同様に哀切極まりない結末は
深い余韻を残す。
大男の前科者、ムース・マロイ。
行方不明のマロイの恋人、ヴェルマ・ヴァレント。
好奇心旺盛で男勝りでマーロウにゾッコンな(笑)、元警察署長の娘
アン・リオーダン。
クサい匂いを発するインディアンの用心棒、セカンド・プランティング。
暗黒街のボス、レアード・ブルーネット。
マーロウを助け賭博船までの案内人を買ってでるレッド・ノールガアドなど、
とにかく脇役たちが生き生きとして素晴らしく魅力的なのも
チャンドラー作品の醍醐味だ。
簡潔に言えば今作も『長いお別れ』同様に
男が男を助けようとする話である。
行くなと言われれば言われるほど首を突っ込んでしまうひねくれ者のマーロウが、
純粋な心を持つ一人の犯罪者のために
身も心もボロボロになる話である。
しかしそこには男たちが憧れた生きる姿勢があり、
自分が信じた者のために強くあろうと
もがき続ける男のロマンがある。
あとがきにある村上春樹の言葉、
『チャンドラーの小説のある人生と、チャンドラーの小説のない人生とでは、確実にいろんなものごとが変わってくるハズだ。』
におおいに共感。
奇しくもマーロウに憧れた松田優作フリークのリリー・フランキーが言った
『男には2種類しかない。優作が心に棲みついた男と、そうじゃない男だ』
と並ぶ、愛ある名言だと思う。
文科系「不良」少年少女たちよ、
(そして草食系男子よ!)
カッコいい男が知りたけりゃ、
迷わず読むのだ!
(なぁ~んて、ハードボイルド風に決めてみました笑)
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レイモンド・チャンドラーが1940年に発表した第2作目の長編。
原作は、長く清水俊二訳の『さらば愛しき女よ』(1956年刊行)で親しまれてきたが、本作品は2009年に村上春樹が新訳で発表(単行本。2011年に文庫化)したものである。(邦題は清水訳が優れていると思うが)
本作品が発表後70年を経ても新たな支持を失わないのは、ストーリーの展開の妙よりも、主人公フィリップ・マーロウの、クールで、ウィットに富んでいて、少しシニカルな語りと、見かけによらないタフガイ振りに魅せられる読者が多いからなのであろう。
ロングセラー・シリーズ物においては、たいてい魅力ある主人公が登場するものだが、チャンドラーが作ったマーロウはその代表と言えるだろう。
あるホテルに聞き込みに行ったマーロウが、情報を得るために切り出す場面~「好きな方を選んでくれ・・・聖書を一章読んであげてもいいし、酒をいっぱいおごってもいい。どっちがいいね?」
事件を解決した後、アン・リオーダン嬢がマーロウに語る場面~「あなたって大したものよね・・・どこまでも勇敢で、強情で、ほんの僅かな報酬のために身を粉にして働く。みんながよってたかってあなたの頭をぶちのめし、首を絞め、顎に一発食らわせ、身体を麻薬漬けにする。それでもあなたはボールを離すことなく前に前にと敵陣を攻め立て、最後には相手が根負けしてしまう。どうしてそんなことができるのかしら」
村上春樹をして、「チャンドラーの小説のある人生と、チャンドラーの小説のない人生とでは、確実にいろんなものごとが変わってくるはずだ。そう思いませんか?」と言わしめる、チャンドラーの代表作である。
(2013年5月了)