- 販売開始日: 2017/09/30
- 出版社: 早川書房
- レーベル: ハヤカワ・ミステリ文庫
- ISBN:978-4-15-070462-9
さよなら、愛しい人
著者 レイモンド・チャンドラー(著) , 村上春樹(訳)
刑務所から出所したばかりの大男へら鹿マロイは、八年前に別れた恋人ヴェルマを探して黒人街にやってきた。しかし女は見つからず激情に駆られたマロイは酒場で殺人を犯してしまう。現...
さよなら、愛しい人
商品説明
刑務所から出所したばかりの大男へら鹿マロイは、八年前に別れた恋人ヴェルマを探して黒人街にやってきた。しかし女は見つからず激情に駆られたマロイは酒場で殺人を犯してしまう。現場に偶然居合わせた私立探偵フィリップ・マーロウは、行方をくらました大男を追って、ロサンジェルスの街を彷徨うが…。マロイの一途な愛は成就するのか?村上春樹の新訳で贈る、チャンドラーの傑作長篇。『さらば、愛しき女よ』改題。
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クールな詩情を堪能する
2011/10/05 21:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mayumi - この投稿者のレビュー一覧を見る
マーロウは、出所したばかりの男が、殺人をおかすところに出くわしてしまう。
警察に、過去を消したい女に、過去にしがみつく女、様々な思惑の混沌の中を、マーロウは答えを見つけるために奔走する。
にしても、色々やられすぎですよ、マーロウ。
結構、フルボッコにされてて、若いなぁ、青いなぁと思うのである。
うん、「ロンググットバイ」に比べると、すごく若い感じなので、ヤバイところに自ら突っ込んでいってフルボッコになってる感じがする。
と、チャンドラーは詩的だなと思う。
殺人を犯した男、マロイがかつても恋人を思う描写も、女が自分を縛るものを振り切って逃げだそうとする心情も、いわばエゴであるそういうものが、とてつもなく美しいものに思える。
まぁ、人間は所詮エゴの生き物なのだけど、それを許容する、昇華してしまえるところが、チャンドラーの魅力なのかもしれない。
…最近のミステリーは健康志向の人物が多いからなんだろうけど、思わずマーロウに「飲み過ぎ、吸い過ぎ」ってつっこみいれたくなって困ったですよww
固茹
2022/12/04 22:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:象太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「君に好意をもっているんだよ」
「良い子だ。私の趣味ではないが」
「良い子は気に入らんのか?」、彼は新しい煙草に火をつけた。そして手を振って、その煙を顔の前から払った。
「私はもっと練れた、派手な女が好きだ。卵でいえば固茹で、たっぷりと罪が詰まったタイプが」
「そういう女には尻の毛までむしられるぜ」とランドールはどうでも良さそうに言った。(本書より)
たっぷりと罪が詰まったタイプ、か。フィリップ・マーロウのセリフは実に格好いいの一言に尽きるよ。
ああ、好き
2022/03/08 19:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初のムース・マロイの事件からどんどん離れていっているようで・・・。
このもって行き方かと納得。
遠回りにも危険が付きまといすぎて、マーロウ氏にはハラハラさせられっぱなし。
でもそこも好き。
いい訳です
2021/12/07 06:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽんぽこ仮面 - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前のも悪くはなかったけどさすが村上さんの訳は引っかかるところがなく物語の世界に没入できます。邦題もこっちのほうがいいです。胸が熱くなる一冊です。
文体が村上春樹である
2015/08/25 21:27
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは村上春樹訳であるが、その文体がぴったりとはまっていてびっくりした。他にも村上氏の訳した作家の本は読んでいるが、これほどぴったりだと感じたことはなかった。ハードボイルドタッチでしかも乾いていて、セリフにユーモアがある。村上氏はかなりチャンドラーの小説に影響を受けているとわかる。村上春樹の小説が好きな人ならチャンドラーの作品も必ず気に入るだろう。
見知らぬ隣人たちとのコミュニケーションン
2018/10/16 10:23
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KTYM - この投稿者のレビュー一覧を見る
レイモンド・チャンドラー52歳時(1940年)の作品。フィリップ・マーロウものの第2作。
以前、清水俊二訳で読んでいたのだが、村上春樹の新訳で再読。翻訳のおかげなのか端正な文章でとても読みやすいし、戦前の作品であるにもかかわらず、まったく古臭さを感じず、我々と同時代の作品という印象を受けた。
マーロウも(ハンフリー・ボガートのような)ごすごすした中年男ではなく、やや青臭さも残るハンサムな青年というイメージ。
刑務所から出所したての大男「へら鹿」マロイによる殺人現場に居合わせたことをきっかけに、マーロウは事件に巻き込まれる。様々な人と会い、会話し、殴られ、薬漬けにされたりするうちに、やがて事の真相が明らかになって行く。マーロウ自身に確固たる捜査方針や見通しがある訳でもないので、話の展開は分かり難く(はっきり言って、行き当たりばったり)、筋を追おうとすると挫折します。
一方で、多彩な登場人物とマーロウとの間で交わされる会話はとても魅力的。ギャングの大立者やひねくれた警察官、酒浸りの寡婦、ジゴロ、いんちき心霊術師等々との会話を通じて、個性的な人間像や、大都会ロスの社会状況などが浮かび上がって来ます。特に富豪の超美人ミセス・グレイルとマーロウとの酒飲み対決にははらはら、ドキドキさせられます。この洒落たというか、当意即妙のやり取りこそが、本書の読みどころと言えましょう。マーロウの捜査は、見知らぬ隣人たちが棲む大都会におけるコミュニケーションの試みと言えます。そして、どれ程人に会い、気の利いた会話を積み重ねても(そして殴られ、薬漬けにされても)、見知らぬ隣人たちとの関係性が深まることはないのです。これは都市への人口集中が進み、旧来の地縁的、血縁的人間関係が崩壊しつつあった1940年のアメリカの社会状況を反映したものであると言えるかもしれません。
チャンドラーはハードボイルドの代表的作家と呼ばれ、確かに本書も全編マーロウの一人称目線、会話主体で、ハードボイルドの特徴を備えた文体で書かれていますが、ハードボイルドと呼ぶには、少し饒舌過ぎるような気がしました(おしゃべりなハードボイルドって、少しイメージ違いますよね)。
危険な女を追いかける男たち
2020/05/28 16:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
一途な想いに捉われ続けて、破滅的な道を歩んでいく大男のマロイが痛切です。若き日のフィリップ・マーロウも、傍観者に徹しながらも心揺れていて人間味がありました。