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ミステリとしても、香港史の叙述としても面白かったし、これを王家衛が撮るの!?どんな風に!?と読みながらわくわくした。とりあえず、前半三話の關sir役は梁家輝に一票。
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香港社会と香港警察の時代を追いながら、主人公ローとクワンの歩みを綴る社会派ミステリーで連作短編集。
オールタイムベスト級だらけ。横山秀夫+連城三紀彦のよう。完成された警察小説、超絶トリックスターである。
「黒と白のあいだの真実」
あらすじだけでもうワクワクが止まらない。設定を生かしたロジック。どこに向かうか見守っていると…前代未聞の超絶ギミック。「戻り川心中」クラスである。はじめから勿体ぶらず、いきなり感情が揺さぶられる衝撃。放心状態で次の短編へ。
「任侠のジレンマ」
正義感の塊ロー。彼のまっすぐな若い血は、正しい道へ進んでいるのか?悩む彼に告げるクワン。構図の逆転。もはや芸術か。
「クワンのいちばん長い日」
作者の全部収束させたわというドヤ顏がみえる。詰め込みすぎな事件を見事な構成力でまとめあげた。脱帽。行き着く先が全く想像外だった…
「テミスの天秤」
読者が予想するのは、案外簡単なものである。ただ、どこまで先見できるか?全てを知った先には、胸の痛みが収まらない。
「借りた場所に」
短編が進むごとに社会派の一面。特に香港警察の汚職濃度が増していく。誘拐犯対警察。コンゲームものとして、傑作に値する。さらにそれ以外の価値も…
「借りた時間」
冒険ミステリ。ほかの作品とはまた違った感覚で、堪能。こんな作風もできるのかぁと感嘆したのも束の間、ラストにおける破壊力。全体をとおした上での、この終わりに満点以外考えられない。
完成度でいえば古今東西の名作と肩を並べる。今後、語り継がれる海外ミステリ。発売年に読めた事はツイッターに大感謝である。
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イメージしたのは、ジャッキーチェンの「ポリスストーリー」の雰囲気。日本とも根底でつながる刑事ドラマの雰囲気と本格推理小説が合わさったような。急などんでん返しで驚く。最後の章は「そうくるか」と思って読み直した。映画化するよりむしろ、ドラマ化したらおもしろいんじゃないか。
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今年2017年ベストテン確実な1冊。刑事と本格ミステリーの見事な融合。香港歴史を背景にした社会派ドラマでもある。
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警察ミステリの雰囲気をまといながらも、中身は本格ミステリというやや変わり種。このスタイルは作者の試みで、6つの独立した中編の「本格」を描くことでその謎解きを強調し、同時に6つの物語をつなげばそこに完全な社会の縮図が見えてくるというのが狙いらしい。
作中で人間ドラマを描きながらも、後半は論理的な展開になるので、そこが新鮮でもあり違和感でもあり。横山秀夫の作品に近いものがあるが、それよりもっと冗舌な感じ。
本格ミステリの技巧によって明らかにされていくのは、返還の前後において変貌を遂げていく香港の姿そのもの。香港の警察官はどうあるべきかというテーマがドラマの背後に響いており、香港警察の内幕が事件の真相に大きく絡んでくる。これはまさに香港出身の作者でしか書けない話だと思う。
最終話を読み終えた後の余韻はなかなか。年代順に再読したい気分にさせられるところが作者の術中にハマったってことかな。
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書店のPOPに心奪われ購入。
期待に違わぬ面白さだった。
あとがきでも言及されているが、本著は綿密なロジックで構成された推理小説の「本格派」としての一面を持ちながら、およそ半世紀にわたる香港の社会情勢の移り変わりの歴史を描ききった「社会派」としての一面も併せ持つ。
話の本筋ではないが、イギリスと中国という大国の教義に翻弄される香港市民が私は特に印象に残った。
個人的には、著者の最新刊「網内人」もぜひ翻訳してほしい。最後にもし、これから本著を読む人は、あとがきで香港の歴史を予習しておくことをおすすめする。
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返還から20年経ち、中国との今後の関係が気になる香港を舞台に、1967年から2013年を逆に辿りながら、市民の側に寄り添い正義を貫いた刑事クワンの生き様が様々な視点から語られる。悪は許さず、捜査に情熱を傾けるクワンからは、香港市民が頼りにした理想的な香港警察の姿が浮かび上がるが、それと共に街の裏で蠢く黒いものも見え、この街が清濁併せ呑むかのようにして発展していったことに思いが飛ぶ。
香港警察を舞台にした数々の映画を彷彿とさせるような展開も実に良く、天安門事件以前の時代を舞台にした最後の二編も、経験のない時代ではあっても、ムードは感じやすい。そして、最後の一編を読み終えて、再び最初から読みたくなったのは言うまでもない。今年を代表する海外ミステリーとして評価されることは非常に嬉しい。
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読みごたえのある香港警察ミステリ。掌で転がされるどんでん返しの作風はジェフリー・ディーヴァーのリンカーンライムシリーズを思わせる。初読の海外ミステリとしては近年一番の出来。
時折出て来る中国の諺に精神性が感じられて興味深い。8.5
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初華文ミステリ。
いやぁ、読みこなせるかなぁと不安だったけど全く杞憂。
面白かった。充分堪能。1967年からの香港の情勢や地理についてちゃんと知ってたらもっと楽しめたかも。
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これは凄い! 香港の裏社会を描いた社会派ミステリでありながら、緻密な本格ミステリにもなっている。文句なしの傑作!
末期癌で体を動かせないだけでなく声も出せない「名探偵」が第一話から出て来るのに、まず面食らった。そして二話三話と進む毎に時代が遡って行く。最終話まで読んだら再び第一話を読まずにいられなくなった。これはヤラれたな。
謎解きミステリとしても実に良く出来ている。意外性が充分であり、尚且つ納得させられた。こういう読書体験は滅多に出来ない。台湾ミステリ、畏るべし。
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13・67とは2013年と1967年のこと。
2013年から文化大革命の翌年である1967年に向かって、逆年代史の形式で書かれている。
巨大なマフィアのボスを追い詰めていく香港警察のクウァン警部が良いアジを出している。
逆年代史でありながらミステリーという組み合わせ自体も新鮮でいいのだが、文化大革命以降の香港史や混沌とした市街地の風景もありながら展開していくので、かなり重厚で読み応えバッチリ。
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【220冊目】ミクロでは「本格」、マクロでは「社会派」と筆者自身が振り返っているけれど、そのとおりだと思う。謎解きも安定感と意外性が両立していてかなり好印象。第6話目のまで読むと第1話を読み返したくなる仕掛けがあるとのことだったが、予想に反して大した仕掛けではない。けれど、そうした控えめな仕掛けが好印象に思えるほど、1つ1つの話のクオリティが高いと感じた。香港の推理小説に注目したくなっちゃうなぁ…
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「人の命が何よりも大切」という考えで結ばれた天眼クワンと弟子ロー。1967~2013年のアイデンティティが揺らいでいた香港で警察官として事件を解決していく。
本作は6篇の連作中編形式で2013年から時代を遡り、クワンを中心に過去を解き明かしていく。さらにローや他の登場人物達を過去に繋がり持たせることで物語りに厚みを持たせ、それが読み応えとなっているところが面白い。
香港といえば中国に返還されたものの言論統制が年々厳しく、政府を批判した書籍が置かれていた書店の店主が捕まったなどのニュースが聞こえてくる。
作者はそんな香港社会の現在の切実さも併せて訴えたかったのだろうと思う。
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華文ミステリにこんな作品があるとは
2013年から1967年へ遡りながら、香港警察の頭脳・クワンの人生と、香港社会の移り変わりを描く、本格×社会派ミステリ。本格ミステリの海外ランキングNo1の評判に相応しく、各中短編それぞれに様々な技巧を凝らしています。第1話から超展開ですが、それが真価を発揮するのは、"出発点"である第6話まで読み終えた時。思わず"最終地点"である第1話を読み返してしまうでしょう。
ベストは「クワンのいちばん長い日」。これだけ詰め込んで中短編として纏めたのは見事としか言いようがありません。次点は「テミスの天秤」。
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6話の中編小説。話が2013年から始まり、最後が1967年の話になるので最後まで読んだ後に1話目を読み返したらきっと最初に読んだ時より感情が揺さぶられると思う。香港警察のクワン教官と部下のロー警部が主人公。頭脳明晰な犯罪者の石本添との推理対決やマフィアのボス達との騙し合い等、警察小説として読み応えは大満足。3話のクワンのいちばん長い日が好きかな。