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紙の本
中野重治と日本共産党
2009/11/30 23:15
9人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中野重治は、評価の大きく分かれる作家である。
反戦平和思想の文学者としての大きな評価を得ている反面、その生き方、すなわち戦中の転向表明や戦後の日本共産党再入党などの一貫性の欠如を思わせる経歴に疑問を投げかけるものもいる。
価値観が両極化し、思想の対立が生命的危機や冒涜につながった戦前・戦中の知識人の生き方について、評価することは私にはできない。ただ、中野重治が発した言葉の端々から、彼の思いを自分なりに再現し飲み込むことで自分なりの評価としておきたい。
私事になるが、私は祖父が戦争に行った世代に属する。そして祖父は戦争から帰ってくることはなかった。私の祖母や母親を残したまま戦死した。
そんな名も無き一兵士と、残された遺家族の無念に対し、中野が発する言葉から、私は中野の反戦平和思想を少しは理解できたような気がする。
「話を兵隊に持つて行こうか。あの時期に兵隊のおかれた位置は、国民一般のおかれた位置の象徴であった。」
一人ひとりの兵士は決して軍国主義の悪が理解できない“バカ者”ではなかった。戦争に反対することもできず犬死した“おろか者”でもなかった。すくわれた思いがする。
市民の視点に立ち、戦争を行った国家の愚をたしなめる中野の思惑が感じられる。
中野の平和に対する思いがいまひとつ理解されないことの理由の一つに、彼と日本共産党の微妙な関わりが挙げられよう。
今に至る日本共産党の一般受けされ難い体質が、とことんこの党に関わろうとした人々の評価にまで影響している。
「いますぐ読みたい日本共産党の謎(徳間書店)篠原常一郎・筆坂秀世著」によると、日本共産党の「前衛」思想として、レーニンの言葉が次のように紹介されている。
「科学となった共産主義理論を労働者階級が自然に身につけることはできない。それは、労働者階級に外から持ち込まれなければならない。」
つまり、「共産主義の思想を理解できる能力のない労働者階級を教え導くのが、前衛たる共産党の役割」ということらしい。一種のたちの悪いエリート意識。
この党に期待することが大きいだけに、この姿勢を早く改めてくれることに大きく期待する。
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