投稿元:
レビューを見る
本作は「膨大な分量になるような、永年に亘る貴重な研究の成果を、読み易い型に巧く纏めて紹介」という“新書”の“らしさ”が溢れている秀作だと思う。そして「普通の武士」(=江戸時代の“サラリーマン”)の様子が実に活き活きと伝わる。お奨めだ!!
投稿元:
レビューを見る
桑名・柏崎日記は桑名藩の下級武士、渡部平大夫、勝之助親子の交換日記である。桑名に住む平大夫と飛び地であった柏崎に赴任した勝之助がお互いの消息を伝えるため、十年に渡り続けられた。
本書は日記を分かりやすく解説した労作であるが、残念な事に幾つかの誤りがある。(P26越後の上杉氏を家康が米沢に追い払った。P37福島の関所業務は、地元の旗本山村氏が幕府の代行で請負っていた。P40丹波川の渡しの渡し賃について公用武士は無料だった)
初歩的な誤りは記述の信憑性を傷つける。参考文献の一覧を欠くことも惜しい。
投稿元:
レビューを見る
江戸時代、桑名藩米蔵業務についていた下級武士親子が桑名と飛び地である柏崎に別れて暮らしていた10年余にわたり手紙のやり取りをしていた記録。業務柄、武士への給与である米の配給方法、藩による借り上げ米布告、台帳記入方法など当時の武士の生活の基準である米を巡るやりとりが描かれている。とは言え、読者の読みやすさを勘案してのことと思うが原文が提示される部分が極めて少なくやや躍動感に欠けるきらいがあるのが残念。
投稿元:
レビューを見る
桑名と柏崎に、離れて暮らした武士の親子があった。父は桑名で米蔵の出庫係、息子は柏崎で年貢の取り立て係として、それぞれ米に関わる仕事に就いていた。この二人が、十年にわたり、子供の成長、旅、暮らし、そして仕事の詳細を記し、交換し続けたのが、幕末の第一級史料、『桑名日記』『柏崎日記』である。膨大な量の史料の読み解きから、下級武士の仕事と生活が見えてくる。
投稿元:
レビューを見る
本書は、江戸末期の天宝10年(1839年)から、嘉永元年(1848年)の間に伊勢(三重県)と越後(新潟県)柏崎の間で交わされた交換日記の記録である。伊勢の書き手は、桑名藩蔵奉行の渡部平太夫、柏崎の書き手は平太夫の養子渡部勝之助、平太夫は10石、勝之助は8石の下級武士である。その日記の内容は、実に詳細で江戸期の下級武士の実生活を生き生きと描き出している。
本書では、「年貢米や検地の地方役人の仕事」や「当時の貧しい実生活」を詳細に描いている。商品経済が発展し、米経済に頼った武士階級が苦しい生活に追い込まれている実情が浮かび上がっている。また、庶民の生活は、現在から見ると極貧としか言いようがないが、四季折々にそれなりに楽しんでいた様子が手に取るようにわかった。
当時は行政官僚である下級武士が司法業務も兼務していた。勝之助の「まことにいやな勤めなり」との感慨には、そうだろうなと同感する思いがしたし、13歳くらいで四書(大学、中庸、論語、孟子)の素読を終了し、14~16歳で五経(易経、書経、詩経、礼記、春秋)の素読を完了する当時の教育システムには、すごいと素直に思った。ただ、多くの子供が死亡する当時の状況の詳細や、勝之助の妻もさまざまな病の末に第6子の出産の翌日に38歳で死亡する記載など、当時の医療の水準の低さを改めて実感した。
歴史の大きな動きと何の関係もない当時の下級武士の日常生活は、学問としては文化人類学の範疇になるのだろうか。淡々と描き出される日常生活には当時の人々の息づかいを感じる気がした。
このような記録を読んでも、実益はあまりないように思えるが、このような江戸期の庶民と下級武士の生活を知るようなことこそ「教養」と言えるのかもしれないと思った。あまり実生活の役には立たないかもしれないが、読んでなんとなくホッとする思いがする本と感じた。
投稿元:
レビューを見る
1710 三重県桑名の松平定重が高田に転封となる 郡代野村事件 高田はんの石高は6万7千石、桑名の表高11万石 その差をうめるために柏崎付近の地が付け加えられた。
弘化4年1847 3/24 柏崎は大地震に見舞われた
陣屋 郡代 青木市左衛門 勤番御郡代 西垣武左衛門
陣屋の構成 郡代1 勘定頭2 横目2 勘定奉行2 代官2 勘定人7 郷手代7 下横目2 郷使い6 定加勢3 町同心3
柏崎学校 生徒50名 13歳くらいで四書の素読終了(大学、中庸、論語、孟子)五経(易経、書経、詩経、礼記、春秋)の素読終了が14−16歳
極楽寺の梅桜
5・13−15閻魔市
マラリア 瘧り(おこり)
投稿元:
レビューを見る
柏崎日記と桑名日記
赤ん坊連れの百里旅―桑名から柏崎へ
金庫番から村回りへ―勝之助の業務 柏崎
股引き半纏で、検地と検見―地方の業務 柏崎◆給与米は品切れ―平大夫の業務と家庭生活 桑名
豆腐一丁も「つけ」―収入と支出 柏崎◆米を売る侍―平大夫と周辺の経済生活 桑名
まことにいやな勤めなり―公事方業務と勝之助 柏崎
消えた皮算用―天保の改革の余波
水野忠邦、失脚の日―勝之助の江戸出張 柏崎
お見舞米、運送準備の旅―柏崎~松代往復
離婚多発の柏崎―近隣・同僚、町と村の人々
十歳で「四書」素読完了―桑名と柏崎の教育
宴会やつれ―柏崎と桑名の相互儀礼
柏崎と桑名の季節と行楽
さまざまな病い―種痘以前のこと
すじかい侍―武士の非行と処分 桑名
三角便と直接便―情報の伝達
候文と会話体と―文体・語法・用語
戊辰戦争をかいくぐった日記
著者:加藤淳子(1932-、名古屋市)