紙の本
初めてふれたアイスランドのミステリ
2020/05/12 12:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kobugi - この投稿者のレビュー一覧を見る
アイスランドのミステリという点に惹かれて購入。最初は固有名詞がなじみにくいため、読み進められなかったが、読んでいくうちに作中の世界へと誘われていく。ホテルという場所の設定もおもしろい。また、主要人物達の内面描写もリアリティがあり、よい味付けに。シリーズの第3作とは知らずに購入。以前の作品を読むべきか、それとも次作に進むべきか、嬉しい悩み。
紙の本
可もなく不可もない作品
2022/07/07 05:32
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
海外ミステリーって面白いかどうかは置いといても、まずは読みやすくないと、と思うのですが、この作家の作品は読みやすくていいです。シリーズ第3作目。ホテルの地下で、少年時代、スター歌手だった男性が殺害される事件が発生。謎が面白いわけでもなく、トリックがすごいわけでもないのでわミステリーとしては可もなく不可もなくというところでしたが、むしろ主人公の刑事をはじめとした周囲の人を巡る家族について問いかける作品でした。全体として落ち着いた作品のためか、なんか寂しくて暗い印象なのが残念なところです。
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ホテルのドアマンの殺人事件と並行して、児童虐待の疑いの父子の件と、エーレンデュルの家族の話が展開していく。
親子関係の、というか親が子供に与える影響の大きさに慄然とした。
エリンボルクのがかかえてる事件の方の真実も気になる。
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北欧の小説はどれもそうなんだが、社会に蔓延る問題を上手く取り入れて作品にしている。
この声という作品もミステリーなんだけれど、ミステリーの前に社会派をつけるとしっくり来る。
子供はある程度の年齢がきたら1人の大人として接するべきだし、ましてや親の世間体やつまらない見栄、自己満足の為に子供に何かを押し付けたり縛りつけるなんてもってのほかだ。
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4月-1。3.5点。
ホテルのドアマンが、ホテルの地下室で殺害される。
少年時代、ソプラノ歌手だった被害者。
哀しい人生。この作家、事件と言うよりは被害者の人生の描き方が珠玉。背景が哀しく、はまれる。
次作も期待。
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うーむ。読み始めから、雰囲気が暗いなあ、と。この作家さんの作品は全てそんな感じですが。誰も救われないまま、事件が解決して終わったという感じ。明るい要素が無さすぎるのも、読み進めるのがつらくて、ああ終わってほっとした。
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今回もとても引き込まれた。派手さはないけれどすごく好き。いつもやるせなさが残るけれど、読み終わった後にいろんなことを考えさせられる。
徐々に明かされていく過去と人間関係。家族の形。ありのままの自分をそばにいて愛してくれたら。簡単なはずなのに難しい。
家族の愛と幸福と、だからこその悲しさが漂う物語だった。
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シリーズものの3作目だということを知らずに買ってみた。
そのせいなのかどうなのか、主要な登場人物のキャラクターが序盤の会話や描写からイマイチつかみにくい。
根底にある文化の違いという側面を置いといたとしても、訳文にはもう少しローカライズ的な発想があってもいいのでは、と思った。
家族とは、と読者に問いを投げ掛けつつ展開されていくプロットは練り上げられており、読み応えがあった。
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う〜ん、なかなかの力作。種々の問題を同時進行的に扱う手法は感動的。アイスランドの作品は初めてかも。久々の感動をありがとう。
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孤独な生活を送っていたドアマンがホテルの地下室で惨殺される。
かつて男は、美しい歌声で人々を魅了したことがあった。だが、避けて通ることのできない変声のため、スポットライトを浴びた初舞台で、一瞬にして「ただの少年」へと変わったのだった。厳しく指導し息子に期待を懸けていた父親。失望と嘲笑、果ての転落。以降の人生はもはや「余生」に過ぎなかった。人々との関係を絶ち、人畜無害となっていた男を殺害した動機とは何か。レイキャヴィク警察の捜査官エーレンデュルは、私生活でのトラブルを抱えつつも、濁りきった事件の底に沈殿する鍵を求めて、再び水中深くへと潜り込んでいく。
インドリダソン翻訳第三弾。「家族」を主題とする著者の主張がより明確となり、前面に出てきている。本作では、親と子の関係性を問い直す三つのケースを扱い、マイノリティに関わる現代的な問題も絡めている。その中心となるのは、世捨て人同然となった男の半生なのだが、挫折の容量は重いとはいえ、人間の業に思いを馳せるような悲劇性は高くない。捜査を主導する主人公エーレンデュルの家族関係とのリンクを一層深めているため、軸となる事件自体の強度が弱められた感じだ。テーマを深めるためのメッセージ性が過多となり、肝心の物語が薄くなってしまっている。前2作「湿地」「緑衣の女」に比べてプロットの構成力も弛緩しているは残念だ。
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クリスマスは幸せな人たちのもの。
この小説はこの文章に全てが凝縮されていると思った。
色んな出来事が重なって語られる。かつて子供スターになりかけた元ホテルドアマンがサンタクロースの格好でホテルの地下で殺されたのはなぜだったのか。
西欧はクリスマスが特別なお祭り? なのでクリスマスに少しでも家族が幸せになれるというプレッシャーがすごく強いのかなとは思う。この作者の書くアイスランドはとても暗い色の世界に見える。エーレンデュルが10歳の頃から闇を抱えていたことをエヴァ=リンドに告白できて良かった。二人がゆっくり家族になっていくのイライラするけど、次の作品を読むの楽しみ!
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登場人物それぞれの家族の葛藤や闇を丁寧に描いている。ミステリでここまで登場人物の葛藤や闇を描き切った作品にはこの書以外、出会えたことがない。
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アーナルデュル・インドリタソンは「このミス」で見つけた。「湿地」「緑衣の女」に続いて三冊目になる。流行の北欧ミステリなのだが、同じ地域だと大雑把に捕らえても、その作風はそれぞれまったく違っていて面白い。
アーナルデュル・インドリタソンの作品の舞台からは当然北の風土感が伝わってくるが、読みどころは捜査官のエーレンデュルの心理描写や風景描写は、繊細で品がいい。
エーレンデュルが抱えている個人的な悩みも深い、エピソード風に挿入されている過去に起きた出来事、彼の未だに囚われている苦しみに事件解決よりも惹かれるときがある。
今回の事件は、クリスマス前の浮き立つ世間をよそに、有名ホテルのドアマンが、地下に与えられている小部屋で殺されていたことが発端になる。イベントに着るサンタの上着をはだけ、ナイフで滅多刺しにされ、下着は足元までずらした異様な姿だった。
被害者のグロドイグルは28歳から20年間、ドアマンをしながら雑用も引き受け無事に勤めてきた。
グロドイグルは子供時代は天才的なボーイソプラノ歌手で、地方で認められ始めていた。北欧巡業も決まっていた。が初めての大きな舞台で歌い出そうとしたとき突然変声期を向かえ、その後は消えてしまった。
その後彼にまるで関心のなくなって家族は断絶した。
しかし胸に何度も突き刺されたナイフの跡は何を意味するのか。調べを進めるうち、直前に接触した人物が分かる。
彼はイギリスから、殺されたグロドイグルが子供時代に吹き込んだレコードを買いにきたのだった。
残ったレコードは収集家が莫大な値段をつける超レアものだった。彼は手付金を受け取っているはず、が部屋にはなかった。
麻薬も関係がない、ホテルの陰の娼婦斡旋も利用したことがない。不審な人の出入りもない。
彼の過去は、子供スターとして短期間は世間に知れ、それが原因で学校では苛め抜かれ、常に公演の失敗を笑われ実に惨めに生きてきた。
スターにするという夢のために父との過酷な日常を耐えた日々、ついに父と争って動けなくした。姉は手の平を返すように冷淡になり、家を出た。
世間との接触をたって、ホテルの制服の中に逃げ込んでいた。彼がぬいぐるみを着るクリスマスのサンタは子供ちに人気だった。
エーレンデュルとチームが次第に彼の過去に迫るにつれ、形は違っても、自分が抱えている癒されない過去が思いだされ苦しみながら話が進んでいく。
一人の男の人生がこうして幕を閉じた後も、周りの人々の暮らしは続く。グロドイグルと関わった人たちの思いと、犯人の思いが、暗い地下の隅から、人々の前に姿を現す。
しかしグロドイグルには誰にもいえないひそかな悲しい秘密があった。
アイスランドの首都、レイキャヴィクのクリスマス前の数日が舞台である。
一一一
家。
家とはなんだろう?
人生がどうしようもない事態になり、崩壊と不幸の淵に沈んでしまう前に、家族と過ごした子ども時代に戻りたいと思うものだろうか?友達であり親友でもあった母親と父親、そして姉に囲まれて過ごした生家、そこで子ども時代に戻りたいという���持ちだろうか?生きていくのが苦しくてこれ以上耐えられないとき、失いたくない思い出、慰めとなった思い出を求めて、人の目につかないように生家に忍び込んでいたに違いない。
もしかすると彼が忍び込んだのは、宿命と闘うためだったのかもしれない一一一
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作中の『アイスランドは小さな国なのにみんなと同じでなければ許されない』という台詞は社会生活を営む人間が直面する問題に国境はないと教えてくれる。これまでのシリーズ作品中最も地味な展開ながら、そのドラマ性が高く突出しているのは【家族の在り方】というテーマが万国共通だからだろうか。改めてこのシリーズは海外版社会派ミステリーなのだと実感する。前二作に比べ開けた作風で、クスッと笑える場面にすら出会すが、その分些か通俗的になった印象は否めず。但し、優美なラストシーンを含め、作品の完成度自体はシリーズNo.1だと思う。
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読み始めるまでに気合いがいる。
クリスマスの話なのに、誰も楽しそうではない。
それでも一度読み始めると、最後まで一気に読んでしまうのは、ストーリーの上手さと、このシリーズは家族再生がテーマであろうから、きっとはじまりより終わりの方が状況が良くなっているだろうと信じているから。
レイキャビクで2番目に大きいホテルの地下室で、サンタクロースに扮した元ドアマンの刺殺死体が発見される。
何十年もそのホテルで働いているのに、彼の私生活を知る者は誰もいない。
捜査をしていくうちに明らかになる被害者の過去。
心が痛くなる。
親は子どもを希望にしてはいけない。
自分の夢を子どもに託してはいけない。
子どもの少年時代を奪い取ってはいけない。
楽しい子ども時代を過ごすことの出来なかった少年は親を恨み、親は期待に応えられなかった息子を無視する。
何十年も。
どうしてそのままの子どもを受け入れることができないのだろう。
そして少年の姉もまた、誰からも顧みられないという辛さを抱えていた。
エーレンデュルは娘から、自分たち家族を捨てた理由を何度も問い詰められる。
エーレンデュルもまた、壊れた家庭で育ってきたのだ。
けれど最後、エーレンデュルとエヴァ=リンド(娘)は、一緒にクリスマスを過ごすことにする。
互いを思いながら、不器用におずおずと近づいていく彼らは、次作でまた少し親密になっていればいいと思う。
あと、あまり姿を現さない息子もそろそろ出てこないかなあ。