“GOD IS A BULLET”、一発の銃弾が神の裁き。暴力こそが人に対してひとしく平等、みたいな意味か。
2017/07/10 02:35
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今更ですが読みました。『音もなく少女は』のあとに。
これまた筋書きはいたってストレート。
カリフォルニアのはずれで警察官をしているボブだったが、ある日突然元妻とその再婚相手が何者かに惨殺されたことを知る。そして犯人たちによってボブの娘が拉致された。
そして事件が報道されると「これはかつてあたしがいたグループたちの犯行だ」と直感的に気付いたケイス(元ジャンキーでリハビリ施設に入所中)が情報提供を申し出る。しかし確たる証拠や法的根拠は何もない。辞表を叩きつけたボブはケイスとともに愛娘ギャビ奪還の旅に出る・・・という話。
ケイスが幼い頃に放り込まれた集団はいつしかカルト化し、サイラスという男が頂点に。このサイラスが悪の権化というか・・・すべてお見通しの良心のかけらもない者として描かれている(だからといって悪魔的な存在とまではいかない)。
基本、ジャンキーな方々ばかりが登場するので、その吐く言葉はとにかくきたない。疾走感あふれつつ比喩を多用する地の文とはその落差が激しすぎ。『音もなく少女は』よりもはるかにひどい暴力が延々と続くのだけれど、やはり文体のせいかそれほどひどくは感じない。もしくは、“その他大勢”みたいなキャラが多くて感情移入する必要がないからだろうか。
他に印象深いキャラといえば、ケイスと旧知の仲という、どこか中立地帯に存在する男、ときに刺青師・ときに医者・ときに調達屋となるフェリーマンくらいかな。
しかしいちばんはケイスであろう。ある意味まっとうに生きてきたボブに、まったく違う世界があるのだと教える彼女はまさにサヴァイヴァー。地獄のような苦難を満身創痍ながら乗り越え、やっとそこから抜け出そうとしていたのに、ギャビの存在を知りもう一度戻ることにした。彼女は『音もなく少女は』のフランとイヴを合わせて、更に激しく粗暴にしたような存在。多分、ボストン・テランが描くところの女性の原点。彼女のすさまじさに押されるように、ボブも見知らぬ世界を疾走し、娘のためにこれまでの常識をすべて捨てて戦う。
そう、まったく違う世界。同じ時代の同じ国とも思えぬほどの。
最終的に戦いはモハヴェ砂漠へともつれこむのだけれど・・・なんだか私はスティーヴン・キングの『ザ・スタンド』を思い出す。あれは世界が滅びたあと、生き残った人々の間で起こる善と悪との闘いだったけれど・・・まさに、終末後か、ぐらいの雰囲気で。もう<ハードボイルド>という言葉ではあらわしきれない、もっと激しくて荒廃しきった世界をそれでも生きるすさまじさ。
同じように“被害者”であるケイスとギャビはその立場故にわかりあえるが、ケイスは被害者のままでいることをよしとしない。そこから立ち上がり、転んでもいいから自分の力で歩くことをギャビに伝える。「あんたはあたし、あたしはあんた」。ギャビが襲われたとき、ひどい目にあったとき、それをされたのはギャビでもありケイスでもあると訴え、そして二人は理解しあえる。そこには実の父親であるボブには入る隙間もない。
ふと気に入った一節。
>山猫が獲物に忍び寄るようにことばに体をあずけている。
これは終盤のケイスの描写で・・・こんな比喩がいっぱい。それが独特のリズム感・スピード感を産み(地の文はすべて現在形)、ページが進むにつれ読む側もスピードアップしていった。
ただ、サイラスの一団がカルトである必要性を感じなかった・・・“カルト”の定義が違うのか? でも“神”に言及するためには必要だったのだろうか。キリスト教(もしくは一神教全般)の考え方が自分には根本的にないらしい、と気づかされる。
ハリウッド的なノワール?
2002/07/29 00:31
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投稿者:marikun - この投稿者のレビュー一覧を見る
2002年度版「このミステリがすごい!」の海外部門第1位の
作品です。ちょうど友人が読み終わったところだったので
強引に借りてみました(笑) CWAの新人賞受賞作でもあります。
「囲われ警官」を陰口を叩かれるボブは、カルト集団
「左手の小径」に、離婚した妻を惨殺され、娘を連れ去られた。
元「左手の小径」のメンバーで、ジャンキーだったケイスは
自らの贖罪のために、ボブに情報を提供する。そして二人は
反発しあいながらも、まだ生きているかも知れない娘、ギャビを
救い出すため、「左手の小径」の後を追い掛ける。
なんと言っても、強烈なのはヒロインのキャラクター。
元ジャンキーで、カルト集団の元メンバーで、全身入れ墨だらけ。
それなのに、ものすごく確固たる意志を持っていて、とんでもなく
魅力的です。こういうノワールな作品って、主人公は断然「男」だと
思うのですが、「女」を主人公に持ってきても、十二分に
成り立ちますね。ちょっと目からうろこが落ちました。
文章中、切れ切れに挿入される、過去の断片の回想シーンも印象的。
というか、とってもこの作品って映像的だと思います。
映画化したら面白いだろうなあ…。迫力のある銃撃シーンもあるしね。
ただし、ドラッグと暴力満載なので(苦笑)、映像化するのは
難しいだろうなあ…、というのも正直な感想。
特にラスト近くのシーンは、映画の方の「羊たちの沈黙」を
意識しているような気がしましたが、いかがでしょうか?
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訳が私の好きな田口俊樹さん。乾いているのに湿っている感じで非常に良いです。
ストーリーの疾走感もたまらない。
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これもヤバイ。相当面白い。どうしようもない。これはおれの作った言葉だけど、とにかく「ドラゴンヘッド的」に読まされる。ラストは「ドラゴンヘッド的」ではないのでご安心を。映画には再現できない究極の映画を見ているような感じ。『ブラックダリア』が思ったほど面白くなくて、アメリカのノワールはダメだわと思ったらとんでもない。これはすげえ。
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2001年、文壇に衝撃を与えたデビュー作。ストーリー的にはバイオレンス・ミステリー的な単純なものなのだが、そこに溢れ出るポエジーが素晴らしい。もはや詩人。読んで震えるべし。
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去年のこのミスとか、文春とかのベストで、1位だったやつ。カルト教団にさらわれた娘を助けるべく闘う父親と、そのカルトから抜け出した元ジャンキーの女性の話。
文体が独特で、最初戸惑う。でも、なんだが詩的。でもって、1段落が短いので読みやすい。
ストーリー自体は単純なのだけど、全体的に混沌し荒廃してて、それがたまらなく切ない。うん、そうだ。なにか廃墟を見てるような、そんな気分になる。
キャラクターもすごくいい。元ジャンキーの女性ケイスの命の輝きには、感動を覚えた。でもって、悪役も、本当にとことん悪いやつなんだけど、しぶい。うむ、やっぱり、悪役が魅力的じゃないと話は面白くないんだよね。
文句なしにいいとはいえないけど(好みの問題が大きいと思う)確かに、このミス、文春、いいもの選んでます。
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カルト教団にさらわれた娘の救出劇だが、伏線が多く、複雑。冒険小説ではあるが、純文学の要素もある。あまり好きではなかった。
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元ジャンキーと実直な警官‐ケイスとボブがぶつかり合いながらも惹かれていく過程が何ともスリリング。セックス、ドラッグ、バイオレンスのオンパレードなので気の弱い方は近寄らぬよう。
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期待せず読み始めたのですが、面白かったです。
元妻を殺され娘を攫われた警官・ボブと、元カルト集団員のジャンキー・ケイス。
二人はお互いに嫌悪感を抱いています。ぜんぜん違う世界に生きてきたのだから当然です。
しかし、ふたりで死と隣合わせのギリギリの綱渡りを続けるうちに信頼のようなものが芽生えていきます。
このふたりの距離感がなんとも素敵です。
ギャビについて、もうちょっと掘り下げてくれれば嬉しかったのですが……うーん。
彼女はこれからどうなるのか。強く生きていけるのか。
原文がかなりクセのある、抽象的で難解な文章だったようで、
とくに序盤は微妙な言い回しがいくつか見られ、日本語訳を作るのに四苦八苦している様子が伺えます。
ですが読み進めるうちに作品の世界にぐいぐい引きこまれ、気にならなくなりました。
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圧倒的なスピード感や、バイオレンス、思想が絡み合うノワール。主人公のボブもさることながら、ケイスとサイラスの存在感は凄い。
言葉が重く、感動的でありながら、爽快な読後感。
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題名:神は銃弾
原題:GOD IS A BULLET
著者:ボストン・テラン (Boston Teran)
訳者:田口 俊樹
出版:文春文庫 P573
■感想
そのうち、感想かこうと思ってたら半月もたってしまった…
正月に読んだ小説ですー
去年の「このミステリーがすごい」の1位になってたんで、とりあえず読んどきました.
ま、大抵の本屋で平積みでおいてあるんで見たことあると思いますが…
カルト集団(マンソンファミリーみたいな人たちね)元妻を殺され、娘を誘拐された刑事(デスクワーク担当)が、
カルト集団の元メンバーの女性(とうぜん元ジャンキーでもある)の手助けを借りて、娘を取り返すって話です。
ノワール小説なんで暗いです、見たくない現実みせられます、つかまった娘もひどいことされちゃったりします…
そのへんが、ちょっと…
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本当は感想を公開する場ではこう書くのを憚られるのだが、この作品はいい。なぜ「いい」と書くのを憚られるのかというと、この種の小説に接したことのない読者が安易に手を出すと非常に危険だと思える作品だからだ。日本だったら馳星周や花村萬月の作品を思い出すが、本書はそれらよりはるかに心ねじれた悪意と残虐さを秘めている。そんな作品を「いい」と言ったら人間性を疑われるかもしれないと思うほどだ。物語は、壮絶なノワール小説。娘が、「ドラッグと血と精液と愛液の世界」を作り出している狂気の集団に連れ去られた。刑事である父親は娘を取り戻すため、かつてその悪の集団に属していた女を相棒に、戦いの旅に出る。読み始めてすぐに疲労困憊してしまった。これ以上ないと思えるくらいの邪悪にあたってしまったからだ。しかし、もしそんな邪悪を秘めたストーリーに耐えられる読者ならば、相手を切り刻もうとするかのような辛辣な罵詈雑言の応酬の中に、一瞬であれ心を捉えられる言葉を見出すかもしれない。汚濁した言葉の中に、真理をつくものが紛れ込んでいるように感じられたからだ。それを証明するかのような一節があった。「ことばは信念の赴くところを定義するわけじゃない」あたかも日蝕のように、真昼間を闇にかえる邪悪。その暗黒世界から抜け出し、ようやく冷静に考えを巡らせることができたとき、この作品の凄みを思い知ることとなった。本書は、新人作家の衝撃的デビュー作であり、CWA新人賞受賞作。恐怖に隠された詩情の豊かさに、味わったことのない驚きを感じた。
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日本語訳が下手。物凄く読みにくい。悪戦苦闘中。読み終わった、が10日もかかった!「音もなく少女は」はこんなに読みにくくなかったのにこれだけか?誉めてる人もいるけどホンマに?筋はいいと思うんだが・・・。
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解説のあらすじ「残酷無比なカルト教の教主に拉致された娘を求めて、父親の警官が元教徒の麻薬中毒女を案内役にして追跡する話」とあるが、悪者はカルト教でもないし教主でもなく、ただの麻薬取引をやる暴力殺人集団のリーダーというだけである。
大人の欲と、暴力集団の自己満足の犠牲となった10代の女の子が悲劇である。捜索に協力した元麻薬中毒の女主人公の活躍がすごい。しかし、単純なストーリーの割に長すぎるかも。
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久々のバイオレンス小説。そうと知らなくて読み始めたから最初は本当に胸糞悪かったけど、アメリカの悪や矛盾を、成功や豊かさの下敷きになっている、必ずひずみに生まれてしまう犠牲者のそれぞれの姿を描き出している。単純なハードボイルド的な楽しみよりもそちらに目を奪われる作品。
ストーリーは至極単純。
とある中流階級家庭がカルト集団によって両親と飼い犬は殺害、少女は誘拐され、薬を打たれてレイプて連れまわされる。その少女の父親(あまりデキのよくない警官)が元ジャンキーでカルト集団に昔所属していたケイスという女性とともに追いかけるというストーリー。
展開がわかりきっているのに惹きつけられるのはハードボイルドならではかなと思う。