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最近、中国の作家のSFが面白い。
面白くてしょうがない。
たくさん読みたいと言う時に幸せな一本。
短編集なのでおもいきりひたりこめる。
おススメ。
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既視感なのか。
設定、小道具、テーマに手垢がついた、とまでは言わなくとも、あったような、ありそうなものが多かった。
SF小説のアンソロジーとなると、1つの世界観や設定を理解して、さあ用意ができたぞ!って頃に次の作品。
そうするとなんだか、個別の作品の理解というより雰囲気が全てになってしまうのは僕だけなのだろうか?
もしかするとSF初心者なので、楽しみ方が分かっていないのかもしれない......
そんな中でゾワゾワ!っとしたのが、
劉慈欣の「神様の介護係」
神様の目的と最後の会話が作品の中にとどまらず、読後の空想妄想を引き立てた。
「円」は、三体の一部に同じ設定が使われている。
しかし、「神様の介護係」も「三体」の設定の土台に生きている。
三体の第二部が発売された2020.6.18に読了。
三体第二部への期待がとても高まってしまった!
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「紙の動物園」を読んで中国SFに関心が高まっていたこと、以前知人にオススメされていたこともあって手に取った(三体もそのうち読もうと思いつつなかなか手が出ないのが恥ずかしい)。
アンソロジーのいいところは何かしら自分の好みにあった作品がひとつは見つかるということと、表題作目当てで読んだら思わぬ出会いがあるということが挙げられると思うが、これもまさにそのようなアンソロジーだった。
そのような観点からでは、「円」と「童童の夏」が良かった。前者は何といっても人間コンピュータを使って円周率を求めようとするというSF要素に古代中国の歴史ネタを混ぜるという壮大な設定に面食らったが、ハッタリもここまでくれば大いに楽しめるというものだ。後者は頑固な祖父を苦手に感じていた孫娘が、家にやってきた介護用ロボットを通じて祖父と距離を縮めていく様子が短いページながら情緒豊かに描かれていていた。家族という主題は「紙の動物園」に共通する所があり、そちらが好きな方に是非おすすめしたい。
もちろん主題作である「折りたたみ北京」以外にも、「1984年」への意識が随所に感じられる「沈黙都市」や、工場から脱走した遺伝子改変ネズミの駆除隊に所属する青年の直面する日々が淡々と進む「鼠年」など、読みごたえがある作品が多く収録されている。硬質で安易なハッピーエンドにならない話が多い印象を受けたが、このあたりは中国だからというよりも、現代社会の矛盾に直面し科学技術の好ましくない側面を目の当たりにした時代性が反映されているのではないかと思った。
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「三体」を読んでなんか、もういいやというけだるさを覚え遠ざかっていたが、又好奇心がむくむくと。
今回も期待に違わず、圧倒される「膨大な人口と国土を持つ」国の人物が描いた世界だった。執筆陣は30歳代がメインということもあって読んでいてパワーが迸る。如何せん、どうしても背後に習近平の顔がちらつくのは仕方ないか。ペンを握ると国家間に壁がないと言うが、私はそうじゃないと思う・・良きにつけ悪しきにつけ、生まれ育った文化と風土、流れるDNAは「豊穣の極み」
そして通奏底音の如く流れる文化としての詩歌の韻律の美しさ。
一番好きな作家は誰と言えないくらい、どの方も素晴らしいものを持っている。
作品として好きだったのは~
* 折りたたみ北京/郝景芳
激しい貧富の差に裏打ちされた3層の世界。24時間ごとに入れ替わる世界は回転・交替し折りたたまれて行く・・という奇抜な発想。だが底にあるのはやはり、貧しく豊かな中国。人がひしめき合い、蟻のように働き続けるその姿は哀愁を越えて、血の滲むような凄絶感すら感じ、最後までその感覚は薄れなかった。
*百鬼夜行街/夏笳
自らをポリッジSFの旗手と称する彼女。映像の世界にいたという経歴が語るように幻想的で優美な世界を描き出す趣向が素晴らしい。街でたった一人の生者であるぼく・・シャオチェンの桃色にそまった花びらのような「涙と雪」のラストが描く光景が美しい。
*神様の介護係/劉慈欣
この人の繰り出す「円」の発想、世界も素晴らしいが、「2000年前の世界からやって来た」神を介護するのは何とも広大無比。中国8000年の歴史をひょいと飛び越え、暇つぶしに高校の教科書をもって宇宙船に乗り込むとは。
セコセコこした文字の世界の背後に遥けき銀河系の空間が広がるようでぼぉ~っとした読後だった。
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短篇の名手ケン・リュウが精選する中国SFアンソロジー。ヒューゴー賞の表題作を含む、7作家13作品を収録。
ケン・リュウの英訳によって広く知られるようになった近年の中国SFがアツい。三体の劉慈欣は別格だが、それ以外にもクオリティの高い作品が多く、作家層の厚さをみせてくれた傑作短篇集が本書。ケン・リュウ自身の作品はないが、彼に劣らず魅力的なタイトルが目立ち、非常に読み応えのある一冊だった。
「童童の夏/夏笳」介護における近未来技術の予測、すぐにも実現しそうで興味深い。
「沈黙都市/馬伯庸」個人番号がウェブ上に延長され、匿名が許されない超管理ネット社会が描かれる。ネットの閲覧が管理国家によって制限されており、インターネットが最悪の方向に進んだらこうなるかもといわんばかりのディストピアが印象的。作中でも扱われる「1984年/ジョージ・オーウェル」の現代的なアプローチといえる。その中でも本作がスポットを当てているのは言葉の規制。言葉を制限することがすべてを制限することにつながるのがよくわかる空想実験だ。
「折りたたみ北京」ヒューゴー賞 中編小説部門を受賞した本作は文字通り、都市のダイナミックな変形によってヒエラルキーを描くというワクワクする作品。これぞSFを読む醍醐味といった感じ。
「神様の介護係/劉慈欣」はさすがのひとこと。コミカルな光景に見えて、深遠なテーマを含んだガチSF。
中国SFおそるべし。食わず嫌いは損をする一冊。ぜひご賞味あれ。
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中国については個人的にそれなりの思い入れがあって、定期的に現地を訪れていたものの、もう色々あって現地を10年以上訪れていないていたらく(?)です。
現地のエピソードで一番印象的だったのが、「中国では、もし警察の車にはねられたら、はねられた側の人が謝って逃げる」という話。国家権力の強さと、民衆の弱さを象徴していて、まぁ日本とは逆ですね(皮肉って言うつもりもあまりなく、正直この関連の議論を続けていくと、結局どっちもダメという結論になると思います)。
そして、このアンソロジーを読んで思いを馳せたのが、上記のくだり。良くも悪くも、国家権力の傷跡が大きいんだなぁと。日常の暮らしにまで染み付いた国家権力の強さは、創作者の思考の根っこに消せない影響を及ぼしているんだと思いました。(そういう意味では、『1984年』を読了しておいた良かったなぁという感も(笑)
あと、現代中国的な拝金主義も本著の通奏低音の役割を果たしていて、特に『コールガール』では、お金にモノを言わせるものの、結局それでは満ち足りないという矛盾も感じます。
ただ、そんな中でも本著の短編たちの面白さは飛び抜けているとも感じます。切り口の多様さ、舞台設定の奇抜さ、読み通すだけの価値はあるのではないかと思います。
(『三体』のオチが著者解説であっさり出てきてしまうのは、まだ結末を未読の自分としては辛いですが・・・)
中国は日進月歩だと思うので、今は私が一方的に持っている印象は今の実情とは違うのかもしれません。世界的にも刺激的な場所となり、世界中の金を惹き付け、これからどうなっていくのか・・・。
ただ、本著の創作上にあるような、「独裁的な政府」や、一定の経済的地位に就きながらもトップにはなれないとする卑屈なスタンス…。今後の楽しい世界?のためにも、これが永続的に続く中国のキャラクターにならないと良いなぁとも思いました。
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ケン・リュウ編集、中国SF文学の名手7名(しかし序文の表現を借りるなら、大半は“新星”世代に属する)の作品を収めた短編集。劉慈欣やっぱりすげー。「円」「神様の介護係」抜きん出て面白かったですが、他にも「童童の夏」「沈黙都市」「折りたたみ北京」が好きでした。「わたしが〈三体〉であらゆる可能性の中から最悪の宇宙を書いたのは、われわれが最良の地球を求めて努力できると願うからである」。
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2021年10月22日読了。中国出身SF作家ケン・リュウ訳の現代中国SF小説のアンソロジー。7人の作家から1~3作品が収録されている。まずいずれの作品からも濃厚に香る「現代中国」がたまらない!共産党が支配し反日教育を受けテクノロジーに囲まれた国、という自分のイメージがまあ間違っていないにしてもいかにも一面的で、このような抑圧された社会の中でSF作家の想像力というものはかくも豊かに広がるものなのか、と感心させられた。夏笳の短編はブラッドベリみたいな詩情に満ちているし、『三体』の劉慈欣の短編2篇はいずれも中国らしいSFホラ話で、日本人からはこんなスケールの発想は生まれないだろうし、生まれたとしてもしっくりこないだろうなあ…と感じた。他の作品も捨てがなくどれも展開・ラストに驚きがあり普通に面白いSFとして楽しめた。是非他の作品も読んでみたい。
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表題作の他、数篇を読んだ。「折りたたみ北京」は、わかりやすいディストピア小説だが、その発想とそれを読みやすい作品にする構想力には畏れ入る。