紙の本
芸術作品に翻弄される人間たちの物語
2022/01/04 22:23
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投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
震災を機に菜穂が京都で過ごすようになったことで、登場人物たちの人生が芸術作品を中心に様々に変容しといく様が描かれる。
著者の、芸術を巡って繰り広げられる人間模様を描いた物語にはいつも惹き込まれるが、今回もあれよあれよとあっという間に読んでしまった。特に後半の怒涛の展開に読後終始呆然としてしまった。
京都という独特の文化が根付く場所で描かれる、芸術に取り憑かれた人たちの怖いまでの執念、また芸術作品が及ぼす大きな力を最後まであきることなく堪能できた。
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投稿者:kotep - この投稿者のレビュー一覧を見る
凄い結末でしたね、まさか父親違いの姉妹だったとは。夫や義母も元は他人でしたから菜穂にとって血の繋がりがある樹だけが信じれる存在なんですね。本能で魅かれ合うというのも素敵な話ですね。
紙の本
マハさん
2023/02/26 17:45
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投稿者:あかさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作家の作品を幾つか読んでいるが、毎回、あー好みの作風だなと思わされる。
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このたびのマハさん、舞台は京都。圧倒的な熱量で静かにでも熱く燃える美術の物語。全身全霊で生き抜く主人公の菜穂に私も引っ張られ読了。最後の解説でのマハさんのコメントも印象的。物語を読んでいくうちに京都を訪れたくなっちゃいました♪
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美と人を描くとき
原田マハのペンは容赦なく鋭い。
美というものの何たるかを作者自身が熟知し
圧倒的な美を前にした人間が
どれほどちっぽけな存在であるかをも
残酷なほどにわかっているからだ。
人が美しいものに執着するのではない。
人が美しいものを見分け 選び取るのではない。
ほんものの美は
人を執着させずにはいられない圧倒的な輝きを
その内側から妖しく放つのだ。
誰もがその妖力に感応できるのではない。
その能力と特権を持つ者は 数少ない。
その異能を生まれながらにして持つ人間を
美そのものが 選ぶのだ。
選ばれた者は その美に傅き
その永遠の輝きを未来につなぐために
自身の命も 子孫の命も差し出す。
私は そう理解しているが…それでも
多くの時代を超えて 永遠に生き続けようとする
至高の美術品に 選ばれる側の人間でありたかった。
この作品においてもまた まるで何十年も前から
周到に準備されていたかのように 気がつけば
すべての人の命 時代 自然までもが
ひとつの圧倒的な美のために存在していたのである。
生まれて来る子もまた…。
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「普通」とはかけ離れたような存在の菜穂。異邦人は彼女だと思いつつ読んでいたはずなのに、終盤近くは周りのほうが異邦人じゃないかと思えてびっくりしてしまう。彼女の持つエネルギーに引き寄せられてしまったのかもしれない。
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絵画は、持ち主を変わりながら永遠を生きる。京都と3.11を舞台に、絵が紡ぐ人間模様。裏切られるから進められることもある。信念ある者の強さ。一気に解き明かされる謎。原田マハワールド。幸せだ。
#原田マハ #異邦人
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原田マハさんらしい、美術をめぐる小説。だけどいつもと違って、ミステリ要素も大きい。
中盤くらいまで、話がどう進むのかわからない。というか、美術に関する現代小説っぽいものなのかな、予想していたら、大間違い。終盤は方向がぐるっと変わって、立て続けに「おおおおぉぉ⁉︎」と謎が明らかに。これは予想外な展開をお約束します、って作品だと思う。
しかしハイソな人々の考えることは理解しがたいわ…。
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美術に対して異様なまでの見る目と執着を持った女性 菜穂と、代々画廊を営む一輝の夫婦。
美術に対する哲学や眼力の違いから、次第に距離が離れていきます。
菜穂の本質を見極める目や自分の感性を信じる点には憧れますが、何となく共感しにくい。
著者の美術への思いは感じますが、後半の展開には疑問が残りました。
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今回はちょっと重苦しくて、人間関係や登場人物の気持ちの方に引っ張られて、京都の景色や文化の描写がいまいち入ってこなかった。
結末も「そうか」という感想で、読後感も湿っている。自分のテンションとコロナの閉塞感のせいもあるかもしれないけど、夢中になって読み進めるストーリーではなかった。時折文字から目を背けたくなる瞬間があり、その意味では物語に引き込まれていたのかもしれない。
読み終わってから表紙カバーを見ると、本作をとてもよく表している絵画がそこにあり、原田マハさんの術にハマったような感覚だった。
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お得意の美術の話を題材に、人よりも早く隠れた才能を見出したい、欲しいものは是非とも我が物にしたいという美術品収集家の欲望が突っ走るお話は、京都の文化と四季を移ろう季節の行事で上品に塗してあるが、その実、人間関係はおどろおどろしく、よそ者を寄せ付けない京都という町や画壇のしがらみは得体が知れず、翻弄される俗物凡人はお気の毒。
終盤には思わぬ秘密が続々と出て来る愛憎劇は、サクサクと面白く読めたけど、読後感としてはややどんより。
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「楽園のカンヴァス」や「暗幕のゲルニカ」のように、原田マハさんの作品には心打たれる面白さがある。
本作は、絵画そのものに秘められた謎解きでなく、絵画しかも日本画を巡る人間関係を京都を舞台に上手く表現されて、ラストストーリーの急転換には、流石は原田さん!と驚愕。
一味違った原田マハさんの1冊でした!
お薦めの1冊!
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美は人を狂わす。本の帯に書いてある通り、この本は美に狂わされた菜穂の物語である。3・11のあと、妊婦である菜穂は京都にしばらく移り住むことになり、そこで京都の真の魅力に触れながら、ある日彼女の人生を狂わす一枚の絵に出会う。まだ画壇デビューもしていない無名の画家の絵を衝動買いし、その画家のパトロンになることも望む。そして彼女のその願望に巻き込まれる夫の一輝や菜穂の両親。京都の四季折々が美しく描かれる一方で、彼女とその家族との間で繰り広げられる諍いは醜く、ドロドロとしている。しかしその美醜のコントラストが余計にこの本を面白くさせている気がする。
正直言って、この本に登場するどのキャラクターも特別感情移入することができなかった。皆が皆、自分本位で動いていて、特に菜穂の母である克子は娘に対して発せられた小言がすべて彼女自身にブーメランしている、と思いながら読み進めていた。けれどこういう欠点が人間らしくて嫌いじゃない。そして魅せられた菜穂の執念と行動力に圧倒されながら、本を一気に読み終えた。何かに心を奪われるのはきっと素晴らしい体験である。けれどその渦に巻き込まれて、目の前のものしか見えなくなってしまうことは周りからすると恐ろしいんだろうな。
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なんか、重かった。。ずしっときた。怖い。
とにかく誰にも共感できないストーリーだった。
菜穂の美術への執着が怖かった。芯が強いって言ったらそうなんだけど......
登場人物がどんどん壊れていくのがおもしろいというか、テンポよかった。
あと京都人の外ヅラがまじで恐怖。
唯一わたし的に救いだったのは、途中までの京都の描写。またふらっと行きたくなった。
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夕方、コーヒーでも飲みながら本でも読もうと、近くの大型ショッピングセンター内のスタバへ行くが・・・
本を持ってくることを忘れていることに気づく!
なんとした事か、自分でも情けなく心が萎えた~~~
センター内にある書店へ直行⇒⇒1冊購入し直ぐにコーヒーを伴に読み始める。
本が私を呼んでいたのか、スタバにご迷惑をかけることになるぐらい・・・・一気読み・・・
また、やってくれましたね原田マハさん・・・・・
「菜穂さん。紹介させてもろて、よろしいか」
美濃山に声を掛けられて、我に返った。振り向くと、目の前に、見知らぬ女性が立っていた。
白いシャツにジーンズのいでたち、。ベージュのパンプスをはいている。色白の細面を縁どる、まっすぐな長い髪。泉のほとりにひっそりと咲く水仙のような、すらりとした立ち姿。
「こちら、白根樹さん・・・あの『青葉』を描きはったお方です」
菜穂は、一瞬、息をのんだ。すぐ隣で、一輝が同時に息をのんだのがわかった。
深い瞳が、みつめている。菜穂の心が揺れ動くのを見抜くかのようだった。
ぞっとするほど、深く、うつくしい。底なしの泉のような、冷たい瞳だった。