紙の本
20世紀前半のフランスの白人の黒人への差別を描いた問題小説です!
2020/05/28 09:37
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、20世紀の前半のフランスの作家であり、詩人でもあったボリス・ヴィアンの作品です。同書は、当時フランスで流行り始めていたアメリカのハードボイルド小説を翻訳するよう依頼されたのですが、「翻訳するぐらいなら俺が自分で書く方が早い」と短期間で内容をでっち上げてしまったという作品と言われています。同書の出版の際には黒人脱走兵を名乗ったとも言われており、差別者である白人への憎悪に燃える黒人青年の残虐な復讐を描いた物語となっています。同書は、当時の大衆からは好評を得たのですが、俗悪な暴力小説として糾弾されて裁判沙汰に発展した問題小説なのです。ぜひ、この問題小説を一度、読んでみられては如何でしょうか!
紙の本
鈴木創士訳!
2022/11/15 09:27
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投稿者:いほ - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトル「墓に唾をかけろ(伊東守男訳)」のスピード感は好きですが、「お前らの墓につばを吐いてやる」のほうが直訳・わかりやすいですね。伊東訳と比べて、すぐに英語にできます I'll spit on your tombs. とか(伊東訳はだれかに命じてるみたいですが、鈴木訳は「オレが(あるいはヴィアンが)」がはっきりしてます)。
全体に一見非美文調の直訳にみえて、実は米語小説の翻訳モノのフリをした仏語原文をそのまま日本語にする、というややこしいことに、訳者は成功していると思います。ヴィアンの戦略をそのまま日本語にしてる、という感じです。戦略とはつまり、唖然とするほど殺伐とした直截的な性的暴力的描写(白人男性の児童性虐待描写もある)が可能になる(「翻訳」がエクスキューズになる)ということです。多くの黒人ジャズミュージシャンを本当にリスペクトしていたヴィアンは、決して悪フザケではなく、きっと本当に怒りながら書いたんだと思います。「オマエラ、こんなクロ○ボのセックスアンドヴァイオレンスが読みたいんだろう、ばかやろう。いまからオマエラノハカニツバヲハイテヤル、サ」
ということで、名訳です。
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河出文庫から新訳刊行。
『日々の泡』が圧倒的に有名ではあるが、そのイメージで読むとけっこう吃驚する。けっこうアナーキーでバロウズを思わせる雰囲気が良かった。河出文庫が出したってことは、ヴィアンの新訳、これから出してくれるのかなぁ……?
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ショッキングなタイトルに惹かれて購入。
黒人である白人による、救いを求めた傑作だった。
終始、読書をしているはずなのに、まるで映画を観ているような感覚に襲われた。それくらい、くっきりと目の前に情景が浮かんだ。 かなりスピード感がある文章で、あっという間に読了。
賛否両論を巻き起こした文学、ここにあり。
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内容・構成は凡庸。作品の最初を読んだところで、最後まで見通せてしまうし、特に面白いシーンもない。ボリス・ヴィアンの傑作『うたかたの日々』に比べると見劣りする。ただボリス・ヴィアンの「白人が不快になるような本を書いてやろう」という強い思いが全体に強く出ていてその怨念は面白い。『うたかたの日々』もそうだったけど、ボリスヴィアンは、劇として小説を書くことが非常に上手い。いかに主人公が白人を憎んでいるか、ということを自らの家を燃やしてしまう、というシーンで象徴的に描いているところは、さすが、という感じ。
白い肌を持った黒人、というテーマはたしかデュボイスもなにか書いていたけど、面白いと思った。ネラ=ラーセンの『白い黒人』とか読んでみようかな。
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黒人の血が混じった主人公リーの白人への復讐劇。
アルコールとセックスとバイオレンスに彩られた物語の胸に迫る最後の一文。
ジャズのスタンダード“奇妙な果実”が頭をよぎる。
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絶対的な復讐心。狂えるほどの憎悪。酒と暴力とセックス。
圧倒的な文体に飲み込まれ、読み進める。私が感情をはさむ余地などない。
黒人の差別問題に恐怖をいだいた。ラスト2行にやっと複雑な気持ちが沸き起こる。ただただ、知ること学ぶことを私はやっていかなければ。ヴィアンの戦いの一書。
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仏人作家が米国の20世紀の人種差別問題をテーマにした小説。若い男が目的に向かって動きだしスピードを上げて一気にゴールに駆け込むような勢いがあり読みやすかった。印象的だったのは、肩のラインが黒人と認識されるポイントになり得るということ。いくら見た目白人でも分かる人には分かるらしい。今でも米国の人種差別問題は根深いなあとニュースを見て思う事がよくある。
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ジャズを愛し、黒人を敬愛していたヴィアンの人種差別に対する憎悪が、凄まじい力をこの本に託していると思いまます。
手足の震えが止まりません...。
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文学作品としてめちゃめちゃ面白いかと言われればそうは思わない。レトリックも正直粗雑な印象だしスリラーとしての緊迫感みたいなものも特別ない。タイトルに勝る挑戦的な内容をどうしても期待してしまったわけである。
ただ、フランス人がデビュー作としてアメリカ人を装い世に出したという本作にまつわるエピソードはまぎれもなく面白いし、終戦後まもない時代の退廃的な風潮が色濃く現れていて、人種差別というどうしようもない社会の暗部につかみかかるような作品であり、そういう意味でこの作品がもつ意味は大きいだろう。解説を読んで、ボリス・ヴィアンの生き様にも興味がそそられた。