とても分かりやすく面白いです
2018/07/12 20:24
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投稿者:国際未病ケア医学研究センター - この投稿者のレビュー一覧を見る
温泉や銭湯について医学的に分かりやすく面白く書かれていてとても読みやすいです。
驚異の健康術、間違った温泉選びしてませんか?の表題のように、意外と知らない驚く事ばかりです。また歴史雑学もあったりしていろいろな方が楽しめると思います。
ちょっとでも温泉に興味があり、健康やアンチエイジングに関心がある方には是非お薦めの本です。
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「温泉に帰りましょう」
温泉には、体温上昇、ミネラル吸収、ストレス解消の3つの効能がある。これらの効果で心身ともに溜め込んだ様々な"毒"を効果的に抜くことができる。
本書では、その理由や、それぞれの泉質の特徴等々、色んな面から書かれてる。
ただ、最終的には、せっかく日本人として身近にある温泉を生かし(サードプレイスとし)、自分に合った温泉を探しましょうという提案。
これが、冒頭に書いた「温泉に帰りましょう」の意味。
これからそんな温泉を探したいと思えた本。
少しでも温泉に興味のある方は是非。
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元々温泉に入るのは大好きで、リラックス効果はあると実感していましたが、この本で科学的な効果を知ることができました。
日本全国様々な温泉の中から自分に合った温泉を見つけたいと思いました。
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せっかく温泉に入るなら、その効果を知った上で入るとより充実したものになる。いろんな温泉の成分表を見てみたいと思った。
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お風呂最強説、今回は温泉。
鉱泉についてはなんとなくわかったけど、できれば地図と効能で一覧を作っていただければ・・・。
88冊目読了。
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770
162P
一石 英一郎(いちいし えいいちろう)
1965年、兵庫県生まれ。医学博士。国際医療福祉大学病院内科学教授。京都府立医科大学卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻修了。日本内科学会の指導医として医療現場の最前線を牽引する一方、伝統医療と西洋医療との知見の融合や統合医療研究、医工学研究、最新の遺伝学にも造詣が深い。温泉入浴指導員の資格も有するなど、温泉を活用した健康増進にも精通する。
医者が教える最強の温泉習慣 (扶桑社BOOKS)
by 一石 英一郎
本書をお読みの方のなかには、温泉好きもいらっしゃると思いますが、日本が世界一の温泉大国であることはご存知でしょうか? 日本の国土にある源泉の数はなんと約2万7000を数え、そのうち宿泊施設を有する温泉地になっているものは3000を超えます。2位のイタリアの温泉地は200か所程度ですから、世界的に見ても、日本が群を抜いていることがおわかりいただけるでしょう。
しかしながら、歴史を振り返ると、日本でも温泉を医療に取り入れ総合的に心身を治す「湯治」が文化として根付いていました。湯治の歴史は古く、約1300年前に、のちの天武天皇が流れ矢を背に受け、この傷を癒やすために京都の 八瀬 で村人から献じられた「かまぶろ」を利用したという文献もあります。ただし、そういった歴史があるにもかかわらず、古来より引き継がれてきた湯治の文化は戦後急速に 廃れてしまい、近年では一般にあまり 馴染みのないものになってしまいました。
このように日本は環境面、そして、文化面においても、温泉利用が活発になる素地を備えていながら、十分に活用されていないのが実情です。温泉の効能については次章から詳しく説明しますが、代表的なのが「体温上昇」「ミネラル吸収」「ストレス解消」 の3つです。 温泉に浸かると、これらの効能が相まって、心身に溜め込んだ、健康を阻害するさまざまな 毒 を効果的に抜くことができます。健康のための温泉活用がもっと広まれば、心身を健康に保ち、健康寿命を延ばすことさえ可能です。
毎日 40 ~ 42 ℃程度の風呂に入浴する習慣がある私たち日本人は、実はこうした健康メリットを、知らず知らずのうちに毎日受けています。この習慣は、世界的に見ても珍しいもので、イタリアやドイツなど、温泉のある国でも温浴の習慣はなく、たまに入浴するとしても 37 ℃程度の微温浴が普通です。
しかし、身体を温めるための方法はそれほど多くありません。自然界に存在するもので、人間の全身を簡単に温めることができるものは、温泉のほかにはなかなかないのではないでしょうか。 もちろん、ジョギングなどの運動でも身体は温まりますが、継続して運動をするのは大変ですよね。高齢者など体力が低下した方にとっては怪我などのリスクもあります。温泉は老若男女を問わず誰でも気軽に使えるものですから、これを活用しない手はありません。
温泉が特別な点は、その湯に含まれているさまざまな成分にあります。温泉には、硫化水素や二酸化炭素など、泉質によってさまざまな成分が含まれており、これらの成分が皮膚に付着することで膜のような状態になりますから、体内温度を高く保ってくれるのです。 この作用を「被膜効果」と言いますが、温泉を出てもしばらくポカポカ状態でいられるのは、主にこの被膜効果のおかげ。まるで電子レンジのように、芯からじっくり温めてくれるのです。さらに、炭酸ガスや硫化水素ガスなどが含まれる温泉であれば、皮膚を通して吸収されたガスが血管を拡張してくれますので、やはり身体を温める効果を発揮してくれます。
もう一点、温泉だからこそ得られる効能があります。それは、たとえ同じ湯温であっても、温泉は真水よりも熱さを感じにくいというもの。真水の場合、熱さを感じやすいため、十分に身体が温まる前に外に出たくなってしまう可能性がありますが、温泉ならしっかり温まるまで浸かっていられるのです。ただし、長風呂が過ぎると脳貧血で倒れたり、血圧の急変を起こしたりといった「温泉事故」を起こす可能性がありますので、入浴時間には気をつける必要があります。
血流がよくなると、心臓に集まっていた血液が手足の末端までグングン流れていきますから、その結果、血圧が下げられていくというわけです。 2012年に静岡県熱海市で3000人の被験者を対象に行った実験でも、自宅に温泉を引いている人に比べ、引いていない人は投薬に頼りがちであり、降圧薬を服用する傾向が高いことが実証されました。
水分補給に 温泉の水 を取り入れることも、ダイエットにつながる可能性があります。温泉の成分のなかには、硫化水素など、脂の 塊 である体内の胆汁と結合するものがあり、便となって排出されますので、コレステロール値を下げ、脂質異常症を防ぐことができるからです。ただし、温泉の成分によっては飲用に適さないものもありますし、入浴用の温泉水を飲むのは不衛生ですから、あらかじめきちんと飲用の温泉水であるかを確認するようにしてください。
なぜ、温泉で怪我が治るのか
たとえば、山梨県の 下部温泉 は、富士山の西側に位置していますが、ここは武田信玄が傷を癒すために訪れたといわれる場所であり、「信玄の隠し湯」とも呼ばれていました。 言い伝えでは、下部温泉で武田信玄が兵士の怪我を治させたとのこと。真偽は不明ながら、温泉の効能を知る私としてはうなずける逸話です。というのも、 下部温泉 は、低温で長時間浸かることが可能な泉質であり、じっくりと骨折や怪我を治すのに適していますから、あながち噓とも言い切れないのです。 そのほか、伊達政宗も兵士の傷を温泉で癒やしたと言われていますし、激しい戦乱の世を生きた戦国武将にとっても、温泉は重要な安息の地だったのでしょう。
戦国武将が怪我の治療に温泉を利用したのは、合理的な行動です。医学的見地から見ても、温泉に怪我の治癒効果があるのは間違いありません。 怪我の治りが早くなるのは、血流を改善することによって、栄養が体中に行き届き細胞の修復が早まる点にあると考えられます。 温泉によってはカルシウムイオンが多いものもあり、骨折の治療への効果を期待できます。
また、温泉には、「しみない」というメリットもあります。怪我をしたときに普通の風呂に入ると、飛び上がるほどの痛みを感じることもありますが、あれは真水が体液に比べて 薄い から。つまり、 濃い 体液と 薄い お湯との違いに身体がビックリしてしみるわけです。 しかし、普通の風呂と異なり温泉にはさまざまな成分が含まれており、真水より濃くなっていますから、より体液に近い濃さになるため真水ほどの痛みを感じさせないのです。
痔や目の病気にも温泉が効く
ちなみに、温泉は痔にも効果があります。実は、日本人の3人に1人は痔の症状があると言われるほど一般的なもので、私も内科医として診察をするなか、老若男女を問わず痔の患者さんをよく診ます。 特に女性の患者さんは恥ずかしいのでしょう、人に痔の悩みを相談できないまま、症状が悪化してから診察に見えることもあります。余談ですが、そのため、痔の薬として知られる「ボラギノール」のコマーシャルも、そうした事情を踏まえて男女いずれもが出演していると聞きました。
日本の温泉なかには、特に痔に効くとされている場所もあります。たとえば、山形県の潮見温泉は、別名 痔蒸し の温泉とも呼ばれており、ウォシュレットのように湯がビューっと飛び出して患部を集中的に温熱してくれる「ふかし湯」があることで知られています。
さらに、目の病気にも温泉が効果を発揮することがわかっています。たとえば、昔は目薬としても使用されていた「ホウ酸」を含む泉質もありますから、目の消毒や、ものもらいの治癒などに効果を発揮します。
日本には目に効果のある温泉はいくつもありますが、特に効果を期待できる「目の三大温泉」をここで挙げたいと思います。 新潟県の 貝 掛 温泉、神奈川県の 姥 子 温泉(姥子の湯)、そして福島県の 微温湯 温泉 です。 貝掛温泉 と 微温湯温泉 には、やはりホウ酸が含まれています。一方、姥子の湯は単純泉でありホウ酸が含まれているわけではないのですが、金太郎が目を治したとの伝承により、眼病に効く温泉として人気です。
少し前のことですが、温泉で驚くような体験をしたことがあります。仙台から神奈川県の湯河原温泉に向かっていたときに、急いでいたせいか駅のエスカレーターで転倒し、膝を強打してしまったのです。 激しい痛みがあり、立ち上がるのも辛い状態……。それでも這うようにして何とか 湯河原温泉 にたどり着き、無事に温泉に入浴することができたのですが、なんと、帰宅の 途 につく頃には怪我のことをすっかり忘れてしまっていたのです。自分の頭を少し疑いましたが、おそらく、温泉が私の痛みを忘れさせてくれたのだと今は考えています。
温泉によるリラックス効果は、「自律神経」へのアプローチといった側面からも証明されています。 熱い温泉に入ると、最初は交感神経が優位になり興奮したような状態になるのですが、徐々に落ち着いていき、逆に副交感神経が優位になるため、リラックス状態に変化していくのです。 脳波と同様、自律神経を自らの意思でコントロールすることは難しいですが、温泉に入るだけで望ましい状態を作り出すことができます。
その理由のひとつは、温泉に含まれる リラックス成分。たとえば、カルシウムイオンを多く含む温泉に入れば、イライラを直接的に鎮めてくれることがわかっています。昔からイライラしていると「カルシウムが足りないのでは?」と言われますが���これは医学的にも正しいことであり、私も医学部で教わったものです。
日本人に激増する「うつ状態」は亜鉛不足が原因?
亜鉛は、生体にとって必須のミネラルであり、人間は1日あたり 10 ~ 15 ㎎の亜鉛を吸収する必要があるとされています。亜鉛は海水ミネラルのひとつであり、タコや貝類など海の幸に豊富に含まれていますから、海に近い地域に住む人は比較的問題ないのですが、内陸地方に住んでいる方は亜鉛が不足しがち。私は長年、栃木県の内陸部に住んでいるため、今でも亜鉛不足でうつ状態の患者さんを目にすることは少なくありません。
温泉に浸かることで幸福度が高まることは、温泉療法専門医である早坂信哉先生により、6000人を対象に2012年 11 月から 12 月にかけて行われた大規模調査などによっても明らかであり、世界でもっとも温泉の多い日本は、ある意味では「幸福にもっとも近い国」とも言えるからです。
オキシトシンが活発に分泌される代表的な場面は、「子どもに愛情を注ぐ瞬間」。赤ちゃんを愛おしいと思い、守りたいと考えるのもオキシトシンの分泌が影響しています。したがって、子どもがいない場合や、いたとしても反抗期を迎えるなどして関係が悪化してしまうと、愛情を注ぐべき対象がなくなるためオキシトシンを十分に分泌できなくなってしまうようです。
なぜなら、オキシトシンは集団の仲間意識を深めることでも分泌されるからです。 見方によっては、大人のいじめは特定の人間を排除することによって、集団の結束を高める行為。インターネットなどで誰かを誹謗中傷することによって、オキシトシンを分泌しやすい状態を作り出しているのかもしれません。 こうした性質から、オキシトシンは「 絆 ホルモン」と呼ばれることもあります。
温泉で社員旅行は理にかなっている
そうした平和の象徴である温泉についても、やや 血なまぐさい エピソードを知りました。宮城県の 秋保温泉 は日本三御湯とされており、古代の天皇である 景行天皇が祀られている湯神社があったり、伊達政宗も湯治場としていたりと由緒正しい地なのですが、なぜか徳川家康が寄進したとされる「全国所領地図」が保存されています。
さらに、私が医師として水分補給のためにお勧めしたいものがあります。それは 温かい緑茶 を 入浴前 に飲むこと。 緑茶にはカテキンが多く含まれており、体脂肪の燃焼やアンチエイジング、動脈硬化予防などに効果があるとされていることはご存知かもしれません。ただ、緑茶を飲んだからといってカテキンをすべて体内に吸収できるわけではない点に注意が必要です。 ところが、緑茶を飲んだ後に入浴することで、吸収率を高めることができるのです。つまり、より効率的にカテキンの健康効果を得ることができるということです。 緑茶以外では、スポーツドリンクや、ビタミンと食物繊維が豊富なフルーツのジュースもいいですし、また、昔から定番の、 お風呂上がりの牛乳 もお勧めです。
ちなみに、ドイツやフランスなどでは、「自然療法医」や「温泉療法医」と呼ばれるプロがいて、温泉入浴に関する助言を授けてくれます。 日本にも、温泉のプロを認定する仕組みはあり、私も日本健康開発財団が認定する厚生労働省準拠の「温泉入浴指導員」と「温泉健康指導士」の認定を受けています。 温泉入浴指導員は、温泉療法を医師の指示に基づき適切に運用するための資格であり、温泉健康指導士は、温泉や入浴の効果など、医学的根拠に基づく知識を習得することで認められます。
温泉でお酒を楽しんだ経験がある方なら体感されていると思いますが、いつもよりも酔いがまわりやすかったのではないでしょうか? これは、入浴すると血管が広がり、血流がよくなり、その結果アルコールのめぐりが早くなったから。いつもは問題のない量のお酒であっても、入浴中に飲むと意識がぼんやりしたり、立ち上がるのが難しくなったりという酩酊状態になってしまう可能性が高まります。 ですから、露天風呂に入って月見酒や雪見酒を楽しんだり、温泉から出てすぐに宴会をはじめたりするのは考えもの。温泉宿によってはサービスの一環として入浴中にお酒を提供する場合もあるようですが、勢いにまかせて飲むのではなく、起こりうるリスクをちゃんと考えておきましょう。
極寒の場所の温泉ツアーはあの世への片道切符?
ルフロのような最新技術を取り入れた湯治には、医療界からも注目が集まっています。地域活性学会の副会長であり、温泉/健康部会長の舘逸志先生からも、このような言葉をいただきました。
「タイの古式マッサージ、インドのアーユルヴェーダやヨガ、中国の漢方・気功……。これら伝統療法は、国際的には健康面からも観光面からも大変重要視されています。日本においては、『湯治』がこれに当たるのですが、不幸なことに西洋医学の導入や近代化によって日陰の存在となっていました。しかし、近年は『ネオ湯治』なる新たなサービスが生まれており、私は未病対策の柱として期待しています」。
ちなみに舘先生お勧めの温泉は、秋田県の 後生 掛 温泉、新潟県の 栃尾 又 温泉、そして、大分県の 別府温泉 の3つだそうです。
迷ったときは、「単純泉」を選ぶ
温泉の泉質を調べるには、インターネットが役に立ちます。たとえば、「じゃらんnet」の検索窓に「単純泉」「硫黄泉」などと入力すれば有名温泉から秘湯まで探し出すことができます。一方、泉質の特徴や効能から温泉をピックアップしたいときには「るるぶトラベル」がお勧めです。たとえば、「筋肉痛」という項目をクリックすれば、筋肉痛に効能があるとされる温泉が一覧となって出てきます。 そのほかにもJTBの「泉質辞典」など泉質を調べられるサイトは複数ありますので、使いやすいものを選んでいただければと思います。
リウマチへの鎮痛効果や脳卒中の後遺症の軽減、病後の回復などさまざまな健康メリットを期待できますので、どんな温泉に入るべきか迷ったら単純泉を選ぶと間違いないでしょう。実際、大分県の 由布院温泉 や岐阜県の 下呂温泉 など古くから「天下の名湯」と呼ばれるような温泉の多くは単純泉なのです。
武田信玄が隠し湯として利用していたと先の章で説明した 下部温泉 はアルカリ性単純泉ですし、そのほか、大河ドラマ『毛利元就』でも毛利家ゆかりの御湯として有名になった山口県の 湯田温泉 も、やはりアルカリ性の単純泉。 湯田温泉 には江戸時代に毛利家歴代藩主専用の湯小屋があったとのことですから、歴史上のリーダーたちが用いていた由緒正しい温泉のようです。
単純泉特有のメリットは、適度なアルカリ性のものが多いため、酸性に偏っている身体を中和できる点。日本人は体質や環境により胃酸過多の傾向が強く、胃腸の調子が慢性的に悪い方が少なくありません。 そのため胃酸を抑える薬も爆発的に売れているようですが、薬には副作用がありますし、繰り返し服用することで効果が薄れる懸念もあります。 そんなとき、アルカリ性の単純泉を飲むと、胃腸の不調の原因である胃酸を中和でき、胃腸の状態改善につながるかもしれません。 また、 単純泉に含まれる食塩やマグネシウム、亜鉛などの成分は、保温作用があり、我々に不足しがちな微量ミネラルを補ってくれるので疲労回復や健康増進に役立つでしょう。
重曹などを豊富に含む炭酸水素塩泉は、弱アルカリ性のため皮膚にも優しく、美容にも効果的。国内で「美人の湯」として呼ばれる温泉は、炭酸水素塩泉である場合が多いのです。
中学校の実験でリトマス試験紙を扱った人はご存知かもしれませんが、アルカリ性の薬品に触れるとヌルヌルと、石鹸を塗ったような感じになります。そのため、アルカリ性である炭酸水素塩泉に浸かると、やはり皮膚をなめらかにしてくれるというわけです。 実際、「日本三大美肌の湯」のひとつに数えられる佐賀県の 嬉野 温泉 はナトリウムを多く含む重曹泉で、ぬめりのあるお湯が特徴的です。
ちなみに、特に胃腸に効果の高いと考えられる「三大胃腸病の湯」に挙げられるのは、宮城県の 峩 々 温泉、群馬県の 四万温泉、大分県の 湯 平温泉 です。これら3つの温泉は、いずれも塩化物泉ですので、便秘の解消や胃粘膜の修復など、胃腸に問題を抱えている方は試してみるといいでしょう。
火傷や怪我にも硫酸塩泉は効果的とされています。熊本県の 黒川温泉 や、群馬県の 伊香保温泉 の「黄金の湯」も硫酸塩泉で、いずれも「傷の湯」として知られていますので、伝統的に硫酸塩泉は怪我などの治療を早めてくれる温泉として重用されていたのでしょう。 また、同じ硫酸塩泉であっても、マグネシウムを含む「 正 苦味 泉」と、カルシウムを含む「石膏泉」、ナトリウムを含む「 芒硝 泉」の3種類に大別され、それぞれに独自の特徴がある点もお伝えしたいと思います。 「正苦味泉」は、硫酸マグネシウムを主成分とし、飲むと苦味があります。高血圧や動脈硬化の予防効果があるとされ、「脳卒中の湯」と呼ばれることもあります。
二酸化炭素泉には、水中に溶け込んでいる二酸化炭素による血管拡張効果があり、血圧を下げることができます。末梢の血管が広がるので、低温であっても保温効果が高くポカポカと感じられ、冷え性に悩む女性の方には特にいいでしょう。 血管拡張効果そのものは、単純泉など他の泉質でも得られるメリットですが、二酸化炭素泉の場合、「心臓への負担が小さい」という独自の特徴があります。
2014年に新たに泉質分類に取り入れられたのが「含ヨウ素泉」です。 含ヨウ素泉に含まれる「ヨウ素」とは、消毒液の「イソジン」や「赤チン」などに用いられている成分で、見た目や臭いもイソジンに��ており、やはり殺菌効果を期待できます。
これまでに紹介した代表的な泉質のほかにも、日本には非常に珍しい泉質をもつ温泉が存在しますので、ご紹介したいと思います。 まずひとつめが、北海道の 十勝川温泉 の「モール泉」です。 モール泉には、温泉の近くに生育する藻類に由来する植物成分も含まれており、世界中を見てもドイツのバーデンバーデン地方と 十勝川温泉 の2か所にしかないとされてきた珍しいもの。 このように希少なモール泉ですが、最近では他にも国内に存在することが明らかになってきました。それが秋田県の 乳頭温泉 と東京都大田区の 黒湯温泉 です。都心の真ん中でもモール泉を楽しめる時代が来ていることを喜ばしく思います。 ぜひ一度は体験し、ほかの温泉とは違う感覚を楽しんでみてください。
まず兵庫県の 有馬温泉 は、『枕草子』でも、「湯はななくりの湯、有馬の湯、 玉造 の湯」と語られているように、古くから名湯として名高いものです。また、「大日本帝国著名温泉一覧表」でも、全国の温泉池が相撲の番付に 倣って格付けされているのですが、 有馬温泉 は西の大関です(当時は大関が最高位)。
さて、次にご紹介するのが、鹿児島県の 指宿市にある天然の「砂蒸し風呂」。これは世界で唯一、ここにしかない貴重なものです。
1000万年前の湯を体感できるのは松之山温泉だけ
有馬や草津と同じく三大薬湯に数えられる新潟県の 松 之 山 温泉 は、知る人ぞ知る 神秘的な 温泉です。知名度こそ、 有馬温泉 や 草津温泉 には劣るかもしれませんが、その珍しさでは決してひけをとりません。
松之山温泉 は、「ジオプレッシャー型温泉」という珍しい温泉。ジオプレッシャー型温泉とは、海底に堆積した地層が長い年月を経てガスや石油、水に分離し、特殊な地形がもたらす異常な高圧によって地上に湧き出たものであり、 松之山温泉 の場合、深度約3キロにある、西日本と東日本を分かつ大きな断層から湧き出ています。
「温泉に帰りましょう」 これは、医師として長らく人の健康に関わってきた私の体験から、皆さまにお伝えしたい言葉です。 本書の執筆を通して、私は温泉が持つ可能性を再認識しました。 温泉に浸かるだけで身体は遺伝子レベルから元気になり、精神的なストレスをも取り除くことができる――。 このような場所を大自然が私たちに与えてくれていることに、畏敬の念や感謝を感じずにはいられません。
日本人にとっては、 ありふれた温泉 であったとしても、海外の方から見ると、世界で唯一の特別な場所。しかも、本書で記したように、近年の研究によって温泉の持つ著しい健康効果も明らかになっているわけですから、人気を集めるのも当然なのかもしれません。 こうしたなか私が気になっているのが、やはり私たち日本人による温泉利用が十分に盛り上がっていないという点。せっかく日帰りでも行ける距離に温泉があるにもかかわらず、むしろ海外旅行の方が人気を集めていることに、やや残念な思いを抱いています。