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最後の一文に、これほど感心した作品はありません。
それほど最後の一文にはやられました。
巧い、の一言。
お陰さまで、戦争の悲惨さ、理不尽さをことごとく感じさせる中盤~終盤の展開(しかし、饒舌な青年コーリャのおかげで意外と重苦しさはありません)を払拭してくれました。
物語は、第二次世界大戦下のソ連にて、主人公のレフ(著者の祖父の設定)が、ひょんなことから出会った青年コーリャと共に「卵」を探しに行くというもの。それも秘密警察の大佐の娘の結婚式で出されるケーキを作るために。
物語のプロットからして、理不尽さを感じさせますね。
戦争を扱う作品は、得てして戦争の理不尽さを訴えてきますが、本書もそれに違わず。ただし、前述したとおりコーリャのおかげで重苦しさはありません。その代わり、どこか滑稽さを覚えます。もしかすると、この滑稽さこそが本書が訴えたいことなのかもしれません。
そう考えると、確かに最後も滑稽ですね。
最高の滑稽さですが。
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特に飢餓についてリアリティを感じた。全体的に暗い雰囲気で展開されるが、ラストに救いを感じる。海外小説が苦手な人にも勧められる読みやすい本。
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よかった。
残酷な描写とレフとコーリャのユーモアなやり取りが絶妙のバランスで、どんどん物語に引き込まれた。
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書評か何かで読もうと思ったのか、そのあたりは全然おぼえていないけれど自分じゃまず手に取らないハヤカワ。戦時中にたまご1ダースを手に入れること。手に入れられなければ命はない。というめちゃくちゃな任務。
つらい描写もあったけれど面白くて読み応えもあって、読みおわって満足!一気に読めるような文章じゃないので、じっくりじっくり少しずつページを進める、でも先が気になる、という感じ。終わり方も良かったな。舞台は(現)ロシア。それもなんだか気にいった。わたしロシア好きだ。
同じ著者の「25時」は映画だけ観たことがあるけど、小説の方も読んでみたい。
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これは中々の秀作。
小説ってこういう読後の爽やかさがいいんだよなって感じる。
もっとも、前半はなんだか薄暗くじめじめとして寒い印象のまま物語が進んで行くので、案外退屈になる。
表題の通り卵探しの話なのだが、本当はじいさんの長い長ーい、おのろけ話なのかもね。
面白い、一読をおすすめする。
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タイトルと装丁に惹かれて購入。
レニングラード包囲戦の時のお話で、主人公のレフと脱走兵のコーリャが『卵』を探すお話。
神経質なレフと陽気なコーリャの2人の会話がとても面白く、戦時中の悲惨な状況が軽減されたような気がする。
とはいっても、戦争はやはり悲惨なもので街の人の飢餓の様子や、娼婦とか、爆弾をつけられ躾された犬とか、温室育ちの自分には辛い現実を味わされた。
主題は青春小説であり、主人公の恋愛小説のように感じられたのでそういうのが好きな人は是非!!
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タイトルまんまの、卵をさがすため第二次世界大戦中のロシアを奔走する物語。
冒険小説でもあり、ボーイミーツガールものでもあり、何よりも徹底して残酷な現実を書き切った戦争小説でもある。
最後の伏線にニヤッとすること間違いないが、それまでの青年〜少年たちの乗り越えるべき壁の多さにハラハラさせられてしまう。
久し振りに手に汗握った小説。
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レニングラード包囲戦さなかで生きる少年の青春冒険物語。
その日に食べるものさえないレニングラードでなんの頼りもないまま卵を探す、という絶望的な状況に追い込まれた割にレフとコーリャの話はひたすら女・女・女。
現実逃避の意味もあるのですがそのギャップがまだ未成年の2人らしくシリアスだけにならず読み進める手助けになりました。
人食い夫婦、餓死寸前の少年とニワトリ、図書館スティック、ソーニャ、ドイツ兵に囲われた少女たち、パルチザン…
一つ一つのエピソードが印象的でレフとコーリャと共に冒険している気分になります。
話が進むにつれて最初の目的からはずれつつもラスボス的人物がみえてくる展開は熱いです。
”ドイツ人を二人を殺している”という最初の一文が重要な意味を持ってくるところもちょっとしたアハ体験でした。
また主人公レフの一人称で語られる部分がいかにも思春期17歳って感じで面白いな~と思う文章が多かったです。
”まだ十七だった。愚かだった。だから彼を信じた”とか”この世で一番淋しい音はほかの男女が愛を交わす音だ”は思わず笑いました。ヒロインであるヴィカと出会ったあとのかっこつけようと精一杯な感じもかわいかったです。
すべてがハッピーエンドで終わってほっとしたあとにあの展開は悲しすぎますが、最後の場面で救われました。
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ミステリじゃないのに早川ミステリで出ちゃったのね。新潮クレストとか白水社エクスリブリスでも良かった感じ。上品な本が好きな人は眉をひそめるだろうけど、読み物として面白い。傑作青春小説。
映画化されないのが不思議なくらい。
あとがき読んだら、映画の脚本家なのね。納得。映像が目に浮かぶし、エピソードの繋ぎ方が上手いと思った。
私は祖父役は若いころのダスティン・ホフマンで。
しかし、ドイツ優勢だったころのロシアの実情って、ほんとにこうだったの?
図書館スティックとか、犬爆弾とか、人肉ソーセージとか驚くばかり。
主人公は書き手の祖父と言う設定だけど、あくまでフィクションらしいので、これらの描写のもとになった本を読んでみたいと思った。
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タイトルから、アンドレイ・クルコフ『ペンギンの憂鬱』のような、可愛い不条理系の話を勝手に想像してたのですが(舞台もロシアだし)、とても暗く重い、でも一つの青春小説とも言える、読み応えもあって読後感も良い一冊でした。
主人公2人の噛み合わなさと、そんなことをいってられない状況の深刻さ(第2次大戦中)が絶妙に絡み合っていて、仲が良いわけでも馴れあいでもなく、でも、こういう感じで男子って腐れ縁としての友情を成り立たせるんだろうな、という印象を持ちました。
巻末の解説にもありますが、これは確かに、ラストからもう一度最初に戻りたくなります。長閑さにはやや欠ける、ロシア版スタンド・バイ・ミー。
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時はWWⅡのドイツとソビエトの戦争の時代。
場所はバルト三国ちかくのサンクトペテルブルグ。
その時、サンクトペテルブルグはドイツ軍により包囲され、兵糧攻めにあっていた。
そんな困窮を極めるなか主人公の少年、レフは夜間に死んだドイツ兵から盗みをしたため憲兵隊に捕まってしまう。
命がいとも簡単に奪われる社会だったため、レフは死を覚悟するが、奇跡的にチャンスを与えられる。それは同じ拘置所にいた青年兵士、コーリャと共に 卵を探してくること。
かくして困窮極まる世界の中で到底見つかりっこない卵探しが始まる。
いとも容易く人が死ぬので、ちょっとエグいですが、ストーリーとアクションの描写はすばらしいものでした!
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ナチスによる包囲網が敷かれたロシアのレニングラードを舞台に、卵の調達を命令された二人の青年兵の姿を描いた小説。
戦争ものは本では横山秀夫さんの『出口のない海』や吉村昭さんの作品、他にも映画やドラマなどいろいろ触れてきましたが、その中でもこの作品はかなりの異色作です。
青年兵レフの相棒となるコーリャの女好きっぷりがまず面食らいました。二人のどこかずれたやり取りがコミカルで、戦争ものらしくない面白さがあります。
それなのにきちんと戦争の悲惨さを描いているあたりがなんとも不思議。作中では、飢餓にあえぐ人々、囮にされた犬、空襲、慰安婦の存在なども描かれます。それなのに二人に与えられた指令が”卵の調達”ですから、なんともシュールな印象です。
きっとこのシュールさが他の作品と違った描き方で戦争の愚かさを伝えているように思います。二人とも卵の調達の過程で、こうした悲惨な場面に出会っていくわけですが、吉村昭さんの記録文学のような完全な第三者目線でなく、かといって戦闘中の兵士のような一人称でもなく、戦争色の薄い指令で、戦争を描いたからこそ、こういう絶妙な距離感、空気感の作品ができたのだと思います。戦争小説の新しい形ともいえそうな作品です。
そして青春小説としての完成度も高い! 徐々に深まっていく二人の絆、思わぬ出会い、切なさと温かさの残るクライマックス……。文庫化当初から興味のあった作品でしたが、設定が突飛なだけにシリアスでもユーモアでもない中途半端な作品になっているのではないかと心配して、なかな手を出しませんでした。でもそんな心配をしていた昔の自分を叱りつけたいくらい、良い小説でした。
2011年版このミステリーがすごい!海外部門3位
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変わったタイトルの小説だな、人を食ったような内容なのかな、と思いながらページをめくると、まさかタイトル通りの話でした。
舞台は1942年のレニングラード。まさにナチスの猛攻を受け長い長い包囲戦の最中。
女子供の多くは疎開し、市民が自衛組織として駆り出され、物資は乏しく闇市が幅を利かせるようなそんな時期。
主人公の少年はたまたま見かけたドイツ兵の死骸から酒とナイフを盗んでいたところを憲兵につかまり、略奪罪で刑務所にぶち込まれる。
そのまま銃殺、かと思いきやなぜか解放され、秘密警察の大佐から一つの密命を受ける。
・・・来週の金曜日までに、卵を1ダース調達すること。
そしてともに刑務所にぶち込まれていた、陽気でちょっとズレた脱走兵とコンビを組んで、絶望的物資不足の中、戦場を横断して卵を探す旅に出るのである。
リアルな戦争描写と、奇妙なミッション。
むっつりと少しひねくれたユダヤ人少年と、戦時中にもかかわらず調子っぱずれに陽気なロシア人脱走兵との、ユーモラスで時にペーソスのきいた掛け合い。
このギャップがうまくかみ合い、明らかに奇妙でドラマティックすぎる筋書きの中にしっかり地に足ついたリアリティをもたせて、最後まで読み手を引き込んで離さない。
話としては冒険譚の類で、飛びぬけた目新しさもないし激しい感動もない。
それでも小説世界にどっぷり没入できる、良質なエンターテインメント。
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ちょうど便秘に悩んでてコーリャの言うことがいちいちもっともだと思った。グロい描写もコーリャの軽快さに救われて、ありがとうコーリャ。
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前半冗長に感じ、頁がなかなか進まず読むのに何日もかかったが、後半街を出たあたりからはいっきにラストまで読んでしまった。残酷なファンタジーではあるが、読後感は悪くなかった。ハッピーエンド好きとしては、冒頭に続いている2人の幸せな生活はお約束どおりで満足だが、見た目のかっこ良さとやっている事やその結果のかっこ悪さが魅力でもあり悲しいコーリャとの別れが少しだけ辛かった。一見何のこともないようなプロローグがラストになってがぜん輝いてくる。これが無かったら物語の面白さは半減してしまっただろう。重要な場面のモデルとしてインスピレーションをもらった 実在の祖父母(?)アマンダ(ヴィカ)とフランキー(レフ)に贈るということかな。