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娘の学資保険を解約するほど宗教にのめり込んだ母と半年前に家をでた父。やけくそモードで3日で高校を辞め、洗剤工場のパートで働く主人公水田マリ16歳。
いじめ、妬み、、、本工、パート、派遣と賃金格差によって労働者自身が、他の労働者を監視したり、足を引っ張り合ったりしている洗剤工場の描写がリアル。このあたりが「平成のプロレタリア作家」といわれるゆえんか。
ほんとうは労働者が会社の儲けを生み出しているのだから、もっと大きい顔をしていいはず。本来あるべき姿が転倒している。
かなりややこしい人間関係に工場描写が絡み合いながら、まるで高速で回転する工場のベルトコンベアーみたいにテンポよく物語は進行していき、ラストは、主人公の成長につながっていくというビルドゥングスロマン風にも読めた。読後感は悪くない。
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新聞書評で好評されていて初めて知った作家さん。水たまりをもじったようなタイトル『水田マリのわだかまり』は不思議だった。編集されていたもう一作の『笑う門には老い来たる』も、共通テーマであるいじめと介護が横たわる。『笑う~』の方が取っつきやすいが、水田マリのわだかまり』には迫力がある。
本文中で使われる若者言葉が理解できなくて何回かネットで検索。マリは祖母と祖父、母親との4人暮らし。いじめリーダーの松戸リカにより友人の美輪が飛び降り自殺した。マリは美輪を追い詰めたのは見て見ぬふりをしていた自分にも責任があると負い目を感じていた。進学した高校を3日目で辞め洗剤工場で働き始めた。いじめは学校だけでなく仕事場でも行われていた。ベルトコンベアーに支配されながら低賃金労働で働く現場は、かつて鎌田慧が書いたルポ『自動車絶望工場』を思わせるほど壮絶な描写が続く。
同じ工場に自殺したリカの母親も働き、美輪の姉が生保レディとしてやって来る。2人はリカの誕生パーティーに母親から招かれ、美輪の姉が復讐を計画しているのではと危惧して、マリは嫌々ながらも行く。リカの家には認知症で車椅子生活をしている祖母も居た。お祖母ちゃんの世話を頼まれた美輪の姉は、老婆の髪を洗いながらリカを赦す。「松戸リカにお祖母ちゃんが居なかったら殺すつもりだったの。母親も一緒に」と打ち明け、マリにも来年受験をし直して学生に戻るように勧める。マリは高校の再受験を決心するのだった。
リカとマリの会話からいじめグループの実態が浮かび上がり、今の子供たちの様子が垣間見えた気がした。
「あなたがいじめなければ美輪は生きていた気がするけど」「あっそう、あたしはあなたが友達のふりしてたら、美輪は死ななかった気がするけど」
リカの父親は宗教にのめり込む妻に愛想をつかして出奔、母親はリカの学資保険を解約しお布施に使い込むどうしようもない両親だ。でも、祖母は娘である母親を決して見捨てない。マリが「ヘンテコリンな娘と大変だね」と云うと、「人は誰でもヘンテコリンじゃないかしら。別に迷惑をかけなけりゃヘンテコリンでもいいのよ」と応える。おおっ、懐が深いといったん感激したのだけど、やたら娘のマリに迷惑かけてるじゃねえのと一方では考えた。
私は厳しい母親を持ったから砂糖菓子のような甘い母さんが欲しかった。羨ましい!
複雑な読後感。
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正直苦手だなぁと思いながら読み進めたけど,斉藤美奈子さんが言うとおり,すごくリアルで苦手とか言ってる場合じゃないんだろうなぁ。表題作じゃない方の話の方が正直好きだけど。
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「現代のプロレタリア小説」といううたい文句であったが、読んだ印象はちょっと違う。工場の労働場面が細かく描かれているが、それは作業の合理性でもって、人間関係の不合理さを強いコントラストのもとに照らし出すためだろう。そして登場人物の女子たちは、それぞれに弱みを抱えつつそれぞれにたくましい。基本、世界に期待せず、しかしその時その時をそれなりに生きていく。醒めた認識と、でも何かを求めていく、そんな生の実感を描いているのかなと思った。
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◆他者と接して生じる疑問は、暇潰しにやるスマホ検索からは生まれない。
◆わざわざ主張しないのは、相手が求めていないから。
宮崎誉子さんの本、他にも読んでみたい!
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現代的だ~「水田まりのわだかまり」「笑う門には老い来る」~父親が若い女に狂って家出して,怒った母が新興宗教にのめり込んで,祖父の経営する工場で働く友達の自殺になやむ高校中退女子。自分もいじめに悩んだ経験を持ちながら,娘へのいじめに対応できず,認知症初期の父の様子を見に行く保険外交員
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表紙とタイトルを見て「ラノベかよ?」(高校生の息子の一言)と思ったら大間違い。
社会派な小説だ。
他の方も書いてたけれど、私も新聞の書評を読んで即、図書館に予約。
最近読んだ「三千円の使い方」や「草薙の剣」にもどこか通じる、今の日本の現状を表題の「水田マリのわだかまり」と「笑う門には老いきたる」で細やかに描いている。
前者は、学校でも社会に出てもあるイジメ、おばちゃんには分からないコトバを吐きながらも生き方を見つめる10代の少女達の姿と底辺と言われる工場労働の描写が刺さる。後者の主人公はああ、近い将来の自分かな…と老いていく両親の現実にやるせなさと切なさを感じる姿に共感する。
もう一度読むとまた違う発見がありそうだ。
2019.1.4
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わだかまり。いじめて、自殺に追いやったことに対してのリカのわだかまり。主人公マリは傍観者でしかなかったのに、いじめたリカからの誕生日の誘い。美優の姉。それぞれのわだかまり。祖母の世話をするリカに、何かわだかまりを乗り越え、マリは高校はいりなおしを考える。 工場現場の描写がリアル。
「今なら制服でも、旬を過ぎたらコスプレだ」
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悪口を一切言わない人はつまらない。性格はいいかもしれないが、自分の言ったことに批判、共感をすることなく、ただ笑っている人はつまらない。学歴やスキルがないと、奴隷として働かされるのが現実だ。大人になってから困らないように、今から何かを身につけなければいけないと実感させられる話だった。
親に虐められてることは絶対にバレたくない、というのに共感した。虐められてるなんて恥ずかしいと思っていたからだ。両親は私の前では弱音も吐かず、人の悪口も一切言わなかった。もし、親が自分の前で弱さを見せてくれていたら私も頼れていたかもしれない。自分が親になった時、子供にはなんでも相談しようと思った。自分が先に弱さを見せなければ、子供も見せてくれないだろう。
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宮崎 誉子さん、初読みです。
水田マリちゃんがどんなわだかまりを持っているのか興味深々で読み始めました。
水田マリだけに、みずたまりくらいの大きさ?なんて軽い気持ちでいたら
内容は結構ハードな物でした。
高校を3日でやめ殺伐とした洗剤工場で働き始めた16歳のマリ、母親は宗教にのめりこみ、父親は家を出て愛人と北海道で暮らす。
その上、家族の認知症問題。
更に中学時代の同級生をイジメ自殺で亡くし、イジメ首謀者の母親はマリと同じ工場に勤務していて娘の誕生日に招待をする。
なんともネガティブ要素が満載で、陰鬱な空気感の中、物語が展開します。
ただ16歳のマリが意外にも天然であっけらかんとした言動を繰り返すせいか一筋の希望らしき未来も感じる事が出来る。
頻繁に登場する若者言葉に四苦八苦しながらも、リアルに感じた個性ある作品
あとがきが印象深い。