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この(3)も、面白可笑しさと、説得力のある深さのバランスが良かった
青木先生が、単に、ウルトラ怪獣が好きってだけでなく、人と違う悩みを抱え、その解決の仕方も人のスケールに収まらない怪獣の姿を通す事で、読み手の気持ちに良い変化を与えたい、って信念を持っているのが伝わってくる
実際、青木先生は寝ても覚めても、ウルトラ怪獣の事と漫画の事を考えているんだろう
そうでなきゃ、ここまで、中身のある作品にはならない
怪獣が出てくるからこそ、漫画家からの押し付けが鬱陶しい漫画にならず、何度も読んで楽しめる
全員ではないにしろ、怪獣酒場の楽しさに触れた事で、心と身体を蝕んでいたストレスからの攻撃が、ほんのちょっとだけ緩んだ漫画読みもいるんじゃないだろうか
ラスボス怪獣の心の闇が作った穴を埋めなければ、侵略者がやってきてしまう、そんな危機感も漂わせているトコが、これまた、読ませる理由になっている
その穴の埋め方、つまりは、ラスボス怪獣の悩みを解決する方法も、生真面目なものではなく、こんなんでいいの、と仰天しちゃうようなモノだが、却って、その奇想天外さが怪獣たちの物語らしい
ここまで、怪獣が重要って事を前面に出してきたが、人間・入間の存在も忘れている訳じゃない
怪獣すらドン引きするほど、ゲスな行為の実行に躊躇が無い入間がいるからこそ、怪獣酒場の営業は回り、なおかつ、ストーリーのテンポも弾む
主人公じゃないけれど、いなきゃ作品の質が下がってしまう、重要なキャラである事を、改めて言いたい
この巻では、五つ目の穴まで、どうにかこうにか、全員が力を合わせたことで消失させる事に成功している
だが、ここで明らかになってしまう、最後に埋めるべき、ルギエルの穴が、とんでもないデカさである、と
やはり、最強最悪、そして、最凶のラスボス怪獣だけあり、抱えている闇も大きく、深いのか
一体、これほどに広がった空虚を、どうやって埋めるのか、そこに、ルギエルの指導役である入間が、どう絡むのか、楽しみだ
どの回も読み応えがある
その中で、個人的な偏見のみで、一番を決めても構わないのであれば、私は44杯目「来た酒場」へ一票を入れたい
ある意味、お笑い界の怪獣コンビである、爆笑問題さんが怪獣酒場に来店するって、反則的な展開すぎやしないだろうか
しかも、良い感じに似せている。爆笑問題さんへのリスペクトがなきゃ、自分の画風で、彼らを描く事は出来ない
しみじみと、青木先生の確かな実力を感じられる内容だ
この台詞を引用に選んだのは、青木先生のスタンスを感じられたような気がしたので
きっと、青木先生も、これまで、何度も壁にぶつかってきたんだろう。ライバルの活躍に対する焦りや、自分の才能が限界を迎える事に対しての恐怖、または、周辺の環境の変化など、色々とあったはずだ
その度に、このままでいいか、と悩んだのではないか
そんな中で、青木先生は、このスタンスに到ったのかもしれない
この世には、自分の努力をしっかりと見てくれる人がいる
そんな人への感謝を示す為にも、壁にぶつかったく��いで、何もかも諦めている場合じゃない、と奮起したからこそ、こんなにも良い漫画が描けるようになったんじゃないか、青木先生は