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語り部「義経公」の正体
2021/09/20 10:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ワシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作に引き続き『義経記』巻の五~六。
古典だの歴史だの疎くてもオーケーオーケー、町田康にオールお任せでなんにも問題ない。むしろブクログレビューに「義経のメインエピソード全てすっとばしてるとこが」なんてとんちんかんな事が書かれていてズッこけたけれども、『義経記』は「義経様カッコいい!!」なので、平氏相手の武功だの合戦の細部はなんかこうもったい付けてバッサリ省略しているわけですよ。そんな経緯知らないです、と言ったら「判官殿のご功績知らないなら刀の試しに」とか返されそうなほどアッサリ削られている。中途半端に知っているのは結構タチが悪いと思う。太刀だけに。
本巻では、頼朝公との諍い、吉野への逃避行、静御前との別離を書く。下洛の船出で唐突に登場する常陸坊海尊(ひたちぼうかいそん)。なかなか伝承の多い僧である。『清悦物語』では義経近衆だったと称する「清悦」が人羹(にんかん、人肉?人魚肉?)食って不老不死になって義経の武功を語り継いだなんてやばい話もあるが、この清悦なる謎人物=常陸坊海尊ってマジですか?弁慶が奥州の武家をボロクソに言ったせいで泰衡が切れて離反した、梶原の嘘がまかり通って頼朝公が誤解した等『義経記』と共通するエピソードも多い。不老不死はあり得ず、清悦は架空の存在と割り切って問題ない。ただ、こういった挿話が下敷きになって蒙古へ渡っただの、蝦夷へ逃れた、なんて新しいお話が創作されていくのは本当に面白い。清悦が出没した箇所には「ミス不老不死」こと八百比丘尼(やおびくに・はっぴゃくびくに)も出張っていたり、洞爺湖近くのペンケユ(ヘンケユ、漢字では“弁景”表記)等それっぽい地名もあったり伝承無双の妄想の末広がりは続く。
本作は当の義経本人の回想で進むのだが、さも見てきたかのように語るのは『義経記』も大体同じだ。つまり義経は今も市井に紛れて生き永らえているか、前世の記憶を宿したまま生まれ変わっているんだよ!!「なッなんだってェー!」
史実とは異なる部分や、『義経記』から派生した伝説をもうまく取り込んで「今で言うと、」「今の人は、」と雑多な解説を矛盾なく差し込んでしまうのだからすごい。これは完全に発明と言って差し支えないと思うのだがいかがだろう。
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ちょっと変わった義経伝の続編。
古文では感じられない、やんちゃなでファンキーな生身の義経たち。本当のところ、これが彼らの本音なのかなあと爆笑しながら読んだ。
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雰囲気とリズムに乗って一気に読む。
いやいやいやいや、そうそうそうそう。
平成の終わりであれば、これでいいのかも。
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まだ終わらない!
やっと静と別れた!
というかこの話における義経の設定を忘れてしまったんだけどどうやって現代まで生きてるんだっけ?思念体?あの世で回想してる?
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人前で読んではいけない。笑ってまう。
そしてまだ終わらないので、早く「ギケイキ③」が読みたくなる。そんな本。
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面白かった。壇ノ浦も一ノ谷も義経のメインエピソード全てすっとばしてるとこが今までのよしつねものと全然違う
もうすでに頼朝から疎まれててルルルー、にっちもさっちもいかないようにてんてんてん。
まだまだ巻き返せるといいつつも船が難破状態なとこでこりゃーだめかなーってかんじに。
つーか喜三太なにもの、すごすぎるー。
これ、実際のところ義経記エピソードにあるんだろうか?
町田さんギケイキが面白すぎて、原典が気になって仕方ないわー。
忠義話の代表格の義経アンド弁慶コンビが、
殆どボケ、ツッコミ状態に。
あたまおかしいひとだらけで、でも実際のところ、
人間って、これなんじゃね?
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これ歴史に詳しい人が読んだらどうなんだろ!
歴史に詳しくない町田康ファンですが
あー義経かっこいー!
弁慶の不細工占いおもしろ。
こんな時代小説書かれたら歴史に興味わく。
こんな学校の先生いたらいいよね。
あー三巻も楽しみー
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第四巻まで予定されているという町田康『ギケイキ』の二巻目、みんなが知ってる鵯越や屋島、壇ノ浦の戦は描かない。起承転結の「承」の部であるならば、盛り上がらず停滞、或いは退屈、と感じるのも当然か。
ではあるが、一体この私たちに語るハルク判官じゃない九郎判官は誰なの?その正体が知りたくて最後まで追いかけて見ようと思う。
紙芝居のおじさんの後を追いかけたらひょっとしたら迷子になってしまうかもしれないが。
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町田康の文体にゲラゲラ笑わされる。
前半は喜三太くん、後半は片岡くんがいい味出してて、実にいい。
性格もフットワークも軽くて今風の若者なのに、ものすごく使える奴ら。
いいわあ。
だけど。
そもそも義経陣営には、千人力の弁慶以外にも百人力の武士がうようよいて、何よりも敗戦しらずの義経がいて、なんでずるずると都落ちをすることになったのか。
義経の強さは折り紙付きで、だからこそ頼朝は義経を遠ざけたわけで。
今日の人々は義経のことは好きだったんだよね。京で暴れまくった木曽義仲を退治してくれたから。
天皇・上皇の信頼もあったんだよね。うわべだけかもしれないけど。
で、本人の弁によると行政能力にもたけていた義経は、京都にはなくてはならない存在だったらしい。
なのに。
頼朝が怒りまくったからと言って義経が京を出て、逃げまどわなければならなかった理由が、読んでもよくわからなかった。
たった一回船で西国に行こうとして失敗したのが運の尽きのように、身の回りの人たちを少しずつ京に返さなくてはならなくなる。
すくい取った砂が両手の間から零れ落ちるように、運が零れ落ちていく義経。
何が悪かったんだろう?
頼朝の顔がでかいと思ってしまったことが悪かったのだろうか。
義経は嘘ばっかり頼朝に報告する梶原とか梶原とか、あと梶原が悪いと思っているようだけど。
最後は静御前との別れ。
え?
あと2巻あるけど、どういう配分になるんだろう。
本来の「義経記」の三倍の文章量だそうだけど、半分読みおわってしまった。
次巻が出るのが待ち遠しい。
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ご存知、源義経の一代記「義経記」を、異端の純文学作家・町田康さんが訳した「ギケイキ」の第2巻。
いや、面白かった。
前作は、源頼朝の挙兵を知った義経が奥州を出発し、頼朝に合流しようとするところで終わりました。
今回は、頼朝との対面から吉野山でお静御膳との別れまでを描きます。
といっても、町田さんのことですから、前作に続いて思いっきりデフォルメされています。
この時代を専門にする歴史家なら、「けしからん」と青筋を立てるくらい。
それも含めて実に痛快。
「ギケイキ」は、現代に転生した義経による一人称語りで進んでいきます。
この一人称語りがとにかく愉快なのですね。
本作では、原典と同様に源平合戦がバッサリと省略されていますが、それについての義経の見解がこれです。
「このことを私はここでは語らない。なぜなら語ると結果的に自慢になってしまうから。自分がいかに輝かしい勝利者であるか。自分がいかに楽しい人生を送っているか。そんなことを写真や短文で頻りにアッピールする奴。それは悲しい奴である。」
私を含めSNSユーザーへの痛烈な皮肉にもなっています。
土佐坊正尊の従兄弟、伊北五郎盛直の鎧の描写なんて、こんな感じなんですよ。
「三色に染めた革を、縄状の、フィッシャーマンセンター的なケーブル編みに編んだものでステッチしてあるという凝りに凝ったデザインの鎧」
ただ、面白いな、楽しいな、と油断していると、ドキリとさせられる文章があり、油断できません。
たとえば。
「そして間違った後、その原因を究明するためにいろんな分析をするのだけれども、自分が判断を誤ったかも知れない、という可能性だけは絶対に考えないので、永久に間違い続ける。」
終盤の静御膳との別れのシーンは、滑稽ですが哀切。
第3巻が楽しみです。
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時代考証を経た言葉ではなくイマ時の若者言葉で展開するのは、当時の武士たちってやっぱこんな感じっだったはずじゃん、イケイケじゃないと戦に勝てねぇって、でもイケイケオンリーだけじゃ時間とともに周りの士気下がるしなぁ、ケッコー知恵絞らにゃ戦に勝てねぇし、なんかメンドクセー人間関係もクリアしとかナ駄目じゃん、ってな文武両道未満の一筋縄でいかない豪傑が活躍する面白みがそこにある。秀でているようで秀でていない。ま、"人間" できてないのがいいんだよね、かくいう私もまだできてないもん。
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歴史系はそんなに読まないのだけれども、これはかなり現代っぽいので読みやすい。レジ打ちとかヘドバンとか、明らかに昔なかったものが頻出するのはさすがにアホっぽい感じもするが、個人的には好き。
あと町田さんの感情の書き方は独特だけども、やはり読ませる力があるなあと思う。特になんかいろいろモヤモヤしたり、鬱屈している人にはおすすめできる。
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<目次>
<略>
町田康解釈の『義経記』第2巻。武士はヤンキー。間違いない。当時の連中が今日日にしゃべってたらこうなんだろうね。2巻で終わりかと思いきや、いまだ連載中らしい。この巻は静御前が捕まったところでおわり。これから義経の北陸逃亡記だね(笑)
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なかなか素敵な本だな。町田さんのは苦手なやつもあって、躍動感が自分と合わなすぎて
車酔いみたいになる時ぐあるが、この本は最初から最後まで非常に楽しく読めた。もう既に義経の話を扱った本は溢れていて、適当に出せば
「頑張りましたね」的な評価は受けれると思うが、全くそういう本でなく。そもそも町田さん本人が人に比べられる人でなく。意外に、人物の感情の表現が繊細で、なんというのか、文章のちからづよさを感じた。
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なんか途中で投げ出すのもイヤなので、それこそ「気合い入れて」なんとか読み終えたけど…うーん、やっぱり私のシュミではなかったな。や、オモロイっちゃオモロイし、歴史に興味のない若人がこういうところから取っかかって行くのもアリだとは思うけど…余りにも殺す殺す言いすぎるのがねぇ…おばちゃんにはちょっとしんどいですわ(^_^;) いっそ、マンガで読みたいかも…?