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超能力者が現れたら?
2019/01/06 16:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:忍 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代社会に突然、超能力者が現れたらどうなるのか? SF的な視野から人の進化、神に対する思索をする一方、同じ町内に住む人々のあたたかさと残酷さを描く人情小説、超能力者を支配、制圧しようとするポリティカルフィクションの側面をあわせ持った傑作です。
個人的には、帰ってきたウルトラマンの「怪獣使いと少年」に出てくるパン屋さんのエピソードを思わせるシーンが泣けてきます。
SFの夢と下町の人情が織り上げる現代版キリストの寓話
2002/03/17 00:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
半村良がなくなった。『産霊山秘録』『石の血脈』さらに集大成としての『妖星伝』と、半村良が作り出した伝奇SFという妖しい世界に夢中になったときがあった。しかし、むしろ直木賞受賞作である『雨やどり』など、今を生きる庶民の世界、欲や名誉やメンツなどにこだわったりしない人情噺をかかせてその本来の奇才ぶりを発揮する人であったようだ。
この「岬一郎の抵抗」は人情噺とSFを融合させた珍しい作品である。
江東区松川町。町工場、材木商、酒屋、印刷屋、食堂、町医者、銭湯に囲まれたアパートに岬一郎はひっそりとつつましく暮らしている。下町の人たちの反権力性、義理と人情を大切にする生活様式が丁寧に描かれる。彼は超能力者であるが冒頭ではどこまでその力がつよいのか、自分でコントロール可能なのかさえわからないまま生活している。やがて………。
松川町で大気汚染の公害疑惑がもちあがり住民たちは都庁へ原因究明の調査陳情に行くのだが、役人はかなりの筋からの圧力を受けていてケンモホロロの応対振り、住民は怒りの声を爆発させるのだが、突然心臓麻痺で役人が死亡する。超能力の初体験である。そして車椅子から立ち上がれない少女に手をかざしただけで歩けるようになる。大地震で崩壊したビルの瓦礫を持ち上げ、埋まっていた大勢の人を救出し、怪我、病気を治療する。嘘をついている泥棒が彼の前では真実を語らざるを得なくなる。意識はすべて読み取られる。また彼は他人の意識に入り込みそれを操作することもできる。
マスコミは彼を国会の傍聴席に立たせようとする。スズキムネオのような証人喚問の席でである。あるいは首相の施政方針演説においてである。また、裁判に傍聴させることも考える。
彼の物理的力は重火器をも寄せ付けないのである。彼の意に反することを命令しようとして近づくものはすべて改心させられるのである。彼はその強大な超能力を「不公正の是正」と「正義の実現」のために使用する。これは神にほかならない。周りの住民はもとより大衆はこの出現した「神」に国の統治を委ねようとする。政府はどう対処するか。宗教団体はどう動くか。そしてアメリカ、ソ連は? 「推理」小説ではないから言っちゃいますが、アメリカは日本の権力機構が彼に掌握されるのを恐れる。たとえば非核三原則の嘘が白日のもとになるからです。そして日本政府に岬一郎抹殺命令が下る。さて、政府はどうでるか。ゴルゴ13を雇うか。世界中の目が松川町に集まっているときにそんな下手なことはできません。ここからがこの物語のツボに入っていくのです。政府も刑法改正を含め、手の込んだやり方で攻める。住民は抵抗するが………。
最近話題になった冒険活劇、宮部みゆき「クロスファイアー」とはまるで違う超能力ものであります。強大な超能力者は彼ひとりで相手になる同類の敵役はいません。もし神が日本の下町に世に顕現したらいかなる状況が生まれるかとシュミレーションすると、法律論、犯罪学、政治学、、社会学から文化論、宗教論にとどまらず、進化論から遺伝子工学、はては宇宙生命論まで、その虚構の大風呂敷を、よくまぁここまで大真面目にひろげて見せたかと、魂消るやら、感心するやら。理屈っぽいところを面白くないと見るか、そこが良いと見るかで評価が分かれるのでしょうが、私は傑作な現代寓話だと思います。
キリストはきっと超能力者だったのだ。磔刑に処せられた理由がわかりましたね。こんな奴が登場したらどんなに善人であっても怖いよ。
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