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好きな人はいるかもしれない。自分としては歴史よりも、ヤクザとの関わりをもっと知りたく、今の話を読みたかった
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不可視化された日本の漁業課題の特殊性を反社会の文脈から読み解くノンフィクション。著者の専門性を端緒に実地調査と文献から、ヤクザ社会と漁業の密接なシノギの実態を描く。なぜ日本の漁業に絡まり解けない面妖な構図が生まれたのか、遡れば戦前から始まる海のシマを巡る物語を見るにつけ、読者自身も反社会勢力の末端構成員であることを突きつけられる。巨大な権利と利権とが後戻りできないまでに縺れ合い、四方を海に囲まれた国の一端を象徴する。
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これは面白かった。
密漁を良いとも悪いともいわず、両面を淡々と捉える。
全てを書くことができない事情があるのだろうか、若干表現がわかりにくい部分もあるようにも思えるが。
丁寧に取材されているのか、制度の仕組みや背景事情なども含め、できるだけ正確に書こうとしている感はあった。
今までピンと来ていなかった北方領土問題や根室とロシアの関係なども歴史も丁寧に書かれていたため、一応の腹落ちはできた。
制度が新たに作られれば、その抜け穴を使って闇ビジネスは確実に生まれる。
完璧な制度を作ることは難しいから、その抜け穴がどのくらい大きいのか、裏から考える視点も必要だ。
闇ビジネスがないと、毛ガニもウナギも高騰して消費者の手に届かなくなる。
それをどう考えるか…
「シラスウナギに名前はつかない。盗品と知らなかったと言えばいい」とか、罰金払っても稼ぎの方が全然勝る、とか。
カニは、統計上の漁獲量と同量が密漁で、これがなくなったら価格が高騰してしまうとか。
このルポのはじめの方で、密漁が多い理由としては、県域ごとに規則が違うこと、漁業法の罰則が甘いことなども理由として挙げられていたが、後者については、今回の法改正で、罰則を最高まで引き上げることができるようになるとか、盗品と「知った」上で受け取った人も罰せられるようになった。
これが、密漁にどんな影響があるのか…
それにしても、「ヤクザ」のひとたちのベンチャー企業顔負けの転身の早さ。
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今、我々の食べている魚介類の半分近くは密漁品で、高級食材になればなるほどその可能性は高まる、と聞くと正月に食べたアレやコレが思い浮かんできます。そして、この密漁ビジネスの多くはヤクザのシノギになっており、任侠道と漁業の共通性が最前線への潜入ルポによって浮かび上がってきます。
個人的にも、銚子や根室など訪問したことのある漁業の街が登場して、現在の疲弊ぶりを垣間見る機会があったのですが、ブラックマーケットに依存する割合の大きな地域経済は立て直すのは容易ではないと感じます。そして、築地市場という清濁併せ飲んだ場所も豊洲に移転して浄化されようとしています。
漁業とヤクザの境界が曖昧だった時代から、漁業権や地方政治、北方領土問題といった政官との結び付き、技術や流通革新を経てしぶとく生き残ってきた密漁ビジネス。これまでの短期収益を追い求める余りに肝心の漁業資源自体が枯渇しようとしている現在は、過渡期に来ているということでしょう。
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ニホンウナギのワシントン条約に基づく国際取引の規制が今年は見送られたそうだが、シラスウナギの取引は『闇』が深いな! 鰻、食べたいんだけど~
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築地市場など漁業市場とヤクザが如何に癒着しているかよくわかってますます魚を食べたくなくなった。第1章三陸アワビ密漁と第2章の築地市場潜入は面白かった。が、後の北海道のナマコ密漁と銚子漁港のヤクザの歴史、北海道のカニをめぐるロシアとの歴史、ウナギをめぐる九州、台湾、香港の話は古い内容や、現地突撃が中途半端で微妙だったので読み飛ばした。
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アワビ、ナマコ、カニなどについて知らないことがたくさん書いてあった。著者がかなり体当たりで取材していることもわかりスリルがあった。世の中まだまだ知らないことが多いな~。
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農家さん漁師さん酪農家さんありがとう的ピースフルマインドを是としながら食事を楽しむ私のような人間に強烈なカウンターパンチを浴びせる読者直結型ルポルタージュ。
「中国産て書いてあるこのサカナ、どこで獲れたのかな」
目次はやや扇情的に過ぎ、著者鈴木智彦さんが長く暴力団ルポに携わってきたことから単純に「暴力団=悪」という構図には書かない(美化はせず、脱法行為をする〝社会の必要悪〟といった捉え方)点にはやや留意が必要だが、海洋国日本の全域に蔓延るといっても過言ではない社会問題にスポットを当てた快作である。
とはいえ、サカナを食べるとヤクザが儲かる、という話に短略化してはならない。サカナを獲って売って暮らす人びと、港町で生きる人びと、サカナを食する私たち全員が本書に登場する不公正なシステムから何がしかの恩恵を享け、甘んじている。法整備や流通の改善、消費者も含めた意識改革は必要となろうが、金の成る木や法の抜け穴には〝破れ窓理論〟のようにズル賢い者たちが湧いてくる。
Fresh Speed社が始める「釣った魚をオークション売買」するFish Saleなど、いかにも密漁や越境売買が容易に想像できるサービスに思えるではないか。
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我々日本人が大好きな鮑・鰻・蟹の大半が実は密漁⁈そんな馬鹿げた話を聞いたことないぞ…と、思う人は多い筈。この「密漁」。今やしっかりとしたビジネスへと成長しており、本書は暴力団の巨大な資金源となっている生々しい事実を暴いていく。かねてより日本の食品業界最大のタブーと言えば「牛肉」であった。ハンナンの牛肉偽装事件は記憶に新しいが、それに勝るとも劣らない、サカナとヤクザの不都合な事実を浮き彫りにする衝撃のルポルタージュ。
2013年、朝の連続ドラマ「あまちゃん」が話題を呼んでいた頃、著者は東北に密漁をしている「黒いあまちゃん」がいると聞き、バイクを飛ばす。以来5年を費やし、築地市場への潜入労働を皮切りに、魚介類の採捕現場の北海道・東北・九州、密流通が行われている台湾・香港まで、単身突撃取材を敢行。
驚愕したのは、普段口にしている海産物の内、鮑は密漁で45%、ナマコは北海道の漁獲量の50%、鰻にいたっては66%が密漁・密流通。ちなみに、鰻は絶滅危惧種に指定されているので、稚魚のシラスウナギに遡って密漁・密流通されている。そう、我々の食卓は、“裏社会の尽力”により支えられていることになり、本の惹句にある「食べてるあなたも共犯者」と揶揄されても致し方ない現実。
実際に海に潜り採捕しているのは裏社会から派遣されたダイバーであるが、密猟に手を貸す漁師、それを買う人は漁業協同組合関係者。買い手がいくらでも存在するから売り手が暗躍する。密猟は無くなるどころか蔓延り、表と裏が入り乱れ、密猟品を正規品よろしく売り捌かれるロンダリングシステムが構築されているのである。
例えば、密漁された鮑の市場への流れは、闇ルートで料理屋・寿司屋に卸されるが、所詮小口。大きな商いにするために表の卸業者の販路に乗せ、市場にも流されていく。これはつい最近まで築地でも行われていたと言う。
この築地市場に、著者は4ヶ月の潜入取材を行い、実感したのは「魚河岸がはみ出し者の受け皿」になっており、“流れ者”でもやる気さえあれば受け入れる、極めて昭和的世界であるということ。確かに市場とヤクザは古くより切っても切れない関係にあり、漁業関連業者の生活圏にはヤクザがひしめき、千葉の銚子では町そのものが暴力団に牛耳られ、毎晩賭場が開帳されていた事例も紹介されている。
そして著者は、密漁より悪質な密流通の主役「鰻」を追って香港の国際密輸シンジケートへと向かう…。
絶滅危惧種の鰻を、ある意味では絶滅危惧種であるヤクザが追いかける。暴対法による徹底排除が進み、ヤクザの困窮ぶりは巷間伝わるだけに、このふたつの共生の構図に思わず笑ってしまった。
アングラノンフィクションの面白さは、魑魅魍魎かつ無秩序の社会の出来事と眺めていることが、実は表社会と密接に繋がっている構造を知らされた時である。
本書は、我々の知らない「すぐそばにある裏社会」の実態を遺漏なく伝えてくれる。飽食の時代と言われて久しいが、尽きない食への欲求が、例えば土用の丑には鰻を食べる食文化が、ヤクザのシノギに大いに寄与していると思うと消化不良���起こしそうであるが、ヤクザと組織犯罪を専門に扱うフリーライターならではの圧倒する取材力と活写力には、さながらはち切れるんばかりの満腹感でもある。
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香港でもよく乾物屋で見かける三陸のアワビだが、実は密漁がはびこっているという幕開けから「何やってんだ漁師の皆さん!ヤクザ屋さんたちズルすぎる!」と怒りまくっていたが、読み進めていくうちにその闇に戦慄…する以前に、事実を知るほど何もかもがもう情けなくて本当にガッカリした。ウナギとかクロマグロとかは気軽に食べられなくていい。鯨も好きだけど、わざわざ商業捕鯨を再開させなくていい。つまりところ、食に関してもあまりにもガラパゴスなものだから、舐められてるんだ。
全くねー、どうなるんだよ後退国ニッポンよ。
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暴力団と漁業の関係について、暴力団専門とも言える記者が書き起こしたルポルタージュ。
漁業と密漁、そしてヤクザの密接なかかわりについてわかりやすく、迫力をもって書き表している。現代日本人が日常、口に運ぶもので、これほどブラックなものがあるだろうか?
との指摘もある。何気なく口にしているカニ、サケなど、出所は確かなのかどうか。
また、著者本人が築地市場で働いてみた体験記などもある。
市場での労働を経て、正規就労のハードルがあまりにも高くなっているのでは?という指摘は、本書の本筋からは外れるが考えさせられるところだった。
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鈴木智彦『サカナとヤクザ』読了。
本書に書かれている通りならば私達が水産物を口にする度闇社会に資金が流入している事になる。
表立っては暴対法で締め付けながら一皮剥けば…
戦後直後、食管法を厳守し闇米を食べずに餓死した山口良忠判事の様に海産物を一切口にしない、なんてえのは不可能。
不可能故にこの闇は広大にして深淵…
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「水産業界が変われないというなら、消費者に現状を知ってもらい、社会問題化する必要があります」と、後書きに東京海洋大学勝川氏の弁。まさにそのためのインパクト多大なる一冊。
闇金ウシジマくんで描かれてないのが不思議なくらいの搾取と暴力の闇。漁業はかつては原始的略奪産業だった、とあるが、日本では今でも原始的なままの部分が大きいのだろう。世界最大級のギャング組織であるヤクザと、事実上の下部組織である一部の卸・仲買がこれだけ深く根を張っていては、乱獲による漁獲高減少は「共有地の悲劇」のようなモラル的問題ではなく、取りつくして次のシノギという餌に目が行くまで避けられないだろうという諦念。買うやつがいるから獲るんだ(盗るんだ)、というもの言いには、そんじゃもう買わねえよ、と応え、ウナギだけではなく本書で上げられるた品目については当面消費を控えようという思いになる。
根っこを辿ると漁業権(日本にしかない)、大宝律令にまで遡り、GHQでも撤廃できなかったいうので根が深いなんてもんじゃない。
そして今や密漁の元締めは大手水産会社。昔に比べて搾取される人、犠牲になる人は確実に減っているのかもしれない。ただ、回復困難な水産資源が枯渇するだけだ。知らぬまま、あるいはうすうす感づきながらもそれを良しとするなら仕方ない。
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水産資源の保護とか規制なんて絶対できないな、こりゃ。まあ何でも安い値段で欲しがる消費者も同罪だけど。
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サカナ、サカナ、サカナ、魚を食べると、ヤクザ、ヤクザ、ヤクザ、ヤクザが儲かる♪
密猟、築地、北方領土からシラスウナギの密輸まで、福島原発に潜入取材をした鈴木氏の次のターゲットは密猟ビジネスだ。
日本でどれだけのアワビが密猟されているか、ある推定では日本で取引される45%、市場規模は40億円にあがる。ウニ、カニ、ナマコ、シラスウナギなどを合わせれば100億を超える。利益の割には捕まっても微罪であり、検挙するには丘に上がったところで機材と獲物が揃った現場を押さえるしかない。北海道や東北の港には密猟をシノギとした組が各地に存在している。
密猟品はどのように市場に流れるのか、ナマコは内臓を抜いてから塩蔵で中国に輸出される。ウニも加工が必要だ。アワビは仲介者にロンダリングされ市場に流される。流通過程では密猟品だと疑いはしても善意の第三者にとって正規品より安く買える密猟品は無視できない。密猟者にはヤクザの雇われ部隊もいれば不良漁師もいる。同様に加工屋にも仲買いにもそして築地の仲卸にも密猟品を扱うものはいる。鈴木氏は築地にバイトとして潜入し築地のアワビを一番売るカリスマから聞き出した。「ああ、(密猟アワビは)売られているよ」
「密猟が悪いっていっても、そうしないと需要に追いつかない。やりたくてやってるわけじゃない。みんな生活かかってんだ。」「業者の顔を札束で叩くような真似をする大企業も、消費者だって共犯だべ」業者の言い訳はどんな場合も似たようなものだ。
発電所のまわりは漁業権が設定されていないため密猟者の庭になっている。しかし最も広大な海域は北方領土だ。ソ連時代、スパイ容疑で拿捕されれば、ソ連で何が起こっても泣き寝入りだ、海岸から中間ラインまで一番近くでは2kmもない。根室の漁師は危険を覚悟で出漁し昭和56年末までに1200隻、8500人が拿捕され1/3の船が沈められた。同時期、情報提供の代わりに領海内での漁を黙認されたレポ船が登場する。ソ連が実効支配するが建前としては日本の海。ここでの漁をやめさせるにも適用できる法がない。昭和50年ごろにはここに暴力団が目をつけハイスピードで巡視船を振り切る特攻船を繰り出した。ソ連が実弾を撃つようになり特攻船は消え代わりにロシアの漁師が密猟したカニの密輸が始まった。
戦後、港では毎日のように賭場が立ちヤクザと漁師の距離は今よりもかなり近かった。前浜で獲れる獲物は住人の物という漁業権は日本独自のもので、網元や庄屋が独占していた。そこにヤクザが目をつけ癒着が始まる。沖仲仕や人足の手配から誰でも雇う築地市場まで密猟がなくてもヤクザが入り込む機会は多いのだ。暴力の港と呼ばれた銚子では市民が共産党よりも高寅一家に近かった。
日本の漁業問題を指摘し続ける東京海洋大の勝川教授が終わりにでこう述べている。「あまりにも地雷が多すぎて下手に突けない」漁業権から流通過程まで手を突っ込まないとヤクザの密猟はビジネスとして成立してしまうが、これを変えるには既得権を持つ関係者の多くが反対するのだろう。