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紙の本
ほの暗くも輝く魂の原風景
2020/09/08 08:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まいみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者が意図的に絵柄を変えることもあって、表紙のようにデフォルメの効いた絵本のように可愛いめの絵柄だけでなく、耽美でリアルよりな鋼版画風やステンドグラスのように鋭角的な木版画風などまず多様な絵柄と表現を楽しめる作品集となっています。
話はどれも不穏だったり精神への重圧を感じるものであったり明るいものではありませんが、登場人物に感情移入させるというよりは読者が持っている感情を突いてくるタイプのハマる人はとことんハマる作品です。入り込ませる作風なのに変に自己憐憫がないので読者を入り浸らせませんが、心の原液を抽出して描いたような作品達は読者の心にするりと入り込んで尾を引きます。
特にタイトルにも入っている「ガラス玉」は社会を生きる中でなくしてしまった心の故郷の捜索という誰しも心当たりのあるものを巧みに描いた作品となっており、現実から離脱する孤独感はありますが不思議と澄んで美しく、同じ題材でも作者のように表現できるものはいないだろうというセンスの詰まった傑作です。
作品解説も載っているので、よく分からないと感じた話もある程度理解できるようになっています。作品解説は解説者がただ解説する形ではなく、作者自身の感想やその生い立ち、思想も織り交ぜて語るマクロなものになっており、作品理解の一助になるだけでなくより愛着と味わいを深めてくれる素敵なものになっています。
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