ビスマルクの生涯について丹念に追った労作
2016/02/29 21:44
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投稿者:Shigenobu Fujioka - この投稿者のレビュー一覧を見る
19世紀後半のプロイセンによるドイツ統一から、オーストリア、フランスとの戦争、その後のヨーロッパの政治的な安定を成し遂げたビスマルクの生涯について、丹念に追った労作。
ビスマルクを持ち上げるでもなく、批判ばかりするでもなく、是々非々で分析する著者の姿勢には共感できる。
ビスマルクの幼い時の両親との関係や、晩年の妻とのエピソードなど、その人間的な側面にも触れており、本の内容に厚みを持たせている。
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
19世紀のドイツを築いたビスマルクのことが、わかりやすく解説されていて、よかったです。政治外交力は、素晴らしかったです。
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内容(「BOOK」データベースより) 一九世紀ヨーロッパを代表する政治家、ビスマル クの業績は華々しい。一八七一年のドイツ帝国創 建、三度にわたるドイツ統一戦争での勝利、欧州 に同盟システムを構築した外交手腕、普通選挙や 社会保険制度の導入―。しかし彼の評価は「英 霊」から「ヒトラーの先駆者」まで揺れ動いてき た。「鉄血宰相」「誠実なる仲買人」「白色革命 家」など数多の異名に彩られるドイツ帝国宰相、 その等身大の姿と政治外交術の真髄に迫る。
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私の世代では、あまりよい評価ではなかったビスマルクについての伝記です。思ったより常識的な人物で、外交もそんなに無茶ではないと思いました。当時のプロイセンの置かれた状況を見ると、歴史の必然を感じます。むしろ今までの歴史研究・教育は、「鉄血」演説に左右されすぎていたと思いました。
当時のプロイセンと今の日本の置かれた状況がよく似ている気がします。ただバカの安倍は、ビスマルクにはなれません。
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生誕200年にあたる本年に、これまでの研究を踏まえつつ毀誉褒貶の激しい政治家・ビスマルクを論じた新書。分量はそれほど多いわけではないが、ビスマルクの一生涯を手際よくまとめてくれている。とりわけ、同時代人や後世の人間が付与したビスマルクのイメージを相対化するために、ビスマルクの「素顔」に迫るとして、彼の考えと実行された政策を関連づけて説明している。著者によれば、ビスマルクは普通選挙の提案やドイツ統一など、19世紀の国民国家思想を奉じていたように見えるが、それはあくまでも、ドイツではなくプロイセンを強大化させるために選択された手段にすぎず、彼の目的や国王に対する忠誠心は、むしろユンカーらしい保守的なものであった。したがって、ビスマルクの政治家としての才能は、時代に即応した政治理念のために活動したことではなく、プロイセンの強化という目的のために保守や革新といった枠にとらわれずに手段を選択したことにあるとされる。それに加えて、外的状況からの刺激に対して、しばしば急場しのぎであったとはいえ、上手く対応することができた(例えばドイツ統一後の外交政策)のが、彼の政治の「術」であったとされる。ビスマルクを取り巻く国内政治・国際政治の動向についてもまとまった解説がなされており、19世紀後半のドイツ政治史を学ぶ上でも良書だと思われる。
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オットー・フォン・ビスマルク。鉄(兵器)と血(兵士)こそが国力であるという有名な演説で鉄血宰相と呼ばれ、ヒトラーの前の時代のドイツを代表する政治家だ。強面なヒゲの風貌に加えて、皇帝とケンカして政治家を引退するエピソードもあり、傲慢な独裁者というイメージだが、通して見ると彼の人生の歩みは堅実だ。
田舎の地主からスタートし、プロイセン国の代議士、外交官を経て、首相に。皇帝ヴィルヘルム1世に忠誠を尽くしながら、周辺の小国を率いて、ドイツ連邦を形成。やがてはドイツ帝国へ。
ヒトラーのようにイケイケドンドンでひたすら領土拡大を目指すのではなく、適切なスピードで自国を発展させるビスマルクのバランス感覚に感心する。隣接する2大強国フランス、オーストラリアとの駆け引きやヴィルヘルム1世との関係は絶妙だ。
本書で描かれるビスマルクは優れた外交、戦争センスを持ちながら、その能力に溺れずコツコツとドイツの発展に尽くした冷静な政治家。彼が唯一、我を忘れたのが、皇帝ヴィルヘルム2世との対立と政治家引退。
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軍事力を背景に武断的な政治を行っていた印象のあるビスマルクだが、本書でそのイメージは払拭された。
当然軍事力、秘密外交を駆使し、プロイセン、ドイツのナショナリストとしてその力を振るうのだが、
決して完璧ではなく、思い通りでもなく、かろうじて母国の安全を作り出すため 苦心を重ねる様は、やはり大政治家であったと感じる。
本書は従来のイメージにとらわれず、一次資料や最新の研究を元に、著者の考察をふくめてビスマルクの実像に迫っていく。19世紀を知る上ではずせないビスマルクの概ねの姿を簡潔に理解できたと思う。
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ドイツ建国の立役者、19世紀最大の政治家とも言われたビスマルクの生涯について、最新の研究成果をふまえて記したもの。自分は高校センター世界史レベルの知識しかなく、若い頃のエピソードなどは面白く読めた。政治家になってからについても、一歩間違えれば崩壊してしまいそうなヨーロッパで、なんとか国をまとめるために四苦八苦している様子が、これまで抱いていたビスマルク像と異なっていてそのギャップもよかった。
ただ逆に、研究的な視点から見てるせいか褒めることが少なく、彼のどこがすごかったのかわかりにくくなっている点はあるように見えた。
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良くも悪くも中公新書。世界史リブレットよりは門戸が広い。部分的に深掘りされていて、つまみ食いしやすい。
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ビスマルクは伝統的なユンカー支配制度を守る志向を強く持ち、帝政の維持を第一とし、それらを守るために近代が生み出したナショナリズムを利用しつつ、自由主義勢力に対しては警戒を崩さない政治家。ドイツ統一、オーストリアやロシアとの微妙な関係の構築、フランスとの対立関係、また植民地獲得など、20世紀前半のドイツの骨格をすべて作り上げたともいえる。
ビスマルクはむしろ状況の変化に対応する術(クンスト)を持っていた政治家との評価。外で発生した変化に対し条件反射的に対応することができた「政治的天才」。
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「ビスマルク初心者向け」を気にして書いたとあるが、「近代ヨーロッパ初心者向け」ではないようだ。ザックリ英独仏露だけじゃ「?」な箇所も、ちょいちょいあり。オーストリア、ハンガリー、ルーマニア、オスマントルコくらいはもう少し押さえてから、リトライしたい感じです。
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伝記でなく,ビスマルク研究なので,ドイツ史やビスマルクについてある程度知識がないと内容についていけない. まあでも読み進めるうちに,ドイツ帝政期以降の働きはよく分かることができた.
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厳格で、外交も戦争も内政もできる、強烈なリーダーシップを持ったカリスマ的指導者、それがビスマルク。読む前のイメージはめちゃくちゃかっこよかった。
実際どんな人物なんだろうと期待に胸を膨らませて読んでいたら、上に書かれたようなイメージと全く違うのだ。当時の時代に流されず保守的であるし、内政も外政も思い描いたとおりにいっていない。引退してからも政治に顔を出してくるややこしいおじいちゃんエピソードもめちゃくちゃ人間的だ。
だからといって、19世紀最大のドイツの政治家であることは間違いないし、政治手法やトラブルに対しての対処をこの本を通じて詳しく知ることができた。
筆者はあとがきで、それまで抱いていたビスマルク像をアップデートしてほしいという思いを持って書いたと語っている。等身大のビスマルクを知れる、いい本だった。
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私の中でビスマルクは「ドイツ統一を推し進めた人物」というイメージがあったが、この本を読んで、一概にそうとは言えないのだということが分かった。
彼は生粋のプロイセン・ユンカーで、伝統に執着し、あくまでもプロイセンを大国とするために動いていた。
その手段としてドイツ・ナショナリズムを利用し、北ドイツにおけるプロイセンの覇権を確立させることに成功したが、同時に、元々は意中になかったドイツ統一事業に手を染めることになっていく。
目的を達成するために利用したことで、逆に振り回されているようにも見える様子は、これまでの彼のイメージとは違っていた。
そして彼は「伝統」と「革新」という二つの要素を持ち合わせていたのだということを知った。
本書は、あとがきにあるように『一時期のように彼を弁護して著しく称揚することもしなければ、徒(いたずら)に批判して弾劾することもせず、最新の研究成果を踏まえつつ、一次史料に即して実証的かつ公平に論じながら、彼の実像あるいは等身大の「素」の姿を描くべく努めて』おり、フラットな立場からビスマルクを見ることができたように思う。
また、噛み砕いた解説により、読者が置いてけぼりにならず、初心者の私にも分かりやすかった。
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19世紀プロイセン及びドイツの稀代の政治家、オットー・フォン・ビスマルクの評伝。
ビスマルクの主な功績としては、帝政ドイツの成立、そしていわゆる「ビスマルク体制」と呼ばれる、同盟網の構築によるヨーロッパ政治秩序の二つが挙げられるだろう。しかしながら本書を紐解けば、これら二つの功績が必ずしもビスマルクの意図した通りに進んだわけではなかったことに気付く。
前者については、もともとビスマルクは北ドイツにプロイセンの覇権を確立する「大プロイセン主義」を標榜していた。しかし、19世紀のナショナリズムのうねりに抗うことができず、結局オーストリアを排除した「小ドイツ主義」という形でのドイツ統一に踏み切らざるを得なかった。
後者についても、フランスを孤立させドイツの安全保障を確保するという点までは、ビスマルクの狙い通りであった。しかし、その外交と同盟網は、あくまでも「その場しのぎ」の産物でしかなかった。また、秘密外交に基づく複雑な同盟網の全貌を把握しているのはビスマルクとその周囲の一握りの人間という、極めて脆弱な秩序だったのである。
ドイツの統一過程と、ビスマルク期の外交がわかりやすくまとめられてあり、近代ヨーロッパ外交史を理解する上で、大変有用な一冊。