紙の本
「イタリア史」の見事な成功例。
2003/09/15 11:12
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アルテミス - この投稿者のレビュー一覧を見る
「イタリア史は可能か」、という問いがある。
西ローマ帝国崩壊後、イタリア半島およびシチリア・サルデーニャ島が統一されるのは、19世紀のイタリア王国建国まで待たねばならない。その間「イタリア」は分裂し、ある地域は都市国家として独自の道を行き、ある地域は「イタリアの外」の国家に征服されその支配の下に忍従する。「イタリア」にある歴史はそれぞれの地域史で、「イタリア史」ではない、とする意見は一見もっともである。
「イタリア史」と題した書物でのこの分裂期間の処理は、二つのパターンがある。
ひとつは、大まかな傾向を述べて、それに代表例を付け加える、というもの。これは無難な方法であるが、歴史の表面をなぞって終わることになる。
もうひとつは、有力であった5つの国(ローマ、ヴェネツィア、フィレンツェ、ミラノ、ナポリ−シチリア)を交互に述べてゆく、というもの。前者よりは掘り下げが可能であるが、内容が散漫になりやすい。第一その5つの地域も長期にわたって一貫した国体を維持しえたのはローマ法王庁とヴェネツィア共和国だけである。
しかし、この期間のみを取り上げながら、見事に「イタリア史」となっているのが本書である。
目次をさらっと見ただけでは単なる人物列伝のようである。しかしその人選は、時代を積極的に動かしていった人物ばかりでない。10人のうち支配者層に属すのは半数のみ。残り5人は、(著名人ではあり周辺への影響力のあるものもあるが)あくまで個人レベルで苦闘していたにすぎない。
ではこの人選の基準は何かといえば、それはそれぞれの時代の精神を、少なくともその一方の極を体現している、ということであろう。
時代に翻弄される人物を生き生きと描き出すことによって、その時代への関心を高め、主題となっている人物には直接には関係のない国際情勢も興味深く読ませてしまう。そうして語られたイタリア全体にかかわる問題への知識は、次の人物を語る際の下敷きとなり、読者は10人の生涯をたどるうちに、イタリア全域における時代の流れを把握していることとなる。
これは、従来どおり歴史を国(地域)単位で著述していては困難な手法である。人は、国家だの政体だのに同情はできても感情移入まではできない。
この手法は、「物語」と「歴史」の分離が現代の思潮に及ぼす影響を危惧し、国家という枠組みへの依存を憂慮する著者の、試行錯誤のひとつであるとあとがきに明示されている。
私は、見事な成功例であると思う。著者の試みが成功しているということと、さらに、読み物として面白いという2点において。
余談だが、本書の成功に気をよくしたのか、この後に出版された中公新書の各国史がみな「物語 …の歴史」というタイトルになっているのはいかがなものか。著者が本書で試みた「物語と歴史の再融合」、および、「国家という枠組みからの離脱」という趣旨が、忘れられてしまうように思う。
電子書籍
物語としてのイタリア史
2022/05/22 21:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
古代ローマ末期からイタリア王国統一まで10人の人物をピックアップした物語として歴史を語っている。ピックアップされた人物は神聖ローマ皇帝や王だったり芸術家だったりさまざまだった。一般的なイタリアの通史の語り方ではないが面白かった。
紙の本
いずれも魅力的な人物像
2022/04/17 17:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
政治家、芸術家、宗教家などの10人を
選んで章立ての柱とし、彼らの生涯の背景
としてイタリア史を浮かび上がらせるように
描写している本です。
1000年共和国たるヴェネツィアに
関するくだりには驚かされ、大いに好奇心を
かきたてられました。
なお、続編も出ている模様。
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史実の羅列ではなく時代ごとに1人物に焦点をあてイタリア史の一側面を見ようとしているので読みやすく面白い!
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買った当時は難しそうだと思っていたけど、いざ読み始めてみると面白い。というよりも、読みやすく書かれていて良かった本です。
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[ 内容 ]
皇女ガラ・プラキディア、女伯マティルデ、聖者フランチェスコ、皇帝フェデリーコ、作家ボッカチオ、銀行家コジモ・デ・メディチ、彫刻家ミケランジェロ、国王ヴィットリオ・アメデーオ、司書カサノーヴァ、作曲家ヴェルディの10人を通して、ローマ帝国の軍隊が武装した西ゴート族の難民に圧倒される4世紀末から、イタリア統一が成就して王国創立専言が国民議会で採択される19世紀末までの千五百年の「歴史=物語」を描く。
[ 目次 ]
皇女ガラ・プラキディアの物語
女伯マティルデの物語
聖者フランチェスコの物語
皇帝フェデリーコの物語
作家ボッカチオの物語
銀行家コジモ・デ・メディチの物語
彫刻家ミケランジェロの物語
国王ヴィットリオ・アメデーオの物語
司書カサノーヴァの物語
作曲家ヴェルディの物語
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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イタリア史のそれぞれの時代を10人の人物に代表させて、というアプローチ。イタリア初心者にはパースペクティブが掴みづらいという弱みは残るけれど、ミケランジェロとレオナルドダビンチの確執や、メディチ一族の衰勢など、物語として面白く読める。なかなかの名文で、語り口に風格がある本を久しぶりに読んだ。こういう先生に教わってみたいとふと思った。
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(1993.09.30読了)(1991.10.31購入)
解体から統一まで
(「BOOK」データベースより)amazon
皇女ガラ・プラキディア、女伯マティルデ、聖者フランチェスコ、皇帝フェデリーコ、作家ボッカチオ、銀行家コジモ・デ・メディチ、彫刻家ミケランジェロ、国王ヴィットリオ・アメデーオ、司書カサノーヴァ、作曲家ヴェルディの10人を通して、ローマ帝国の軍隊が武装した西ゴート族の難民に圧倒される4世紀末から、イタリア統一が成就して王国創立専言が国民議会で採択される19世紀末までの千五百年の「歴史=物語」を描く。
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紀元後2000年を8人の人物の時代史を描くことにより、イタリアそのものの歴史を分かりやすく提示してくれるものです。ラヴェンナ、アシジ、フィレンツェ、ナポリ、トリノなどの都市の歴史も同時に学べます。つまり西ローマ帝国滅亡の直前の皇女ガラ・プラキディア、十字軍が始まった頃の女伯マティルデ、教皇全盛期時代の聖者フランチェスコ、皇帝派と教皇派が争った時代の名君・皇帝フェデリーコ、作家ボッカティオ、銀行家コジモ・デ・メディチ、彫刻家ミケランジェロ、国王ヴィットリオ・アメデーオ、司書カサノーヴァ、作曲家ヴェルディ。政治、経済、そしてその後も長い間、文化先進国としてヨーロッパをリードしたイタリアが都市国家の対立・抗争に明け暮れている間にスペイン・フランス・オーストリア等の諸外国の支配に悩まされ、追い越され、ついに国家統一されるまでの歴史を語ったものです。VERDIの綴りがイタリアの愛国心を鼓舞し、「ナブッコ」の「黄金の翼に乗って」の大合唱と共に、イタリア統一戦争が繰り広げられて行ったという記述には感動でした。今までよく知らなかった天才色事師カサノーヴァなども大変興味深かったです。
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イタリアの歴史に、知識不足な私には、教科書の試験に出る単語を思い出すぐらいの作品でしかなく、思い入れが生まれるような物語ではなかった。
司書カサノーヴァは、興味が出たが。
私以外の人達の評価・感想を見たら、自分にはイタリアの歴史に関する知識が不足している事を痛感させてくれた作品。
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・現在のカノッサは古城の廃墟に風が吹くばかり、たまに訪れる観光客のほかは住む人とてない
・1453年、東ローマ帝国の首都を完全に包囲した14万のトルコ軍団は、皇帝メフメト2世の号令下、総攻撃を開始。防戦二カ月余、ついにコンスタンティノープルは陥落
・フィレンツェでメディチ家ゆかりの場所を訪ね歩けばきりがないが、ウッフィーツィ美術館だけは見逃すまい
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☆☆☆2020年1月☆☆☆
1、皇女ガラ・プラキディアの物語
2、女伯マティルデの物語
3、聖者フランチェスコの物語
4、皇帝フェデリーコの物語
5、作家ボッカチオの物語
6、銀行家コジモ・デ・メディチの物語
7、彫刻家ミケランジェロの物語
8、国王ヴィットリオ・アメデーオの物語
9、司書カサノーヴァの物語
10、作曲家ヴェルディの物語
イタリアの解体(ローマ帝国)から、再統一まで1000年以上の歴史をたどる壮大なロマン。有名な人物から、あまり知られていない人物まで。
イタリアの歴史を語るうえで欠かせないのはローマ教皇。
僕は昔から「カノッサの屈辱」が大好き(・・・と言っていいのかどうか) という意味では
「2、女帝マティルデの物語」は教皇グレゴリウス7世の人となりがわかって実に面白かった。どんな頑固者だったのだろう。しかし、その厳しさで人をひきつけるカリスマでもあったのだろう。
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まるでイタリアの各都市を歴史散歩しているような錯覚になる筆致。コロナが収まったら、是非行ってみたくなる。
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著者本人は列伝ではないと断言しているが、一章に一人の人物を割いて、その人物にまつわるエピソードと絡めて語るイタリアの歴史=物語。読む順序が逆になってしまったが、第一巻のほうは10章で10人の人物を取り上げ、古代からイタリアの国家としての統一(19世紀末〜20世紀初頭)までを物語風に綴っている。一話から順に人物をあげると、皇女ガラ・プラキディア、女伯マティルデ、聖者フランチェスコ、皇帝フェデリーコ、作家ボッカチオ、銀行家コジモ・デ・メディチ、彫刻家ミケランジェロ、国王ヴィットリオ・アメデーオ、司書カサノーヴァ、作曲家ヴェルディとなる。大体、一章で一時代を扱っているので、内容はわりと二巻と重複している部分が多いが、それでもやっぱり面白い。
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237
イタリアはヨーロッパ世界の中でも特別に古い歴史を持つ国だが、イタリアという国が現実に誕生したのは、今からせいぜい150年ほど前にすぎない。本書はローマ帝国が分裂する1500年前から、統一されたイタリア王国が成立する150年前までの歴史を、10のテーマと人物のエピソードに分けて紹介している。
(『世界史読書案内』津野田興一著 の紹介より)
「皇女ガラ・プラキディア、女伯マティルデ、聖者フランチェスコ、皇帝フェデリーコ、作家ボッカチオ、銀行家コジモ・デ・メディチ、彫刻家ミケランジェロ、国王ヴィットリオ・アメデーオ、司書カサノーヴァ、作曲家ヴェルディの10人を通して、ローマ帝国の軍隊が武装した西ゴート族の難民に圧倒される4世紀末から、イタリア統一が成就して王国創立専言が国民議会で採択される19世紀末までの千五百年の「歴史=物語」を描く。」
目次
皇女ガラ・プラキディアの物語
女伯マティルデの物語
聖者フランチェスコの物語
皇帝フェデリーコの物語
作家ボッカチオの物語
銀行家コジモ・デ・メディチの物語
彫刻家ミケランジェロの物語
国王ヴィットリオ・アメデーオの物語
司書カサノーヴァの物語
作曲家ヴェルディの物語