紙の本
選ばれた男の生き様
2001/02/16 14:15
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投稿者:taigo - この投稿者のレビュー一覧を見る
経済小説の書き手としては一番好きな城山三郎の最高傑作。一代で巨大レストランチェーンを築き上げた男の物語である。
大きなことを為し遂げる男というのは、何者かの大いなる意志によって動いているのではなかろうか。そう思うことが、成功者の評伝を読んでいる時ある。もちろん本人は自分で考え決断しているのだが、俯瞰してみると最初から定められた道をたどっているように見えるのだ。その道に進もうとした最初の一歩、数々の苦難・逆境、大きな成功、そして終焉。
本書の主人公倉原礼一の人生も、そのように書かれているように私は思う。働き過ぎによって体を壊しぼろぼろになっても、なお前に進み続ける。そこにはもはや外食産業の覇者を目指すという当初の目的はない。前に進まなければいけないという何者かの声を聞いているかのように、行き着くところが奈落の底だとしても前に進む、ただそれだけである。
だから私は本書のラストに、納得した。このような生き方をしてきた人間は、このように終わらなければいけないはずだ、そう読みながら思っていたからだ。
選ばれた男はいかに生きるべきか。その答えがここにある。
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ファミレス物語。ロイヤルホストとすかいらーくがモデルになっているといわれている本です。この本を読むと、日本のファミレス誕生秘話を知ることになりますよ。
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城山氏は何故倉原を昇天させてしまったのか?二人の戦争に結論を出したのか、それとも先送りしたのか。昇の生き方に賛同したのか。沢に軍配を挙げたのか。
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高度経済成長の中で、
敗戦から バブル崩壊までの 時代の
創業者は、かくも壮絶に 生きたのだろう。
倉原は、福岡の出身で、「一流」をつねにめざした。
あくまでも 自分が中心でないと満足できない。
権限の委譲ということができない。
それでも、突進力そして人材をスカウトするチカラは
迫力があったが、
しかし、その人たちをうまく使うことができなかった。
『飢えた胃袋にけんめいに食物を詰め込む。
満腹に近づくと、更に大きな胃袋にとりかえて、
また飢えを感じさせ、更に多くの食物を取り込ませる。
腹がくちてくると、もっと大きな胃袋を』
まさに、それを 地にいくのである。
恐ろしいばかりの拡大成長路線。
拡大すること 成長することが 目的だった。
おなじように 東北、満州そだちの 横川3兄弟は素朴で
田舎のにおいをさせながら、知らないことは学ぶ という姿勢で
セントラルキッチンを確立しながら 店を 配達していった。
ここには、あまり壮絶感がないが 同じようなビジネスモデルだった。
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ロイヤルとすかいらーく、二つのレストランを興した創業者をモデルに描かれた作品です。時代は高度成長期、如何にして成り上り企業が出来て行ったのかを、その悪の面もきちんと触れながら、男たちを取り巻く息遣いを城山三郎は記しています。往年の輝きは失せたといえ、今も全国にチェーンを展開する2社は、どつやって成り立っていったのか、そして何故今も残っているのか全てこの本に記載されています。時代背景は異なるかもしれませんが、伸びる企業と、行き止まる企業の差を知りたい人にはオススメの名著です。
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ロイヤルホストとすかいらーくをモデルとした外食産業の勃興の物語。コックとセントラルキッチン、人材育成と引き抜き、高級感と庶民的。相反するものに揺れながら、立ち止まることなく突っ走り成長する様がよい。それからこぼれ落ちて行く人の姿も書かれている。