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なんだか不思議な趣きの連作短編小説。警察もの、と言って良いのかな。辛夷(こぶし)ヶ丘という、多摩地区と思われる東京郊外の廃れつつあるニュータウンを舞台にした、えっ、この人はそんな人だったの?と驚くようなニヒルなミステリーが満載。一応、辛夷ヶ丘署・生活安全課捜査員・砂井三琴が主人公的な感じでどの話にも絡んできます。しかもこの主人公自体が・・。読み返さないとイマイチ理解しにくい箇所が散見されたのが残念だったけど、不思議な味わいは楽しめる。あとは読んでのお楽しみ。
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交通事故も少なく、少年たちも大きな事件を起こさない、週に4日は定時帰りが出来る辛夷ヶ丘署。吹き溜まりの寄せ集めの場末の所轄にとばされた砂井三琴は生活安全課で相棒の田中盛と今日も街を巡回する。街を盛り立てた一族末裔の老女の盗難被害に放火事件、窃盗や盗聴、果てはかつて住民を震撼させた連続殺人事件の再犯、なんだかんだで今日も騒がしい。
葉崎なんて目じゃないくらいに悪人が混み合っているぞ辛夷ヶ丘。相変わらず一行も読み落とせない伏線祭り。連作短編集だからよりぎゅっと詰まってる。苦いのから笑っちゃうの、ぞっとするのまで、イヤミス落ちのオンパレード。三琴と田中のコンビが楽しいので二人が暗躍する話がもっと見たかったけど、『黒い紬』の絶妙なオチも『葬儀の裏で』の悪党感も好き。ただ、表題は微妙だったかな。一話目と最終話の三琴のキャラがだいぶ違ってる気がして。強欲なのは分かるけどラストがちょっとわかんなかったんだよなぁ。
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東京都内にある、しかし辺鄙な場所、辛夷ヶ丘。
そこは、訳あり、難ありの警察官たちが集められる、いわば吹き溜まり。
そこにいる、三白眼の大女、砂井三琴は、生活安全課の「捜査員」。
彼女が主人公、と言いたいところだが、実のところ、彼女は特に何もしていない。
大きな実績を上げたわけではない。
謎はとくが、事件の鮮やかな解決で、士気を上げるでもなく、闇にひっそりと葬っただけ。
なぜ彼女がここに飛ばされてきたのか、それは背景として描かれないのでわからない。
また、そんなだから魅力的とも言い難い。
おまけに事件の全てがなんだか嫌な感じが最後まで残る。
確かに現実では、そうしたことは多々起こりうるだろう。
行き詰ること、調べようがなくなること、人件費と見合わないからやめてしまうこと。
でも、フィクションの中だからこそ、はっきりとした終わりである方が私の好みだ。
もちろん、敢えてそうした終わりにする手法があるのは知っているけれど。
完全に好みの問題なのだが。
本書の怖いところは、(ステレオタイプかもしれないが)都会の無関心さと、田舎の過剰な監視制度の二つを併せ持った街が舞台であることだ。
「丘の上の死神」は、革新と保守の構造が、「進む」「待つ」という面で逆転していくところが物語に不気味さを与えている。
全体的に「隠す」ことが、メインの作りになっている。
それが、得体の知れない、しかし自分のすぐ隣で起こっていそうな怪しさを醸し出している。
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相変わらず後味悪いが癖になるブラックミステリー。連作の一応の主人公の砂井がキョーレツに気持ち悪い。善悪を超越した気持ち悪さだ。何故辛夷ヶ丘署に配属になったのかが一番のミステリーかも。
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『吹きだまりの寄せ集めと言われる場末』の辛夷ヶ丘警察署。その生活安全課に飛ばされた砂井御琴を中心に、辛夷ヶ丘で起きる様々な事件を描く。
砂井が何を仕出かして辛夷ヶ丘に飛ばされたのかは詳しくは分からない。身長が高すぎて上司を見下ろす具合になったのが印象悪かったともあるが、辛夷ヶ丘に来てから『素敵な不労所得』にせっせと励むあたり、『吹きだまりの寄せ集め』にたどり着いても仕方ないのかなとも思える。
しかし砂井に限らず、警察官の面々に限らず、辛夷ヶ丘という土地柄は皆が皆そんな感じ。老いも若きも、社長も下っ端も、役人も市長も自分の利益をとことん追求する。
ここまで徹底されると逆に気持ちいい感じもある。しかも若竹さんのサラリとした文体がイヤミスっぽさを排してブラックユーモアに見せてくれるし、もちろんミステリーとしても爽快感を与えてくれる。
ところが、終盤からは雰囲気が変わってくる。
『素敵な不労所得』にとどめておけば良いものを、これはかなり深入りし過ぎではないのか?と首をかしげたくなる。
ブラックユーモアというものを通り越して単なるブラックのような。
私が若竹さんに求めているのはあくまでユーモアなので、逢坂剛さんの禿鷹シリーズのような感じではない。
前半は軽快で良かったけれど、終盤の特に2本は個人的な好みには合わなかった。
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東京近郊のさびれたベッドタウン「辛夷ヶ丘」を舞台にした連作短編。
お話自体はどれもいい感じにひねってあって面白く読めるんですが・・・ブラックユーモアミステリみたいなことを何かに書かれてるのを目にしたんですけどちょっとブラックすぎませんかね?イヤミスとブラックユーモアの中間くらいの印象。
全体的に救いがないような感じなので、あんまりのめり込まずにさらりと読むくらいの方が精神的によろしいんじゃないかと思ってみたり。
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警官も登場する辛夷ヶ丘の住人もみんな悪人。女性警官の砂井三琴も相棒と共にせっせと不労所得集めに余念がない。最初はユーモアもあったけど、話を重ねるうちに、だんだん砂井の悪徳度合いが上がりすぎたような。
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警視庁の吹きだまりの寄せ集め・姥捨て山・流刑地、、と散々に呼ばれる辛夷ケ丘署、生活安全課の砂井三琴がからむ事件は、小悪党だらけによる真相を解決しないことで素敵な不労所得を稼ぐような悪徳のストーリー。
明かされる真相の意外さは楽しめるし、私腹を肥やす悪徳警官や小悪党住民たちのからみも嫌いではないが、やはりモヤモヤ感はぬぐえない。
19-69
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都心まで一時間半の寂れたベッドタウン・辛夷ヶ丘では20年前の連続殺人以来、事件らしい事件もないのどかな街です。…というのは表向きの連作ミステリ。最初が女性刑事・砂井の一人称で語られるため、葉村シリーズのようなものを想像して読み始めてしまい、途中で驚愕しました。基本ブラック。登場人物も好きになれない。でもさすが若竹さん、このテイストでも最後まで飽きさせることなく、一つ一つが本当に見事です。とにかく私はこの街の住人でなくて良かった、と心から思います。好みは「黒い紬」「きれいごとじゃない」「葬儀の裏で」。
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最初の話を読み終わったときは、この悪徳警官砂井三琴が、なんだかんだとありながらも、ちょいちょい上前をはねながら、いろいろ事件を淡々と解決していくのかなと思った。ところがとんでもない。話はだんだんきな臭くなっていき、人の嫌な部分をどんどん見せてくる。こんな気持ち、自分にもあるよな?うわあ、なんだかすごいよ、若竹七海さん、さすがだわ。最後に、「殺人鬼がもう一人」という題が効いてくる。
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ダークヒロイン?が登場する、連作短編集。善意のカケラもない、業突く張りのロクでもない警察官。だけど妙に鋭く頭は切れる。相変わらず人の悪意や意地の悪い人間がてんこ盛りの話ばかり。それでも、それなりにスッキリと読めたのに、最後の話はどうなんだろ。とうとう彼女も一線を超えてしまったということなのか。後味が悪過ぎる。
続きがあるなら読むかもしれない。
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犯人が持っていた当たり馬券をちゃっかり自分の懐に入れて換金したり、詐欺被害のバックをもらう悪徳警察官。
悪どいが、事件解決能力が優れているので憎めない。
ゆるっとしたブラックミステリー。
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普通の市民を装った悪人ばかりの町が舞台の連作短編。「なむなむ」が口癖の人物の話がどんでん返し的で良かった。
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こういうのを「ブラックユーモア」って言うかなあ?最初のあたりは、まあそう思えなくもないけど、最後の一篇なんか単に「ブラック」。葉村晶シリーズは大のお気に入りなんだけど、若竹七海さん、こういうのも時々あるんだよね。私は苦手。
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東京郊外の長閑な町だった辛夷ヶ丘。最近地主の老婆相手の路上強盗や市長選に絡みそうな殺人等きな臭い事件が次々起こる。これを生活安全課の砂井が解決していく短編集なのだけど市民は善良なふりして腹黒いし、砂井も相方と一緒に事件にかこつけて裏金を着服したりする悪徳警官。だから事件の解決も正義に基づくというよりは落とし処に収める感じ。これがなかなかブラック。黒いの好きとしてはにやり。伏線の回収具合は相変わらず見事です。三作目~五作目は砂井主体じゃない話で妹の結婚式当日に次から次へと起こる騒動「黒い袖」や本家の久しぶりの葬儀の際に一癖も二癖もある親戚が集まる「葬儀の裏で」この二つが黒い中にも小気味良くて良かった。ただ砂井が一話と最終話でなんか感じ変わっていて違和感。