紙の本
まったく新しい連作短編集
2019/06/29 05:34
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
葉村晶ものかと思ったのですが、まったく新しいシリーズ(?)の連作短編集でした。
東京都心まで電車で約一時間半の場所にある辛夷ヶ丘は、かつては勢いのあるニュータウンだったが今ではさびれたベッドタウン。成長した子供たちは都心へ出ていき、年齢を重ねた親世代が多く残っている、典型的な<さびれた郊外>である。そんな町では事件もなく平和でのどか・・・と思いがちだが、何故か放火殺人があったり、空き巣や詐欺の事件も相次ぎ、ダメ警察官の吹き溜まりと噂される辛夷ヶ丘署は上も下への大騒ぎ。生活安全課に所属する砂井三琴と田中盛が捜査を命じられ・・・。
そこから始まる、個性が強すぎる住人たちのこと。
『ゴブリンシャークの目』
『丘の上の死神』
『黒い袖』
『きれいごとじゃない』
『葬儀の裏で』
『殺人鬼がもう一人』
6編収録。最初の2編は砂井三琴が語り手だが、3編目からはそれぞれ違う語り手に。でも砂井三琴はすべてに登場するし、前の話で名前が出てきた人が次で主要人物になったりといったクロスオーバー感もあり。
田舎町が舞台ならコージーミステリっぽくもできるのに、あえてそことは最も遠い(でもよく考えたら遠くないのか)、人の悪意どころではないダークでヘヴィななにかがてんこ盛りの方向に。でも文体はどこかユーモアを漂わせているので余計にたちが悪く、「なにこれ、ホラー!」と大変気分が重くなる感じ。
勿論、面白いんですよ! 面白いんだけど・・・イヤミスなら重いほうがまだ耐えられる。軽いタッチのイヤミスってこんなにイヤな気持ちになるか、とびっくり。
こういう<底意地の悪さ>が若竹七海の真骨頂だと言われれば確かにその通りなんですけど・・・思いのほか、自分が“良識の徒”なのだと気づかされてしまいました。
でもきっと、もしこれの続編が出たら読んじゃうんだろうな。
紙の本
私は楽しめた
2019/05/19 23:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぷりしら - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初は、事件を解決しつつちょっとした刑事の(不正な)役得をユーモラスに語る作品かと思っていたが
ユーモラスどころか完全にブラックな小説だった。
このブラックさを楽しめる人にとってはよく出来た面白い小説なのだが、
人によっては全然受け入れられない類のものだと思う。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽぽ - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編の不思議なミステリーでした。個人的には面白くて好きでしたが、不思議な感覚の作品なので好き嫌いはあるかも。
投稿元:
レビューを見る
最初のうちは、砂井がちょっと毒のある困った警察官
かと思ったら、だんだん。。。
まさかのラストに驚愕。
中盤までの方が私の好みだったかな。
そこまでは、ちょっとにやりの面白さだった。
投稿元:
レビューを見る
辛夷ガ丘市警察署生活安全課の砂井三琴、辛夷ガ丘の住民たちによる6つの連作短編集。
のどかな町、辛夷ヶ丘で起こる事件を警察官の三琴が解決するのかと思いきや・・・かなりプラっク。
面白かった、
(図書館)
投稿元:
レビューを見る
架空の警察署・辛夷ヶ丘警察署の生活安全課・砂井三琴を中心とした連作短編集。
三琴目線で描かれる前半と、その他の関係者目線で描かれ、三琴が絡む展開となる後半に分かれる。
いずれの作品も若竹ワールド満載で、最初は善人だと思っていた人物も、実は全員悪者と言う、何とも読後感が悪い作品が満載。
登場人物も全員悪者で、ここまで徹底していると、読んでいて清々しいぐらい。
投稿元:
レビューを見る
若竹七海さんの警察物といえば、御子柴くんシリーズが思い浮かぶ。くすっと笑えないこともない御子柴くんシリーズに対し、本作はコージーを通り越して、全然笑えねえ。こんな警察嫌だ。こんな町嫌だ。突き抜けたか若竹七海。
舞台は東京都郊外の辛夷ヶ丘(こぶしがおか)市。辛夷ヶ丘署に勤務する砂井三琴巡査によると、ここは警視庁の吹き溜まりだという。暇を持て余しつつ、現実を受け入れ生活をエンジョイしていた三琴。そんな場末の所轄でも、事件は起きる。
「ゴブリンシャークの目」。地元の名家の女性当主が引ったくりに遭った。金はあるだけに、色々な人間が寄ってくる。高齢者ばかりの寂れた郊外都市で、名家を維持するのも並大抵のことではない。ある意味、渡りに船だったのだろうか…。
「丘の上の死神」。こんな市でも市長選がある。保身のために現職を支持し、対立候補を逮捕しろと言う無茶苦茶な課長。地方の選挙とはドロドロしがちではあるが…。本作中では一服の清涼剤と言える「黒い袖」。警察関係者の結婚式って大変そうね。
「きれいごとじゃない」。地域密着の清掃業者。現場にしれっと紛れ込んだのは…。表向きは捜査のためだが、最初から目的はそっちだろ。それにしてもこのオチ。パートの経験がこんな形で役に立つとは。まさか、ここまで計算していた?
「葬儀の裏で」。子どもの頃は、葬式が楽しかった。という一文で始まるが、盆などで本家に親戚一同が集まった時代を、懐かしむ気持ちはわかる気がする。時代は流れても、本家を中心とした結束は不変だった。彼にはそれがわからなかった…。
最後の表題作「殺人鬼がもう一人」。20年ほど前、この町を騒がせ、未解決になっていた連続殺人事件。犯人が再び動き出した。同情する余地があるような因果応報なような…。三琴がどう処理したかは、読んでください。笑えるかこんなもん。
左遷されたはずが、実は水を得た魚のような三琴。彼女を辛夷ヶ丘署に飛ばした警視庁幹部は、英断だったと言えるだろう。三琴は三琴で好きにやる。この現代日本の縮図のような都市の治安は、ある意味安泰かもしれない。
投稿元:
レビューを見る
内容(「BOOK」データベースより)
都心まで一時間半の寂れたベッドタウン・辛夷ヶ丘。20年ほど前に“ハッピーデー・キラー”と呼ばれた連続殺人事件があったきり、事件らしい事件もないのどかな町だ。それがどうしたことか二週間前に放火殺人が発生、空き巣被害の訴えも続いて、辛夷ヶ丘署はてんてこまい。そんななか町で一番の名家、箕作一族の最後の生き残り・箕作ハツエがひったくりにあうという町にとっての大事件が起き、生活安全課の捜査員・砂井三琴が捜査を命じられたのだが…。(「ゴブリンシャークの目」)アクの強い住人たちが暮らす町を舞台にした連作ミステリー。著者の真骨頂!!
投稿元:
レビューを見る
【収録作品】ゴブリンシャークの目/丘の上の死神/黒い袖/きれいごとじゃない/葬儀の裏で/殺人鬼がもう一人
投稿元:
レビューを見る
なにその素敵な不労所得。税金もかかってないとか最高じゃない。
正直、この辛夷ヶ丘には絶対住みたくない。なんなのその訳ありのひとしかいなさそうな町。警察もひでーなと思ってたら住人もとんでもねーわ。
若竹らしいユーモアにあふれた連作ミステリ。ユーモアっていってもブラックユーモア。いつもよりブラックさが増してる。短編が六本入ってるんだけど、少しずつ微妙に重なってるところがあって、最終的に砂井さん最強ですね、っていうオチでした。かっこいいわ、砂井さん。
全体的に女性が強いのがいいよね。「黒い袖」のお姉ちゃんも好きです。おお、こわ、なむなむ。「葬儀の裏で」のサクラさんもいいね。ミナミちゃんの今後も気になるところ。
さっくり読めて面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
「ゴブリンシャークの目」「丘の上の死神」「黒い袖」「きれいごとじゃない」「葬儀の裏で」「殺人鬼がもう一人」を収録。
東京都下の辛夷ヶ丘市を舞台としたイヤミス短編シリーズ。
最初のうちはブラックユーモアと言えなくもなかったが、話を重ねるにつれ、それを超えて、ひたすらイヤ~な感じに。こんな町には住みたくない。
投稿元:
レビューを見る
なかなかの悪徳警官が出てくる連作短編集。わりと毒が効いててあまり救いがない感じ。この作風自体は若竹七海らしい感じだけど、個人的には同じ作者でももうちょっとポップなタイプの作品の方が好み。
投稿元:
レビューを見る
東京都下の辛夷ヶ丘市を舞台とした連作。
ブラックでダーティ。
こういうの書いたら本当うまいよな!好き!!!
投稿元:
レビューを見る
+++
都心まで一時間半の寂れたベッドタウン・辛夷ヶ丘。20年ほど前に“ハッピーデー・キラー”と呼ばれた連続殺人事件があったきり、事件らしい事件もないのどかな町だ。それがどうしたことか二週間前に放火殺人が発生、空き巣被害の訴えも続いて、辛夷ヶ丘署はてんてこまい。そんななか町で一番の名家、箕作一族の最後の生き残り・箕作ハツエがひったくりにあうという町にとっての大事件が起き、生活安全課の捜査員・砂井三琴が捜査を命じられたのだが…。(「ゴブリンシャークの目」)アクの強い住人たちが暮らす町を舞台にした連作ミステリー。著者の真骨頂!!
+++
ラストにどんでん返しが待ち構えている、と言えばそうなのだが、そのどんでん返しぶりが、ちょっと普通ではない。というか、予想の斜め上を行く感じで、はぐらかされたようでもあり、まんまとしてやられたようであり、病みつきになりそうである。ガラッと視点が変わってすっきりするかと言えばそうとも言い切れないこともあり、その辺りが絶妙で、もやもや感を残しつつ、次に惹き寄せられてしまうようで、妙な魅力がある一冊なのである。もっと読みたい。
投稿元:
レビューを見る
事件も事故もない取り残された街。辛夷ヶ丘の警察官・砂井三琴。街はのどかだけれど、砂井は悪? ブラックでユーモアある連作短編ミステリ。
今回は隠れた毒ばかり。砂井の悪さ加減が絶妙に描かれている、描き加減が上手い。怖いぞ、砂井! 圧倒的なものではなく、ユーモアの中にそろりとのぞかせる悪だ。また新しいシリーズの登場か? 砂井をまた見てみたい、悪具合をね。