鋭い筆致で定評のある作品を発表されている穂高明氏の傑作です!
2020/08/09 11:56
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『月のうた』(ポプラ社小説大賞優秀賞)をはじめ、『かなりや』、『これからの誕生日』、『むすびや』、『夜明けのカノープス』などの話題作を発表されている穂高明氏の傑作です。同書は、30代後半の悠を主人公とした物語です。悠は、アルバイトをしながら空き時間に原稿を書く駆け出しの作家です。仙台を出て東京で一人暮らしを続けるのですが、ぎりぎりの生活を送っています。そんな悠の日常が、震災を境に激変します。非常時だとはしゃぐ同僚、思わぬ人からの気遣い、そして、故郷の家族の変化などなど、「私は、なぜこんなにもちっぽけなんだろう」と過去と未来を見つめた悠はある決断をします!一体、どんな決断なのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
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故郷仙台を出てひとり暮らしを続けながら駆け出し作家として頑張る悠子。生活は苦しくも夢を追う中、彼女の日常は突然崩れ去る。その時、彼女の決断は?
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2019.05.08~05.09
きっと、被災地の方々の本音なんだろうと思う。
遠くから「絆」だ「復興支援」だと言っても、何の役にも立たない。本当に必要なものって、なんだろう。2020オリンピックでないことは確かだな。
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東日本大震災をテーマにした話。
何を見てどこに惹かれてこの本を“ほしい本”のリストに入れたのか全く思い出せないのだが、こういう感じの話だと思っていなかったことは確か。
あの日あの時間、私は大阪の会社の居室にいて、吊ってある蛍光灯が揺れるほどの揺れだったがそれ以上のことはなく、家に帰ってからテレビで事の大きさを認識しはしたものの、唯一の気がかりは福島に住んでいる弟の安否だけで、その無事が分かってしまえば最早テレビの前の傍観者でしかなかったと思う。
そうした私にとっては、仙台出身の、主人公には自分自身をかなり投影しているという作者が、葛藤しながら揺れている感情をむき出しにしながらも小説に作り上げた作品に対し、まともに向き合うのはかなりきつかったというのが正直な感想。
心動かされる場面も多々あったが、そうしたことも含めて簡単に何か語って良いのかという思いが引っ掛かるばかり。
この作者、アンソロジーの中の短編を除けば初めて読んだのだが、こういう特殊な作品でなく、先に別の作品で知っておきたかったと思った。
2020.10.18追記 「おすすめ文庫王国2020」のエンターテインメント部門の第1位だったのでした。
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震災、震災後について、もちろん見聞きはしてきたけれど、こんなに嗅覚、触覚、心の襞に働きかけられたのは初めてだった。
涙が出そうになるところもたくさんあるのだが、それ以上に心を抉られるような感覚で読んだ。
『戸田悠』の書くものは心に染みるものだろう…
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東北大震災をめぐり、東京に住む小説家の姉、仙台で不動産会社に勤める妹、津波で死んっだ叔母、など震災で傷ついた心や絆を取り戻していく内容だが、とても心に響く文体で、今年最後に良い本に出会えてよかった。
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震災が絡む小説は読まないようにしてきた。被災地の外からの、自己満足とか押し付け感満載の「絆」とか音楽の力で元気にするみたいな胡散臭さが嫌いだし、逆に、被災した側からの「どうせわかりっこない」「所詮他人事でしょう」的な言われようにも抵抗があるから。
だからこの作品を読みながら終始モヤモヤしていた。何かをしようとしても、逆に何もしなくても彼らは被災してない外側にいるの私たちを冷めた目で断罪するのだと思うと、もう何もできないし、何をすることも思うことも許されないのだなと思う。
そうやって他人を切り捨てて、内にこもって、自分を責めて、そんな姿ばかり描かれても、経験していない人間の想像力は現実に遥かに及ばず、両者の距離は広がるばかり。
ということで、この作品は私には響かなかったけど、作者の柔らかく心に触れてくるような文章が好きだし心地いいので、次は震災以外の作品を読んでみたいと思います。
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実はこの作品の文庫本は、私の大好きなイラストレーターのげみさんが手がけていることを知り、ヒボさんのレビューを読んで、いつか読んでみようと思っていた作品になります。でも、図書館には文庫本じゃなくて単行本しか所蔵がなかったのですが、ブクログの登録は文庫本で敢えてしたいと思います。
この作品は、東日本大震災の被災者とその家族の物語です。被災地出身の悠子は都内で生活していたために被災は免れましたが、地元で暮らす両親、妹家族、親戚、友人は被災し、その犠牲になった人もいて…。悠子とその妹の夏子、そして2人の母である都の視点で描かれるストーリーには、苛立ち、葛藤、悲しみの感情もありながら、優しさや心遣い、あたたかみ、希望といった感情も感じることができます。これが、浅葱幕の「青と白」を思わせ、故郷の海と空と波と雪と白鳥の青と白を感じさせるんでしょうね…。
あたりの前の日常が一瞬にして崩れても、被災地にも被災を免れた地域にも同じように時は流れる…。東日本大震災の発災から13年、そして能登の震災からは2カ月…この時期に、この作品を読めてよかったと思います。ヒボさん、ありがとうございました。