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『今の世界は、いろんな音に溢れているけど、音楽は箱の中に閉じ込められている。本当は、昔は世界中が音楽に満ちていたのにって。』
本当に、音楽がこの本から聞こえてくるようだった。
ピアノコンクールを通して描かれる、才能溢れた若きピアニスト達の苦難や葛藤、それを取り巻く大人たちの反応。その先にみえる希望。こう書くと何とも陳腐で感動がうまく表現できていないのだが、「大した」才能はなく夢を諦めた者、多少の才能はあれ唯一無二の存在になれず苦しむ者、素晴らしい才能があっても自分を理解できていない者。音楽界に限らず世に多くいる様々な人の繊細な心理が描かれており感情移入しやすかったこともあり、一気に読めた。
全体としては風間塵の天才性と自由さが一番魅力的だったのだけれど、マサル(マーくん)の静かなる音楽への挑戦心、『「新たな」クラシックを作ること』という野望は面白かった。確かに現代においてクラシック音楽におけるコンポーザー・ピアニストというのはあまり聞かない。自分はクラシック自体に(これまでは)抵抗があったのでそのせいもあろうが、「新しい」「クラシック」とはどういうものか。ぜひ聴いてみたいと思う。
音楽に深い関わりを持たない自分でも、『音楽は素晴らしい』と感じた、貴重な体験になった。
この本を読んでから、街の「音」が少し大きく、楽しく聴こえるようになったのは気のせいではないと思う。
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恩田陸の蜜蜂と遠雷を読みました。
芳ヶ枝国際ピアノコンクールに出場するコンテスタントたちの青春群像がみずみずしく描かれていました。
栄伝亜夜は小学生の時、指導者でもある母親を亡くしたショックからコンテストでピアノが弾けなくなったという過去があります。
それでも亜夜に期待をかけてくれた恩師に報いるため、もう一度ピアノコンテストに出場することにします。
亜夜は、養蜂家の子供の風間塵や、幼い頃の友人でこのコンテストで再会したマサルらの演奏に刺激されて自分の演奏のスタイルを模索していくのでした。
ピアノ演奏が映像のイメージで描かれていくので、ピアノの演奏を聴いたことがない読者でも面白く読めました。
規格外の天才である風間塵の審査についての審査員たちの苦悩や、亜夜の理解者である友人の奏の祈りなども描かれていて物語に厚みがましています。
夜のピクニック以来、また恩田陸の小説を堪能しました。
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小説だからこそできる、音楽体験と物語世界の奇跡的な融合。恩田陸さんってこんなにすごい作家さんだったのか、と思った作品です。
小説のポイントは、文字で描かれるコンクールでの演奏シーン。そしてコンクール参加者たちの再生。
まずは演奏シーン。出版当初から文字なのに音楽が聞こえる! といったようなレビューがたくさんあったような気がします。
「そんなわけないやろ」と思いつつ、いざ読んでみてビックリ! 「ホンマや……」
専門的な用語や、テンポ、音の強弱、曲自体の説明も読みごたえがあるのですが、それだけで演奏が聞こえてくる、とまではならないでしょう。この小説のすごいところは、演奏から浮かんでくるイメージを、描いていることです。
例えば、荒れ狂う自然、生命を包み込む雄大な大地、どこか懐かしさを感じる平原、漆黒の宇宙、そして演奏者たちの思いと再生の物語……。
恩田陸さんは、ありとあらゆる想像力と筆力を駆使し、ピアノの演奏から浮かび上がるイメージを、言葉にのせるのです。それはもしかすると、本物のピアノの演奏すら超えてくる、読書による音楽体験かもしれません。こんな濃密な文章を読めるなんて、自分は幸せ者だ、そんな感情までも湧いてきます。
そして先ほども少し書きましたが、演奏者たちそれぞれの思いや人生が、演奏シーンをより際立たせます。演奏を自然に楽しむ少年。新しいクラシックを作りたい、と理想に燃える青年。
あるいは、けじめをつけるためコンクールに参加した、妻子ある楽器店の店員。子ども時代にCDデビューを果たしながらも、母親の死以降、表舞台から姿を消した元天才少女。
主な登場人物となるこの4人。それぞれの個性と思いが演奏を際立たせ、そしてその演奏の描写によって、それぞれの新たな一面、そして成長を感じさせるのです。
演奏とそれぞれの成長の物語は、車の両輪のようにどちらも必要不可欠なもの。でもこの小説がすごいのは、どちらの両輪も、とんでもない大きさなのに、そのバランスが崩れないことだと思います。どちらかの車輪が大きいものに付け替えられると、もう片側の車輪もすかさず付け替えられるのです。
この小説で登場する風間塵(カザマ ジン)は作中で”ギフト”に例えられます。その言葉の意味は、小説のラスト近くで明らかになるのですが、この小説も同様に多くの人にとって、素晴らしい”ギフト”になる小説だと思います。
第156回直木賞
第14回本屋大賞1位
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一言で、良い。
最初の一フレーズからぐっとこの小説の世界に持っていかれた。
本を読むということは、文字を追っているということだけなのに、こんなにも文字から景色・匂い・音が溢れてくる物語は今までにない感覚。
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文句なしに面白い。クラシック音楽の知識なんて皆無の私でも、素直に面白い、もっと読みたいと思えた。恩田作品にしては明るい主人公たちと、取材力に裏打ちされた丹念な描写。
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一気に駆け抜けて読める、早く次のページをめくりたくなる作品。
音楽という形のないもの、答えのないもの、その場にいる全ての人々の心情を臨場感たっぷりに恩田さんの圧倒的な表現力で描写している。自分がまるでコンサートホールの席に座ってピアニスト達の演奏を聞いているかのような錯覚に陥ってしまった。
ピアノコンクールを舞台にした4人のピアニスト達の物語であり、彼らがお互いの音楽に影響を与え、与えられながら音楽とは何か?自分が音を奏でる意味とは?ということについて真剣に向き合っている。彼らに共通しているのは皆音楽が好きだということ。
自分が人生をかけて熱中できるもの、好きだと思えるものがあるということが素敵だなと思うし、そういうものを持って夢を追いかけている人はカッコイイなと思った。
自分も熱中できるものを見つけ、追いかけていきたい。
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上下巻完結。
うわーーー面白かった…。
ピアノのコンクールを最初から最後まで描ききった作品。
一人の主人公ではなく、コンクールに参加するコンテクストの4人、それに取り巻く友人、審査員等色々な視点から描かれるオムニバス。
読んでいる間、何故かずっとベト7が頭の中で鳴っていました。(出てこないのに)
音楽の表現が詩的で、泣きそうに愛おしい。
読み始めて止まらず、最後まで一気読みしました。
音楽に生きる人たちの葛藤と生き様。
コンクールですが、他人を蹴落としたり嫉妬したりというという対人との戦いではなく、ひたすら真摯に音楽に向き合っています。どのキャラクターも瑞々しい。
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直木賞&本屋大賞受賞作の文庫化ということで読むのを楽しみにしていました。
まず、音楽ってここまで言葉で表現できるんだなということに驚きました。次に、知らない曲も聞いてみたいなと思わせるのはすごいことだと感じました。
芳ヶ江国際ピアノコンクールがどういう結末を迎えるのか、下巻が楽しみです。
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大好きな漫画シリーズベスト3には入る「のだめカンタービレ」
あら、本作品、のだめちゃんだらけだ!千秋先輩もオクレール先生も!
のだめちゃんは漫画だし、かなりデフォルメされてるんだろうなぁと勝手ながら思ってしまっていたのだが、ひょっとするとこんな人達がホントにいるんだわ。
そして、本作品、コンクールのみで終わってしまうの?
続き、続き。
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久しぶりの恩田さん大当たり☺自分的に
音楽が聞こえてくる
蜜蜂の香りがする
遠雷の気配を感じる
素敵でした
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リズムよくページをめくりながら、頭の中で音が流れる感覚がしました。
読み応がえあり、面白かったです。
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作者自身が「面白いのかな?こんな音楽と演奏だけが延々と続くだけの話」と語ったという本書。
実は私もメディアでこの本が紹介されたときに、そう思ってしまった。
世界的にも注目されるピアノコンクール。その一次予選から本選までを描いた作品と聞き、演奏を文章で表現する?どうやって?しかもこのボリューム…。正直手に取る日が来るとは思わなかった。
ところがいざ読み始めると止まらなくなってしまった。コンテスタントたちの個性、来し方、コンテストの舞台裏、そして何より演奏シーンの疾走感の虜になった。
演奏を映像化することで物語世界が幾層にも広がっている。
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久々に夢中になれる一冊(二冊?)に出会えた。
本屋さんでパラパラと本書を見た時、自分には苦手意識のあるクラシック音楽が舞台だったこともありあまり期待はせず暇つぶし程度に買ったのが正直なところ。ここ最近の読書ではあまり当たりが引けていなかったこともその気持ちを加速させ、ダラダラと読み始めた。
ところがここに描かれているのはあくまで天才達の人間模様であり、クラシック音楽というのは背景に過ぎないことが数ページでわかった。そして気がつけば一気に読み進めてしまっていたのだった。
明日朝一番で下巻を買おうと思う。
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2021/05/15再読。
最初に読了したのは2019年6月でした。
先日Amazonプライムで映画を観て、数日サントラを聴きまくった挙句にどうしてもまた再読したくて、あっという間に上巻終了。
恩田さんの本は元々大好きだけど、蜜蜂と遠雷は別格。
読書も大好きだけど、音楽がないと生きていけないと思っているわたし自身にとって、ピアノコンクールに賭ける人たちの物語というのも、堪らんのです。
音楽に関わるからか、それとも天才に惹かれるのか…前回もでしたけど、ともかくあっという間に上巻終了。
ラストも分かっていても、やはり過程が凄く楽しい。
音楽って言語すら超越する。その存在を言葉で表す。そのパラドックスがまた心地良いのです。
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音楽コンクールという題材上、それぞれの登場人物の背景や演奏する曲のことなど、読者に与えられる情報はとても多い。にも関わらず、どの登場人物も魅力的で全員を好きになれそうなくらいだった。
音楽との向き合い方も、コンクールに臨む決意も、本当にそれぞれで興味深い。誰もが、一言では語れない人生を歩んでいるんだ。
もっと知りたい。もっと理解したい。自然とそう感じ、気づけば私もコンクールの会場にいた。
いよいよ、幕が上がるーー。