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論文形式で、主張が明確。
数値データを絶対視し、それを用いる事で組織に説明責任を果たす事、更に、そこから能力給や評判、ランキングを得る事を信念とする「測定執着」思想の危うさについて、指摘する。
まず、測定行為自体に限界がある。例えば、簡単に測定できるものしか対象としない。また、数字を良くするために簡単な目標のみを設定しがちである。あるいは、目標値を下げようとするインセンティブが働く。実績数値を見栄えを良くしようと操作し、最悪は、達成する目的にとらわれすぎて不正行為に及ぶ。ここで言われるのはあくまで可能性の話だが、しかし、誤ったKPI設定による悲劇は十分起こり得るし、実感がある。医療行為の成功率を設定すれば、「上澄みすくい」で成功率の高い患者のみ手術されるという事例が挙げられる。恐ろしい事だ。
また、測定による弊害が結論として挙げられる。測定可能なものに労力が割かれて目標がずれる事。短期的になる事。効用逓減、規則の滝、右に報酬を与える、リスクを取らなくなる、イノベーションの阻害、協調や目標共有の阻害、仕事の劣化など。よく分かる。例えば、コストダウンの進捗報告の資料印刷の誤字に気付き、何百枚も再印刷するなんていう誤謬、欺瞞も目にする事になる。
KPI管理が流行っている気がする。それさえ見ていれば良いかの誤解がある。勿論、組織には何かしらの羅針盤は必要だが、これらの設定は余程慎重さが必要。個人としても、刷り込まれた偏差値教育や出世信仰、拝金主義、価値倒錯等に気を付けなければならない。価値観が歪み、自ら誤った劣等感を植え付けてしまい、人生が楽しくない。
趣旨明確ゆえに淡白ながら思考させる良書。また、この本で初めてGoogleのngramの存在を知れた事も読書の収穫だった。
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パフォーマンス評価の功罪。タイトルどおり。そのメトリクスに価値があるのか、その測定がもたらすデメリットを考える必要あり。
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組織の目標設定を継続的に考えるにあたり、参考にするため読みました。「計測できないものは制御できない」という思想に偏りがちだったことを自覚できました。定量目標がダメなわけではなく、測定執着がダメ。測定はその対象に影響を及ぼすし、利害関係が生じると歪む。測定自体のコストがそのメリットを上回る。本当に達成したいことは何か、そのために必要な手段かを絶えず考え続けようと思いました。
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表紙の「業績評価が組織をダメにする根本原因を分析」という文句に惹かれて購入.
データを集め,分析し,カイゼン,というループは今では当たり前の行為なのだが,その行き過ぎに警鐘を鳴らす.
我が大学も,まさにそうで,学部別の就職率の順位をつけて予算配分したりする.ただそのリストをよく見てみると,みんな進学率が95%以上で,学部間に優位な差はない.本書で挙げられる典型的なダメ統計主義(統計執着,というらしい)である.
本書には,測定が有効に機能する例と,その5倍ぐらいの無益,いやむしろ有害な例が挙げられている.
多分に著者の主観(恨みつらみ?)が色濃いのであるが,行き過ぎた統計主義について,事例を豊富に紹介して,その問題点を解説した上で,最終章では「いつどうやって測定基準を用いるべきか −チェックリスト」と結んでいる.経営者や管理職の人は必読.
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本書で取り上げられている国は、米国や英国などの欧米諸国中心ですが、様々な実績評価が企業だけでなく病院や学校、軍隊など幅広い領域に拡大し、それがある種の機能不全や弊害をもたらしている、という指摘になります。なかでも一番わかりやすい指摘は、実績評価(計測)に費やされる時間とコストがばかにならず、肝心の本業に支障が出ているというものでしょう。これなどは目的と手段が転倒している好例です(実績評価自体が目的になってしまっている)。そしてそれよりも深刻な指摘は、実績評価が個々人の評価(報酬、昇進)と紐づけられてしまうと、腐敗や数字操作、また評価指標以外の要素が不当に軽視されてしまうなどの(重大な)副作用を生み出してしまう、というものです。
後者の指摘は日本でも事例に事欠きません。賃金統計の意図的な操作のように現政権に不利になりそうな統計の数値操作、また企業の利益操作などがその例として挙げられますが、実績評価という「それ自体は害のない行為」が人間の評価に紐づけられた瞬間に腐敗していく可能性がある、ということです。その意味では、終章に書かれていた「測定される対象が無生物に近ければ近いほど測定はしやすい。・・・測定対象が人間の行動に関するものであればあるほど、測定の信頼性は低下する」という言葉は意味深でした。ハーバード熱血授業で有名なマイケル・サンデルは、「お金は道徳を腐敗させることがある」と述べていますが、本書の内容を織り込んで言い直すとするならば「人間は金銭評価されると腐敗する可能性がある」ということだと思いました。
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2023年6月「眼横鼻直」
https://www.komazawa-u.ac.jp/facilities/library/topics/2023/0601-14360.html
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評価のための計測が結果的に教育のレベルを下げてしまったりといった、計測の悪い部分をかなり明瞭に説明した本。成功した医療の分野の話にも触れていてバランスも取れているが、一貫して計測を悪とみなす観点に貫かれている。