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老中・水野忠邦の改革が始まり、苛烈な奢侈取り締まりで江戸庶民たちの心も暮らしも冷え切っていた。幼なじみの小夜と所帯を持ったばかりの蒔絵職人・孝太も、すっかり仕事が途絶え、苦しんでいる。そこへしばらく連絡もなかった幼い頃の友達が、ご禁制の仕事を持ち込んできた―。切ないほどの愛、友情、そして人情。長塚節文学賞短編小説部門大賞を受賞した表題作『しずり雪』ほか、三編を収録。珠玉の時代小説はどれをとっても人生の哀感に心が震える。
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今度は安住さん、読んでみました^^ “大当たり”でした♪ 私の好きな作風です。
人情味溢れる話、藩の大事に係ることで父を亡くした息子の話、どれも心に沁み入る短編集でした。
養生所の見習い医者の淳之祐や岡っ引きの友五郎が他の短編にも登場しているのも、話の繋がりはないけれど嬉しい。どの話も好き!
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再読なのですが、なぜか私のデータベースの中に初読の時の感想が入っていませんでした。
調べてみると「やっぱり本を読む人々」の中に書評が残っていました。かなり感激して書いていますが、今回読んでもまさしくその通りという感触ですので、そのまま転記します。
====2011年2月6日===
とても良いです。
「しずり雪」「寒月冴える」「昇り竜」「城沼の風」の時代小説短編。
脇役に同じ人物が登場しますが、主人公や内容は異なるので。連作短編という雰囲気ではなく、それぞれ独立した話です。
表題の「しずり雪」は、晩年の熟成しきった山本周五郎を思い起こさせる、見事な市井もの。でも、女性らしい優しさがあり、模倣ではない独自の感性が光ります。
最後の「城沼の風」は藤沢周平の「蝉しぐれ」的な武家物。運命に翻弄されながらも、凛として生きる若い武士とその妻を見事に描いています。
世は時代小説ブーム。本屋にはこれでもかと並んでいますが、濫造で底の浅いものがほとんど。
それらとは一線を画し、乙川優三郎さんなどと比肩する作家さんのようです。
逆境の中でも、どこか明るさのある物語なのも好感が持てます。
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決して主役ではない岡っ引きの友五郎親分が顔を見せる4つの連作短編。短編自体あまり好みではないのですが、この中では中編よりも表題作の「しずり雪」が心に残りました。真っ当に人生を歩んでこられなかった幼馴染が、最後に友のために守り切った人としての筋に打たれました。