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科学者の人たちには常識なんだろうけど知らなかった!という話も多くいろいろ勉強になった。そこは敢えて反論しなくても良いのではと思うところもあったけど、熱い思いが分かる。
澄んだ目で、というのが心に残る。
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著名な天文学者による科学者・技術者向け反戦論。突き詰めるとそれはそうなんだけど,やはり一面的な見方だよなあ,という感想。
それと感じたのは,この本は全く当事者への取材というのをしていないためにこういうことになったのかなってこと。
机上で長年の持論を更に煮詰めて世に出しただけ,という感じが否めないのは,やはり弱点なんだろう。
このくだりなど,たとえ実績ある立派な科学者でも,持論に有利なように事実をねじ曲げてしまう良い例かも。
「劣位になった兵器は一度も使われないまま廃棄される…自衛隊が爆撃機を何年かおきに更新しているのが典型」p.79
何の話だろう?自衛隊が爆撃機を運用したことなんて皆無なのに「更新」とは謎すぎる。
日本の支援戦闘機が(F-86F→)F-1→F-2と更新されたことだとしても「何年かおき」には到底ならない(就役F-86F:56年,F-1:78年,F-2:01年)。こういう杜撰な記述が散見されるようでは説得力も薄い。
聡明な人間でも確証バイアスから逃れるのは難しいのだな。
ドローンの「人道性」について,“自国の陣営の被害の可能性をなくし、もっぱら敵のみに被害を与える”p.66と批判しつつ,“敵をせん滅する能力が上回るのなら、そこに多少危険性が残っていてもかまわない。武器の扱いで死傷者が出るのは当然としている”p.231というのは矛盾のような気もしたけど,そうでもないか。
在沖米軍の事故や4月のF-35A墜落なんかが後者なんだろう。もちろん当局は死傷者出るのを当然と考えてはいないけど,そのように見えるというわけか。池内先生はそもそも防衛目的の武装をも認めない立場なんだから,見解の相違は避けられるわけがない。
「自衛隊は国土防衛隊に改組して丸腰になり、あらゆる国際紛争や国家間の対立は交渉と話し合いによって解決すべきだと考えている」p.213
丸腰の「防衛隊」って何だろう?
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前半の1~3章はこれまでの知識を確認する形で目を通したが、第4章で議論している「安全保障技術研究推進制度」は重要な考察だと感じた.現役時代に多少の接触があった経験からすると、成果の公開について非常にハードルが高いと考える.p156での議論は小生の疑念をほぼクリアしていると感じた.科学者にとって情報の公開を制限されることは、手足をもがれた状態に置かれることで、非常に考えておく必要のある事項だ.この点に関しては米軍のスタンスとの比較が欲しかった.というのは、米国の科学者はかなり機密に属する事項も、データを無次元化する等のテクニックで、公開している.原爆に関する資料もかなり部分が公開されている.防衛省が保有している技術的な資料を公開するステップは未だ整っていないのではないか.この当たりの議論も加えてほしかった.
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岩波新書でいろいろと書いているが最新版である。ヨーロッパやアメリカの歴史的なことも豊富に書いてある。それだけではなく、日本のことについても軍事研究に手を染めた科学者のことも書いてある。
大学のFD研究でぜひやるべき内容である。
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科学者と銘打っているものの、それは自然科学だけではなく人文科学の学徒にも薦めれられる一冊である。
私たち科学者は、専らその活動のためを考えてややもすれば、その資金提供をする団体の理念や活動というものにあまり多くを払わず、自らの活動のために目先のものを求めてしまっているのではと感じたものだった。
科学者は、我が国のひいては世界の科学というものを一歩でも前に進めることを、期待されている人間であるということを今一度胸に刻み込むべきと痛切に感じた。
それは直接の技術に関わるような研究をする自然科学だけではなく、人文科学の従事する私のような科学者(あえて科学者と称させていただきます)も心得ておくべきものであると。
学問のあり方、大学はそもそも世間からどのような期待をされているのか、我々はなぜ学ぶのか、何を世界へ残すのか、ということを考えている人に手にとってもらいたい一冊だ。
(読了に4日)
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https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000081704
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理工系の学生・研究員・大学教員はぜひとも読んだ方がいい。
研究倫理というと、研究不正に関するものが多いが、本書はタイトルの通り軍事研究に注目したもの。大学院の授業でもこういった話をされることはなかったが、知っておいた方がいい内容が多かった。
偉大な成果を残したハーバーが、率先して毒ガス研究を行っていた話が特に衝撃的だった。
科学者が戦争に協力してきた歴史、軍事研究に携わった科学者が言い逃れする常套句からはじまり、世界的な軍縮の流れ、軍拡路線に走る日本、そして「科学者は軍事研究研究に手を染めるべきではない」という結論に繋がっていく。
終章を読み終え、暗澹たる気持ちになった。
「武力による他国への侵略は起こらず、対話を通した平和維持が可能である、そのため軍備を増強して威嚇する必要も軍事研究を行う必要もない」というのが筆者の主張だ。
だが、2022年現在戦争は存在している。軍事研究を進めて威嚇し続ける国もある。「各国と連携して〜」とはよく見る文言だが、果たしてそれにどれほどの効果があるのだろうか。
かと言って科学者が率先して軍事研究を進めるようになれば、他国も負けじとより性能の高い武器を手にするようになるだろう。
今後科学者はどうするべきか。無力感を覚えた。
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現代日本における「軍学協同」を徹底批判する立場で論陣を張ってきた著者による警世の書。
「デュアルユース」「ミックスユース」を隠れ蓑としながら、防衛予算を使った研究を是認しようとする風潮に対して厳しい問題提起を行っている。とくに第一次・第二次世界大戦における科学者の戦争協力の経緯と、国際社会における戦争違法化に向けた動向とが背馳してきたという指摘は決定的に重要。著者の見立てに従えば、科学者たちは一貫して、国際紛争の解決手段として「戦争」を認めない、という理念を裏切る方向で行為してきたことになる。
また、2015年に導入された防衛装備庁による「安全保障技術推進制度」にもとづく研究の問題点が詳しく記されたことも勉強になった。防衛装備庁はじつに巧妙に、ホンネとタテマエとを並記しながら、研究者の「良心」が痛まないような甘言を散りばめながら、研究者・研究機関を取り込もうとしている。「学」が「軍」の召使いにならないように、というのは、もちろん人文系の研究者にも当てはまる。
なぜ、何のために学ぶのかという根本に立ち返って、自らを省みるところから始めなければならない。