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残業税を考えたことがなかったので、まずは普通に勉強になりました。そんな中でそれぞれのエピソードが絡み合いながら、残業税に対する様々な脱税をしていく会社。
たかが残業税、されど残業税、考えさせられます、
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残業すればするほど税金が増える「時間外労働税」が導入された社会。社会全体の残業時間は劇的に滅る一方で介護や教育など、長時間労働の現場で働く人々に起こる様々な事件。彼らのために奮闘する残業税調査官たちの活躍を描くお仕事ミステリ。
本シリーズ第3弾。
過去2作のレビューにも記したが【残業に税を課す】という発想が面白く私のツボを押されまくった末、3部作読破に至った。
シリーズの中で最も労働者にフォーカスしていたため、共感ポイントが多く感情移入も出来て本作が一番読み応えがあった。
今回、題材で挙げられていた職種は介護職、教員職、研究職と、元残業税調査官で法律事務所と業務委託契約したコンサルタント職。
いずれの職種も私は未経験ながら、業態より察することの出来る課題や実態はとてもリアルであり、かつ現代の社会的問題である働き方改革が相まった構成は、残業税というフィクションを交えても違和感がなかった。
残業税最大の目的は何か。
過重労働を無くすためである。
過重労働を無くす目的は何か。
長時間労働やストレス過多が原因による疾患、自殺、過労死を抑止するためである。
また疾患も身体的要因だけではなく、精神的要因も年々増加傾向にあるとのこと。
本作で登場する労働者の共通点としては『向上心・プライドが高く、責任感が強い』ことだ。決定的に、徹底的に性根が真面目なのである。
かく言う私も以前は恐らく上記に該当する部類だった。結果を出すことにこだわり躍起になり、徹底した成果主義思考で働いた。目標を達成するたびに役職もあがりミッションサイズも広がり更なる高みを目指した。月3桁残業に到達する月もあった。数年間は有給休暇を使ったことも、何より家族を顧みることもなかった。すべては自身のキャリアアップと家族の生活を豊かにするため。そう信じて疑わなかった。
そして時は過ぎ、紆余曲折あり、今の私がいる。
現代、そんな働き方がまかり通る時代ではなくなっている。働き方改革推進法により、労働者の過重労働防止と健康保持増進のための取り組みが強化されている時代。よって著者が着眼した残業に税を課す【時間外労働税】は、今の社会の取り組みにマッチした建設的なアイデアだと思う。
どうか労働者にとって多様性と心身の健康が第一に保たれる社会が実現することを切に願う。
どうやら現時点では本作が最終作らしくとても残念。
いずれ続編がでることを期待して、明日からも勤しもうと思う。すべては自身と家族のために。
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【収録作品】 プロローグ/ボランティア・ケア/休息なき教育/象牙の塔の残業/マルザの憂鬱/エピローグ
今回の舞台は、介護、私立学校、大学。そして、マルザの邪魔をする悪徳法律事務所との闘い。
すっかり主役は砧に移り、やりたいことをやりたいようにやる働きぶりが小気味よい。
法を守りつつできるだけ人を守ろうと奮闘する現場の人間と、彼らを使い捨てのコマのように扱い、裏取引をする上司たちの対比もくっきり。
労働者教育は、高校でぜひともやってほしいと思う。
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「残業税」の3冊目。
最初の巻はさほど面白いと思わなかったが、2冊目3冊目とまずまず楽しく読めるようになった。
残業税そのものに焦点を当てるのではなく、「残業税が導入された社会」という設定の中で殺人事件の謎解きや社会派ミステリーにしたのが良かったみたい。
ということで、今回は前作で国税局の助っ人として動いていた砧が特別監査室に配転になり企業に脱税を指南する悪徳法律事務所を追う話に、これまでも登場した矢島と西川のコンビが介護や教育の現場での残業税の脱税摘発に動く話を絡めて進む。
介護職や教師の仕事は大変な割には労働環境の改善がなされず、そこで働く人々の使命感や責任感におんぶにだっこになっている、そうした現場の状況やそこで働く人の悩みがちゃんと描かれており、作者が現在の労働環境を憂い必要な人員配置がなされサービス残業などがない社会を強く望んでいることがお話を通じて良く伝わった。
私もいまだに昭和な働き方をしているので、残業税が導入されたら即刻マルザの餌食になるだろうと自覚する。