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ベタな題名だと思ったが、本書の主題を辿っていくとこの表現しかないのかなとも思う。
当時の仏絵画界の本流からはずれ、異端とされた印象派の画家たちを最初に評価したのは米国など非欧州の実業家たちであり、その中に松方幸次郎がいて、晩年のモネとも交流があったことは日本の誇りとしていいだろう。
戦後フランスで発見されたコレクションのすべてが返還されなかったことは残念だが、そこに関わった人たちの数奇な巡り合わせや人生に思いをはせる。
ロンドンで焼失された絵画が現存していたら、と思ってしまう。
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「楽園のカンヴァス」が私の中では最高傑作だったが、どうやら本作に軍配があがったようだ。徹頭徹尾マハワールドに浸れます。今更直木賞なんてどうでもいいが、やはり作家にとっては売上が違ってくるだろうから本作で受賞されることを願っております。
現在、国立西洋美術館開館60周年記念で開催中の「松方コレクション展」の完全なるオマージュ作だが、読む前に観に行ってしまい、今は損した気分です。これからの方は是非本作を読んでから観に行かれることを強くお薦めします。展示れている作品が違う魅力を放って見えてくるはずです。当然私もあと何回か観に行くつもりです。
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どんな作品でも、小説でなくてもそうだけど、やっぱり作り手の内にあるものって出るよな〜と改めて思う。
原田マハさんの作品は、特にアートをテーマに書かれているのもは、アートに対する愛がストレートに出てると毎回思う。
美術館を作るために奔走する登場人物たちも、熱いんだけど、タブローに対する想いが何より熱い。
そして、ゴッホやモネの名画が、目の前に本当に存在するかのような描写に相変わらず引き込まれてしまう。
松方コレクション展、行かなくちゃ!と思った。
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いゃ〜、ワクワク、ハラハラ、ドキドキ面白かった。
愚かものたちの、、、の題名に惹かれて読み始めたら、松方コレクションの物語。
奇しくも国立西洋美術館で松方コレクション展をやっているのを知ってびっくり。
さらに2016年に発見されたモネの《睡蓮、柳の反映》が展示されていることに驚いた。
この物語は史実に基づくフィクションということだが、フィクションとは思えない凄さがある。感動した。
印象に残った文章
⒈ 松方コレクションがフランスではなくて日本にあることこそが、
フランスのためになるのだ。
⒉ 松方さんは、絵ではなく人を見て、絵を買うところがある。
⒊ そして、知らされた。自分が心ではなく頭でタブローを見ていたことを。
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どこまでがドキュメンタリーなのかわからないが、松方幸次郎、日置釭三郎、鈴木商店ロンドン支店長高畑誠一、と当然吉田茂も実在した人達だ。
しかし、語り手として登場する田代雄一という美術史家は日本における西洋美術史家の矢代幸雄という人物をモデルとした架空の人物とのこと。
国立西洋美術館の成り立ち、そこに収められた幸次郎が集めた作品について知らしめてくれる作品だった。
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松方コレクションの返還と西洋美術館の建設に奮闘した人たちの熱い物語だ。
でも、自分は科学博物館は何時間いても飽きないけど、美術館は長時間いられない人間です。
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本文P273より
タブローが松方幸次郎という不世出の実業家の心を動かし、彼の生き方を変えようとしている。
美術の持つ底知れぬ力に彼は驚き、そのすばらしさを、「こんな時世」だからこそ日本国民に伝えたいと願っているのだ。
ー役に立ちたい。
田代は切実にそう思った。そのためにはどうしたらいいのか。
ータブローだ。
名画を傑作をみつけて、それを日本に持ち帰ってもらうのだ。そのためにこそ自分は尽くしたい。
以上抜粋。
ラスト数ページでは、感極まり、涙が止まりませんでした。
閑話休題。
この作品を読んで、ささやかですが、私も自分の美術館を作りたくなりました。
以前にとある企業からいただいた超豪華なプラスティック製の、オランジュリー美術館の特大カレンダーが家にあり、絵の部分だけ切り離して飾れるようになっています。
絵が6枚あるのですが、ルノワールの<ジュリー・マネ>という三毛猫を抱いた少女の絵だけは、以前から飾っていたのですが、他の絵も飾ろうと思いました。
モネの<睡蓮の池、緑のハーモニー>は緑が鮮やかでとても美しく、ゴッホの<銅の花瓶の花(あみがさ百合)>は筆のタッチが素晴らしく色彩も豊か。シスレーの<雪のルーヴシエンヌ>はとっても静謐で美しく、絶対飾ろうと思いました。モネとゴッホは特にマハさんのこの作品他の影響で、お気に入りになりそうです。
絵<タブロー>とは人の心を幸せに豊かにしてくれますね。
それに気づかせてくれたこの作品とマハさんには感謝の気持ちでいっぱいです。
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国立西洋美術館建設のきっかけとなった松方コレクション。実業家の松方幸次郎が、「ほんものの絵を見たことがない日本の若者たちのために、本物の絵が見られる美術館を創る」ことを目的として買い集めた美術品の数々だ。バブル期に金に物を言わせ世界中から美術品を買い漁っていた人々とは志が違うのだ。そして彼を支える人達の存在が胸を熱くする。開催中の展覧会に早く行きたくなった。
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アートには人の心を動かす力がある。
それは世界共通の文化。
かつて西洋美術館の常設展を鑑賞した時、
なんて素晴らしい所蔵作品の数々なんだ‼️
と感銘を受けたのを覚えています✨
その開設のいきさつをよく知りませんでしたが、これを読んで松方幸次郎という1人の実業家の情熱の結晶である事を知り、またまた大感動しました
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直木賞候補作。文章のテンポ感がこの作者の魅力であるとおもうのだけど、今作は多少冗長な面があったかも。男たちの人間ドラマをもっと掘り下げてほしかった。
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日本に西洋美術専門の美術館を創る!
今では当たり前のように、日本に居ながらにして見ることのできる西洋美術。
我々が本物の西洋美術に出逢えることは奇跡的なことだった。
当時、白黒の雑誌の切り抜きでしか見ることのできなかった西洋美術。
実物の艶やかな色彩を日本にいる人達にも見せてやりたいーー男達の果てしない夢は広がる。
大震災、不況、戦争等あらゆる災厄が男達の志を次々に折っていく。
けれどタブロー(絵画)に魅せられた男達は決して諦めない。
「僕はタブローのことばっかり考えて夢中になっている、どうしようもない愚かものです。ほかには、なんにもない。…それでも、とても幸運な、幸福な愚かものなんだと思います」
愚かもの達のお陰で今、我々は本物のタブローと、画家のタブローに込めた想いを体感できるのだ。
そして我々読者は、原田マハ、という本物のキュレーター兼小説家のお陰で、この作品に出逢うことができた。
それはとても幸運なことだ、としみじみ嬉しい。
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「暗幕のゲルニカ」と同じく戦争と文化財にまつわる歴史や人々の想いを強く強く感じることの出来る良本でした
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松方コレクションについて,その成り立ちから国立西洋美術館に収められるまでの事情を田代雄一の目を通して語るという仕掛け.物語としても面白いのはもちろん何となく知っていた松方コレクションの詳しい経緯についてわかりとても勉強になった.結果論になるが早々と日本に渡っていたらきっと散逸していただろう運命の力に松方幸次郎の祈りを見た.そして日置氏の献身が忘れられない.
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もう、、素晴らしすぎて胸が熱くなりすぎた。
現在進行形中の文化芸術たちというのは、強烈な力が作品にプラスされる。
例えば、歌手のコンサートやスポーツや演劇やモノ造りでもなんでもいい。
目の前で繰り広げられる圧倒的なライブ感そのものが、熱狂をもっとも生み出す源泉になる。当然ですね。
だから、ガツンといいのだと思う。
過去の芸術に向き合うとき、「今、そこに直接感じれる」という肌感覚が、どうしても如実に薄まっちゃう。
ライブ感を感じにくく、「想像力」や「共感力」の様なものにスイッチが入らないと、脳が痺れてくれにくい。
絵画(タブロー)もそう、クラシック音楽もそう、その他の芸術なども含め全て「ライブ感」だけはどうしても劣ってしまう。
残念なのだとも思うし、だからいいという事もあるとも思う。
~文中~
「あの絵は傑作だ。色がどうとか、理屈じゃない。モネが、あの大画家が、もうよく見えんのに、必死に絵筆を動かしている様子を見ていると、わしはなんだか、わけもなく泣けてくる。そうやって、画家がおのれの全部をぶつけて描いた絵を、傑作と言うんじゃないのか?」
この、松方のモネに対するライブ感を表現しているところが、たまらなくイイ!!
このライブ感・シズル感が溢れる文章を読んだとき、過去に書かれた絵画が、まさに描かれた瞬間に、その現場で一緒に見ているように思わせてくれる。感じさせてくれる。脳に直接何かを訴えてくる。
現在進行形の好きなアーティストのライブも当然いいけど、昔にいた芸術家達も、結局は同じマインドなんだ。
「おのれをぶつけている」という事を、作品から感じれるようになれると、その製作者と作品を同時に好きになるんですね。
それをあの手この手で掘り起こしてくれる、原田マハさんの文章が、好きなんだな~、と今回も改めて思いました。笑
p.s.
フランスに残った松方コレクションをいつか見たい。
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4.5
原田さんは、やはり絵画ものを扱った時が一番輝いている気がする。
そもそも、自分の中の読書ブームのきっかけとなったのが「楽園のカンバス」だった。
今回も
まるでモネの庭園に、あるいはセーヌの川沿いに、ワープしたかのような・・
風や匂いや色に、手を伸ばせば触れられるような
そんな世界に浸る事が出来ました。
絵の具を操るか、言の葉を操るか・・
辿り着く所は同じなんだなぁ
第一次世界大戦から第二次大戦の狭間。
伝説ともいうべき松方コレクションの創生までの道のりと、人生をかけて護ろうとした人々・・
そして敗戦によって搾取されたコレクションの奪還に向け奔走する人々の物語。
◯田代雄一・・日本を代表する美術史家。
物語中唯一の架空の人物。
矢代幸雄がモデル
◯松方幸次郎・・第四・六代内閣総理大臣・松方正義の三男。川崎造船所初代社長。世界一流の西洋美術館建設の夢実現に向け莫大な私財を投入。
◯吉田茂・・バカヤロー解散で有名な総理大臣。外務省生え抜きの外交官。戦後復興に尽力。
◯日置釭三郎・・日本空軍の戦闘機開発に関わっていたが、松方に見出され片腕に。
川崎造船の飛行機開発が頓挫し、コレクションの守護者に。
物語のキーマン。
◯成瀬正一・・十五銀行頭取の長男。フランス文学者で、芥川龍之介・菊池寛らとも関係が深い。川崎造船創始者の孫・福子を妻に持ち松方コレクションに強く関わる。
◯西村熊雄・・戦後初のフランス大使。
◯萩原徹・・日本政府在外事務所所長。
◯ 雨宮辰之助 ・・文部省事務官。松方コレクション返還交渉に尽力。