庶民を苦しめる悪の権化
2012/02/03 00:52
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投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2月1日付け朝日新聞に「インフレ目標01年に攻防 日銀議事録公表」の記事がある。
このたび公表されたのは、2001年後半の金融政策決定会合の議事録。記事から抜粋・編集する。
『7月の会合において、政府側から出席した竹中経済財政相が「インフレ・ターゲットを持っている国はたくさんある」「日本ではできないのか」と投げかけたのに対し、日銀政策委員の多くが「(物価を)下から上にあげるのは、そうできるものではない」と反論した。
インフレ目標に1人だけ積極的だった中原伸之委員は8月の会合で「1年半後の03年に物価上昇率をゼロ%以上とすることをターゲットにする」と提案したが、当時の速水総裁が9月の会合で「インフレ・ターゲティングが特効薬となるかのような論調もあるが、物価目標だけを論じることは生産的ではない」と結論した。』
この超長期的なデフレ不況の犯人の一人、主犯格に日本銀行をあげる論調は本書をはじめとして数多い。「日銀不況」と名付ける者もいる。
この記事で日銀の犯行を裏付ける証拠がまた一つ明確となったようである。
この後、日本銀行の総裁選びにおいて、記事にある中原委員の名も取りざたされたが、小泉首相があっさりその目をつぶす。その理由も、この記事で明白であろう。
もう一人の犯人登場である。
ここで中原委員が提案した「物価上昇率をゼロ%以上」といった、本当に「ささやか過ぎる」提案でさえ、日銀は採択することはできなかった。
今の経済学の常識から言って、インフレターゲットがデフレ対策に有効であることは明らかであるのに。
日本銀行の本音はどこにあるのか。この時、速水総裁が言ったという「物価目標だけを論じることは生産的ではない」こそ、全く意味も根拠も不足している。何が言いたいのか。
その後の、日本経済の状況はご存じの通り。
本書より。
『ゼロ金利や量的緩和の解除を急ぐ日銀の金融政策が、デフレ不況を継続させ、内需の拡大を抑制したため、結局は外需頼みの不況脱出しかなかった』
日銀が体質的にインフレを嫌うといった解説もよく見かけるが、ことはそれほど単純なものではないようだ。
「内需拡大の抑制」「外需頼みの不況脱出」。これが、その後に続く、おかしげな好景気となる。外需に依存した企業収益の向上の前で、一般労働者の手取り賃金はどんどん下降する。
この差額は、どこに、誰の手に渡っているのか。
日本銀行の不可解な行動の本当の意味は、どうもここらへんに潜んでいるようだ。
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岩田氏による猛烈な日銀批判本。そもそも日銀の総裁が東大「法学部」(経済学部ではなく!)出身者で占められてる上に、日銀政策委員会の人選も産業界枠や学者枠、女性枠を設けての選出といったいかにも官僚的な選出で「経済・金融への高い見識を持つ専門家」という前提すら無視されてて意味不明。金融政策も極度にインフレを畏れデフレの悪影響を軽視しており、失敗ばかり。日銀の目標であるはずの物価安定についても特に目標が定められてないせいで「総合判断」という日銀用語を駆使して周到に責任逃ればかりしてる、、、といった内容。ただ、批判だけに終わららず、「政府はインフレ目標を設定して、日銀の定量目標とするべきだ」という「日銀改革」を提言してる。総裁の出身や政策委員の人選は「マジかよ!」と思うし、日銀に目標値を定めて日銀を国民がガバナンスできるようにしろ、という主張は大いに納得。あとは反リフレ派から提起されてる「どうやって人為的なインフレを起こすのよ?」という批判に応えてくれると嬉しかったかな。
経済学の入門書ではないので、マクロ経済学の基礎知識や中央銀行の役割についてはある程度知っていることは前提の本ではあるけれど、日銀の経済政策のカラクリについて知りたいなら読んでおいて損はない本。ただ、民主党が野党時代にやらかした副総裁人事をめぐるゴタゴタを見てると、民主党政権下でもまともな人選が行われるとも思えないんだよね、、、やれやれ。
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大蔵省、財務省、日本銀行、みんな東大法学部出身者。
経済学部じゃダメ。法学部の前例主義が大切、官僚だから。
勉強したことが自慢じゃなくて、勉強しなくてもここまでえらくなったことが自慢。日本の未来も暗いね。
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現在の日銀が抱える問題点を整理・列挙し、著者の意見としての解決策まできちんと示した本。非常に納得ますが、インフレターゲットについてはちょっと疑問が残りまる。それを除いても今読まれるべき本。
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日銀に真の説明責任を求める。日本では国民が日銀をガバナンスする仕組みが存在しないことが問題である。デフレでは絶対に経済は回復しない。日本でも政府がインフレ目標を設定し、国民は日銀がこの目標を達成できるようガバナンスし、その政策を信用しなければ、適切なインフレも経済成長も実現できない。という本。
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日銀も官僚と同じく前例主義である実態がよくわかった。言われてみりゃ、経済学部出身者でなく法学部出身者が大半というのはおかしい。やっぱり責任は取らないけど大きな権利を持ってる組織はだめだなー。
デフレがなぜ悪いかも良くわかった。
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狂乱物価の反省にとらわれ、インフレを徹底的に嫌う日銀の政策を批判
また、経済学をマスターしていない者が意思決定にかかわっている事実を欧米の中央銀行と比較して批判している
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[ 内容 ]
日銀の責任を問い直す。
なぜデフレを怖れず、利上げを急ぐのか?
もっとも信頼される学者が金融政策の病根に迫る。
[ 目次 ]
序章 日本銀行の金融政策は信頼できるか
第1章 どんな人が金融政策を決定しているのか
第2章 日銀の金融政策で大不況を脱出できるか
第3章 責任逃れに使われる「日銀流理論」
第4章 平成デフレ不況をもたらした金融政策
第5章 日銀はなぜ利上げを急ぐのか
第6章 日銀に「インフレ目標」の錨を
第7章 日銀改革の勧め
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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本書の概要は次のとおりである。
日本銀行(日銀)の金融政策は前例主義を原則とする東京大学法学部卒をトップとする「官僚」によって運営されており、独特の「総合判断」に基づく裁量的金融政策をとっているが、それでは今の日本の大不況からは脱出できない。日銀のゼロ・インフレ政策はデフレ不況をもたらすとともに、過度の円高をもたらした。日銀は金融政策の達成目標を曖昧にしたまま「総合判断」という名の裁量で金融政策を運営しているため、国民は日銀の金融政策に対して、真の意味での「説明責任」を求めることができない、という点に問題の根源がある。成果を出しているインフレ目標を採用している国を見習い、日本でも、政府が日銀の達成すべきインフレ目標を決定し、日銀を国民がガバナンスする仕組みを作れば、日銀の金融政策は国民に信頼されるようになり、その結果、日銀の金融政策の成果も格段に改善されるだろう。
本書の内容は、一応筋は通っているし、それなりの説得力はあると思うのだが、自分がインフレ目標政策に懐疑的なこともあり、十分に納得できたとは言い難かった。例えば、高いパフォーマンスを発揮しているインフレ目標政策を採用している国の多くは、高インフレから低インフレへの移行に成功したものであって、日本のようにデフレから低インフレへの移行を目指す場合とは状況が違うのではないか、日銀の政策決定が経済の非専門家で決められていると指摘しているが、岩田氏が特に批判している白川総裁や翁氏は経済の専門家なのではないか、政府に「金融政策の目標設定」を行わせることは本当に妥当なのか(政府こそ、経済学的観点でなく政治的な観点から意思決定しがちなのではないか)、といったような疑問点が浮かんだ。
また、これは後知恵的な批判だが、岩田氏が実際に日銀副総裁に就任して以降、本書に書かれているとおりのことを実践しているとは思われないことは確かである。
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日本銀行が日本経済に与えた影響や、日銀の取るべき方針について論じた本。
結論から言えば、日銀の問題点はプラザ合意以降、円高・デフレ容認(金融引き締め)の方針を採用したことに尽きる。そのため、内需が冷え込んで産業空洞化=地方経済衰退を招き、外需に依存する経済体制になり、「失われた10年」を迎えることになった。
では、なぜ日銀はこのようにデフレを恐れず、インフレを過度に恐れるようになったのか。著者はその原因を速水優総裁の発言に求める。曰く、昭和恐慌の際、高橋是清蔵相が日銀に国債を引き受けさせたため、戦後の国債処理の際にハイパーインフレを起こすことになった。
しかし、実際は1936年に高橋が今度はインフレに対処するため日銀引受をやめて軍事費削減を図ったところ、二・二六事件で青年将校に暗殺されました。そのため日銀引受が続き、戦後の物価統制令を布いても物価上昇が止まらずハイパーインフレが起こった。このように、ハイパーインフレの原因は日銀引受ではなく政府と軍部にあったのだ。
著者は日銀内部の問題にも言及している。総裁をはじめとした政策委員会には金融政策失敗による引責辞任はないし、そのメンバーの選考基準も「経済・金融の高い識見」を有するものとは必ずしも言えない。業界・学界の代表者が中心になっている。「日銀の独立性」を維持するために政府の方針に同調しないこともあるが、単なる「反対のための反対」になっていることも問題視されている。
そこで著者が呈示する改革案は
・責任を問われるインフレ目標設定
・日銀の政策監視・評価を行う委員会の設置による金融政策の透明化・明確化
というシンプルなもの。データも多く提示されており、文章も読みやすいのでお勧めしたい。
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日本銀行のガバナンスの在り方、デフレを防止できなかった理由、そしてインフレ目標など金融政策における議論を新書版でまとめた作品。特に、重要なのはインフレ目標とガバナンス設計がつながっているということの確認であり、「独立性」の意味合いについてきちんと理解することが可能になる一冊である。
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「東京大学法学部は嫌いだ」という結論の本でしょうか。諸外国の中央銀行幹部との学歴比較はよく聞きますが、ここまで著者が学部にこだわる理由がわかりません。。
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本書は、現在リフレ派の総帥とも言われている岩田規久男氏によるものだが、その内容はわかりやすく説得力がある。
「日本銀行」の陣容や機能、他国の中央銀行との比較。その仕組みや金融政策の理論と実際。詳細な考察は、専門的ではあるが、とてもわかりやすい。
最終章の「日銀改革の進め」までを読み終わると、まるで釘の頭をげんのうで叩き潰すかのような徹底した日銀批判の論理にスッキリした小気味よさを感じた。
本書を読むと、なぜ「日銀」は本書のような方針を採らないのかと思うが、日銀の人々も一流の経済専門家であるのだろうから、本書への反論も是非知りたいと思った。
とにかく、日本経済は「失われた20年」を更新中であるのだから、経済専門家は、責任問題はともかくとして、そこからの脱出策を指し示して欲しいものと痛感する。本書は、そのひとつとして高く評価できると思う。
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日銀の金融施策を企画立案しているのが経済の専門家ではなく、施策を決定する政策委員会のメンバーも全くの素人。新日銀法に規定されている「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験者」とはかけ離れた人たちで構成されている。政策目標設定の権限を牛耳り、第三者専門機関からの監視・評価もない。デフレを放置し極端にインフレを怖れる。諸外国と比べても特異な日銀の体質を様々な視点から浮き彫りにする。著者は大胆な日銀改革を提言している。日銀自らが先頭に立つ改革を期待したい。
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中央図書館で読む。予想外の本でした。もう少し硬い本だと思っていました。経済学者の書くものに、敷居が高いと思う人も、この本にはそんなことを感じることはないと思います。再読の価値があります。