紙の本
同じ事実について書かれているが
2019/03/28 23:55
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栞ちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
発効日が近く、同じタイトルの本郷和人の「承久の乱」と比較するために読んでみました。
歴史の事実について学者それぞれで、様々な解釈があるのは当然ですが、この本の著者坂井先生と、本郷先生の説の違いが明確にわかり面白いです。
ぜひ両方を読み比べてみてください。
紙の本
本郷氏の「承久の乱」との較べ読みを勧めます
2019/02/23 10:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、後鳥羽上皇と源実朝の両人の実力を説き、両者の蜜月に伴う良好な朝幕関係が、実朝の横死により対立し、遂に「承久の乱」が発生。北条氏の実力を侮っていたとしか思えない後鳥羽上皇の甘い判断もあり、幕府側が圧勝。名実ともに武士の時代が到来するターニングポイントとなった過程を丁寧に描いた良書でした。
中でも、後鳥羽上皇への接近画策について、実朝が独走した結果として暗殺されたと思っていたので、実は政子や義時以下幕府首脳が一体となって動いていたという点が最も意外でした。一方で、教科書的な無難な印象もあります。
同時期に刊行された本郷氏の「承久の乱」との較べ読みを勧めます。同じ歴史テーマなのに視点が違うと、こうも解釈が異なってくるのか驚きます。例えば、実朝暗殺について坂井氏は公曉の単独犯説は明白と主張する一方、本郷氏は北条氏の関与を疑っています。さらに、後鳥羽上皇はあくまでも義時の排除を目指したのであり「倒幕」ではないと坂井氏は主張する一方、本郷氏は倒幕を主張。全体として坂井氏の方は通説的で無難、本郷氏は踏み込んだ歴史解釈でした。個人的には本郷氏の主張の方が面白かったです。
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平成最後の天皇誕生日に本書を読む。院政のはじめからから承久の乱までの流れ。
後鳥羽院は後白河院に似た文武両道の「帝王」だった。和歌など公家として意欲的な政治を行い、鎌倉は源実朝に任せていた。しかし、鎌倉の論理で京都を乱された。乱の目的は倒幕ではなく、北条義時の討伐だった。
考えた末の挙兵ではあるが、鎌倉武士のことを理解していなかった。参謀が優秀だった鎌倉と後鳥羽院がほぼ独断だった京都。結局、院は隠岐に流され、鎌倉が京都を圧倒。結果的に幕末まで武士の世になった。
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日本史に詳しくないので、最後まで読み通せるか不安だったけど、読みやすくて通読できた。
面白かった。
平安時代(末期でいいのかな?)に成立した院政の解説から始まり、後鳥羽院の人物像、鎌倉幕府三代将軍の源実朝の惨殺、そして、承久の乱の具体的な経過、乱後の幕府の体制へと話題が進む。
承久の乱における朝廷と幕府の関係を「後鳥羽ワンマンチーム」対「チーム鎌倉」との言い表しているのが言い得て妙。
後鳥羽院による「北条義時追討」の院宣や官宣旨が発しられてから鎌倉方が入京して京方を制圧する迄の期間が約1カ月。こんなにあっさりと方がついてしまったとは知らなかった。
源実朝の死後、北条家による執権政治で幕府が治められていたのは以前から知っていたけど、源頼朝の直系が不在になってしまって将軍職は誰が継いでいたのだろう、という疑問も本書を読んで解消。将軍職は京都の摂関家の人間が派遣されていたのですね。
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フィクション『実朝の首』を読んだことが切っ掛けで本書を読む。2018年12月に出版された本書を読めたことは幸運と言える。歴史学者の視座で、後鳥羽上皇が院政を執るに至る経緯を丁寧に書き起こし、続いて実朝暗殺という史実から、本論である承久の乱へと続く道程がとてもよく分かる。勝敗の分析も良い。武家が日本を支配する世の大きな一歩となる出来事だが、その武家は徳川でさえ300年しか君臨できなかった。日本人の精神の中に、無条件で天皇という存在を肯定する何かがあるのか、その大きさを改めて感じた。
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鎌倉幕府の画期となった大乱を読み直す。後鳥羽院の目的は鎌倉幕府の打倒ではなく北条義時の排除にあった。しかし,この戦いを鎌倉幕府存続の危機として捉え直した北条政子たち幕府の要人が情報戦にも勝利したのだと。
説得力抜群で実に面白かったが,惜しむらくは一箇所ミスがあって,「妙音院藤原師長」は信西の子ではなく,悪左府藤原頼長の息子であります(p.53)。信西が「藤原定輔」にかかるかとも考えたけど,藤原定輔の父は坊門中納言藤原親信でこれも違う。重版で修正されるかな?
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認識を改めたのは、後鳥羽上皇がただ戦に負けた愚かな君主ではなかった事。承久の乱の顛末だけを見ればそう見えるのだが、実は朝廷の権威を高めようと足掻いていた事を理解した。
源実朝の暗殺がなければ、武士の世の到来はまだまだ遅れていただろう。
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後鳥羽上皇や源実朝という人が私たちの常識と如何に違っているのかを痛感した。後鳥羽と実朝は和歌の名人同士というだけでなく、深い信頼関係があり、実朝は第4代将軍を天皇家から招いて朝幕の関係を更に深めようとしていた。実朝はひ弱ではなく、名君というべき後鳥羽はカリスマ的スーパーワンマン経営者!承久の乱とは実は東西の決戦で、宇治川あたりでの戦闘が激しく、実は平家物語の宇治川の戦いの描写はこれをモデルにした!吃驚である。後鳥羽は幕府を滅ぼそうとしたのではなく、北条義時一人を除こうとしたが、討幕の動きだと義時・政子側がうまくアピールして御家人たちをまとめた。興味深い主張だったが、最近の日本史の研究成果として従来の通説が崩れつつあるようなのだ。
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隠岐に流された上皇という認識しかなかった後鳥羽上皇が、武芸ともに優れた不世出の天皇であったことを知る。公暁という一人の若者の凶行をきっかけに、日本史のあり方そのものが変わった。そして、承久の乱により、その後400年以上続く武士の世が決定づけられた。このような歴史理解を得ることができた。
中公新書の「応仁の乱」「観応の擾乱」に続く「乱シリーズ」の中でも、人間関係が比較的わかりやすく、理解しやすい。
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「大河ドラマ」のお供にと思って買ったが、結局放送が終わってからの読了(笑)
今までは頼朝による平家打倒によって武士の世が到来したと思っていたが、「真の武者の世の到来」は承久の乱を待たねばならなかったという事がよく理解できた。
平家物語でも暗躍する後白河院に比べて地味な印象の後鳥羽院は、承久の乱の敗者である事と、「新古今和歌集」の撰者である事くらいしか知らなかったが、本書によりその印象はかなり変わった。これは実朝にも言える事だが。
いずれにしても、承久の乱の影響は計り知れなく大きく、幕末の大政奉還までおよそ600年ほどの武者の世が続くことになる。
この乱の結末が変わっていたらとか、実朝が横死しなければとか、いろんなifを考えてみたくなった。
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何となく、後鳥羽上皇が、鎌倉幕府を潰そうとしたけど、反対に潰されて、島流しになった、ぐらいにしか理解してなかった「承久の乱」
白川上皇による院政誕生から、堀川、鳥羽、近衛、崇徳、後白河への流れを通して中世の始まりを説明してくれ、平治の乱、保元の乱、頼朝の鎌倉幕府までを丁寧に解説してくれる。その上で、三代将軍源実朝の暗殺、幕府に対する不信による後鳥羽上皇の承久の乱への流れを淀みなく教えてくれる。
とっても面白かった。
実朝は思っていたよりもずっと優秀な政治家であったりとか、後鳥羽も意外とまともな人物だった。
白河上皇は孫の(後の鳥羽天皇)15歳に、藤原公実の娘璋子17歳を入内させる。璋子は父亡き後、白河の養女になっていた。璋子は入内しても鳥羽と同衾せず、白河の御所に戻ってしまった。璋子が産んだ子は、白河の子だと噂される。当時白河65歳。その子は後の崇徳天皇だった。という話がなぜか心に残った。
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承久の乱をその前史から結末まで記述した一冊。乱前後で幕府と朝廷の力関係が変化し、社会構造の転機となったことが論述されている。院政期から鎌倉時代初期の流れが良く分かって勉強になった。
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承久の乱が後鳥羽上皇の倒幕運動ではなく、北条義時の追討をし、幕府をコントロール下に置こうとする意図だったのを、北条義時側は幕府に対する攻撃と捉え直すところが面白い。
源実朝という若い朝廷と融和した将軍が失われたことで、幕府と朝廷との間にヒビが入っていき、巨人後鳥羽院が動き出す様が、抗うことができない歴史の流れを強く感じた。
歴史学では、当り前なのかもしれないが、『平家物語』の印象的な場面、宇治川の先陣争いなどが、『吾妻鏡』の記事を基に作られているとあった時に、確かに文学と史書、時代の前後関係から考えると宜なるかなと納得した次第。
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後鳥羽上皇は誤解されていると著者は言う。その通りのイメージしか持っていなかった。そ「無謀にも幕府にたてつき、返り討ちにあって島流しになった、時代の流れを読めない傲慢で情けない人物」というもの。
研究が進んで、実は朝廷では最高の実力者だったし、倒幕を目指して乱を起こしたのでもない。朝廷と幕府との関係を再構築するのが狙いだったことも分かる。
でも、読み終わってますます誤解は深まったな。
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後鳥羽上皇は無謀にも鎌倉幕府打倒を企て、返り討ちにあったのか? 公武関係を劇的に変え、中世社会のあり方を決めた大乱を描く。