紙の本
メッセージには非常に共感できるのだが…
2019/09/22 17:29
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投稿者:ウリ坊のシマシマ - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯にも「ミステリ」の文字があるけど、ミステリ的な感興は感じられない。
第一章で殺人事件が起き、第二章は、その殺人事件が起きるまで。第三章と終章が解決編にあたる。分量は、第二章が全体の約3分の2、第三章と終章を併せると、第一章と同じぐらいになる。
分量からも推測できるように、読みどころは第二章なのだが、ここでは事件が起きる前の話が書かれている。第一章を読んでから読むと、推測できることも多いし、人によっては犯人さえ思い浮かぶだろう。
ただ、ここに書かれていることで、もっとも強いメッセージを感じるのは、「文化」としての「音楽」が持つ意味についてだ。また、現代芸術(美術)については否定的な言辞があるが、安易な「客寄せ」としての作品に対するものだろうと推測できる。
ただ、メッセージには非常に共感できるのだが、作品そのものにも、探偵にも、語り手にも、強く惹きつけられるものがないのが残念だ。
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綾峰県綾峰市にある古い県立音楽堂と、そこを活動拠点とする綾峰フィルに俄かに湧き起こった音楽堂の取り壊しとオケの解散問題。音楽堂跡地の有効活用とオケの助成金打ち切りを煽るカリスマDJと、なんとか音楽を、文化を守ろうとする綾峰フィルの関係者の対立。
そんななか、綾峰フィル最後の音楽堂でのコンサート中に、楽屋で男が殺された。その男こそ、音楽堂取り壊しを先導したDJだった。
綾峰フィルの顧問としてたびたび綾峰市を訪れていた音楽評論家であり、英文学教授の討木穣太郎と共に事件を目撃した小説家・フジツボムサオ。
どうみても作者の分身(笑)のフジツボ氏が、いたって冷静に討木氏本人を分析し、ツッコミをいれながら事件と、事件に至った経緯を記していくという作中作。
藤谷さんらしい音楽要素満載の物語はその大部分を綾峰フィル存続の反対派と賛成派のやり取りを中心に語られ、苦しい地方財政の中で文化を維持していくことの難しさや市民オケの存在意義、音楽を守ることの難しさなどに頁の大半が割かれている。
あとで推理に役立つかと一生懸命書き出したオケのメンバーの編成図すら全く必要もなく、肝腎の殺人事件はどどうなったんだ~と思った頃にあっさり犯人と事件のあらましが明らかになり、なんだか完全に添え物じゃん!と思った最後の最後、討木氏が示す事件の裏側にゾワッ。ん~後味わる~。
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地方オケの財政難と古い音楽堂の建て替え、地方行政と住民、探偵役である音楽評論家の教授と小説家のペア、と興味深いツボがたくさん。特に教授の討木の人間観察力と冷静さが気に入った。
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税金の無駄遣いとして、槍玉にあげられた綾峰フィルとその活動拠点の音楽堂。その最終公演で起こった殺人事件の謎を描くミステリ。
もちろんミステリなので誰が犯人か、というのはメインの謎ですが。それよりも事件以前の綾峰フィルと音楽堂を巡って起こる論争の方が色濃くて印象的でした。そこも事件の背景として重要なことなのだけれど、なかなか殺人事件の話に戻らないなあ、という思いも(苦笑)。音楽に対してはそれほど深い興味を持っているわけではないけれど、あっさりと切り捨てていいようなものでもないと思います。儲けになるかどうかだけで考えられてしまうのはなんだか悲しいなあ。
事件の謎は案外あっさり、と思いましたが。そのあとが怖い……!
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ミステリとしては首を捻る。が、ここで書かれている地方都市の現状、音楽の存在意義、煽動者に乗せられてヒートアップしていくシンパの姿、かき消される良識的な声、といった部分は、現実とかぶり、うすら寒い思いがする。
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事件が起き、事件前の状況が描かれ、そして最後に探偵役の人間が犯人の動機と手口を暴く。
時間を前後させた、いかにもな物語構成にワクワクした。淡々と進む物語なのに、全く飽きることなく終盤へ突入。
そして。
犯人がわかって……。
なんじゃこりゃ?
推理小説と思って読んではいけなかったのか。
おもしろかったんだけどね、でもちと不満(;O;)
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「音楽堂を取り壊すべきだ」という市民運動を煽った人物が殺害され音楽堂や管弦楽団関係者ほぼ全員に動機があるという設定、事件の経緯を辿っていくうちに現代の社会問題が浮かび上がってくるプロットは巧いなと思いましたが、犯人からの手紙を読んだ後はどうしても腑に落ちないことが出てきて不満が残りました。
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途中まではオーケストラの抱える問題とか、人間関係とか絡み合ってとても興味深く読めた
でも最後がちょっと噛み合ってない。名探偵を登場させたなら、スパッと解決してほしい。あの真相なら、探偵が間違ってたってことにならない?
きっと全部承知した上でのあの着地にしたってことなのかなぁ。それならもっと書きようがあっただろうに…
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地方のクラシック楽団を舞台にした殺人事件解決ミステリー。まずミステリー部分から言うと、最後まで諦めずに読まないと「おい、殺人事件はどうすんねん?」と思うし、一応の解決を観たところで「やっぱ謎解きはおまけなんか」と思うんで、絶対最後の1行まで気を抜かないこと。さすれば、背中にゾーっが走るラストが楽しめる。
そして、脱線したかのような、地方交響楽団運営の苦しさと、地方行政の問題。大阪では維新の会があれだけ人気で、文楽潰そうとしたり、カジノ作ろうとしたりしても、結局トップとってしまうあたり、他人事やないねんなぁ。まぁ、これまでも横山ノックやったし、太田房江やったし、なーんも変わってないのかもしれんけど…。っちゅか、地方行政なんて有象無象の怪しい連中のたまり場やから。