紙の本
不器用な生き方
2023/12/07 12:16
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投稿者:いぬ - この投稿者のレビュー一覧を見る
友人の店を守るために傷害事件を起こして服役することになった男の生き方があまりに不器用で悲しく涙が止まりませんでした。薬丸岳先生の小説としては250Pほどと短めですが、めちゃめちゃ内容が濃くて心に残ります。
紙の本
ラストナイト
2021/10/24 17:59
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投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひとつの事柄が複数の視点で、少しずつずらしながら語られる面白さ。視点が変わることで解決される疑問と、新たに膨らむ疑問。そんな、一気読みするしかない状態だった。
片桐はどうして罪を重ねるのだろう、自暴自棄なのか、と思いきや、深い想いがあった。それがなかなか見えてこないし、荒木の行動も怪しい。が、荒木の想いも見えてきて、一層片桐の生き方が悲しかった。
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居酒屋の店主菊池には、昔からの友人「片桐」がいる。片桐は罪を犯しては刑務所に入ったり出たりしている。昔はいいやつだったのに、なぜか顔面にヒョウ柄の入れ墨まで入れて。片桐の真意が知りたくて、ぐいぐい読み進めるお話。
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序章は冗長な感じであったが、感動的なエンディングに向かう中盤以降の展開は読み応えがあった。さすが円熟期の薬丸作品。
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脇役が主人公と接して物語る「白夜行」パターン。
単純に書くと復讐モノ。
悪いやつをもっとムカつくように描写されてたら感動も深かったかも。
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同じシーンが別の人物から見た視点で立て続けに現れてくるのは面白いです。でも、今回はなんかわざとらしいというか、ほかにあるだろうと思ってしまいました。
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幾多の罪を犯し、刑務所の出入りを繰り返す、片桐。
罪を犯す前は、幸せな家庭を築いていたが。
片桐に近い5人の視線から物語は進んでいく。
最初は嫌悪感しかなかった片桐であったが、終盤に向かうにつれて、感情がこもってきました。
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これほど、壮絶な生き方をする男がいるとは。
絵空事のような話も、著者の筆力で、その小説世界にたちまち取り込まれてしまった。
罪を犯した者の思いや贖罪を取り上げたら、著者はやはり当代一。
顔に豹柄の刺青をした特異な容貌の男の行動を、彼に関わる5人の視点で浮き上がらせる構成も見事。
ラストで、彼の思いと行動が明らかになり、涙腺を刺激されずにいられない。
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薬丸岳らしい、人間愛に溢れた小説。
顔中刺青の、犯罪歴ある主人公の男。
彼の真実の姿が、周りの人たちからの目線による物語で明らかになっていく。
そしてラストナイト、全てが明らかになった時、涙が止まりませんでした。
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片桐の孤独、そして罪を犯し続ける理由。
登場人物それぞれの立場から書かれているので、細かい描写が分かって良かった。
最後はほんとに切なかったけど、スッキリ終われた。
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とにかく切なかった。電車の中で泣いてしまった。壊れてしまった家族。戻ることは出来なくても、後悔しない様にできるだけの事をしたいという思いが沢山の人の心に刻まれたはず。
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薬丸氏の最新作、慟哭のミステリー。
人はこんなにも、人生の全てを掛けて、人を愛する事が出来るのでしょうか?
最後のエピローグで、ウルウルしてしまいました(泣)
片桐達夫、顔に豹柄模様の刺青を入れ、左手は義手。
見る者を寄せ付けないその風貌に加え、刑務所を行ったり来たりするその人生も、壮絶なものであった。
なぜ彼は、犯罪を犯し続けるのか?
その理由とは?
5章各章がそれぞれ関係者の視点で書かれ、同じシーンがそういう意味であったのか、と別の意味も生まれ、感慨深く読まされます。
最後は悲しいエンディングでしたが、解説で『ラストナイト』と言う表題の意味を知りました(なるほど)。
長い様に感じましたが、彼が出所してから、たった5日目の夜までの話なんですね。
表紙の男性のたたずむ姿は、内容にピッタリです。
薬丸作品を好きな方は、必読の書です。
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人生は幸と不幸とちょうど半分ずつになるようにできているなんて言う人もいるけれど、到底そうだとは思えない。
明るく真面目で人の好い青年が、良き伴侶と共に夢を叶えようとしていた矢先、その性格ゆえにチンピラの行いを見過ごせずに刺してしまう。以降30年以上にわたり、刑務所とシャバを行ったり来たり。まともな暮らしに戻ろうという素振りすら見せない彼は、いったい何を考えているのか。
薬丸さんの書く「事件その後の人生」はいつもとてつもなく苦しく切ない。電車の中で読んでいたら、ラストは嗚咽しそうになりました。彼の微笑みが救い。
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ストーリーに引き込まれながら読んでいくことができました。
今まで、ミステリー=推理小説=アリバイくずし、トリックくずしと考え、昔読んだからと思い、最近は読んでいませんでした。でも、この小説は違いました。私のミステリーに対する見方が変わりました。
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こういってはなんだけど、ここまで完成された作品だとは思ってなかった…… 発売当初はページ数が他の薬丸作品より少なめに感じたので、内容も軽めのものかな、と勝手に思いその時は買わず、電子書籍のセールでようやく買ったのですが…… いや、完全に自分がバカだった……
顔に刺青を彫り、再犯を繰り返す片桐。そんな片桐が再び出所。彼の出所後、数日間の足取りを友人、弁護士、娘などといった様々な人物の視点を通して描きます。
更正を願う友人は、一向に生き方を改めようとしない片桐に複雑な感情を抱き、若い弁護士は片桐とその娘の様子から、自身の過去を思い出し、そして娘は、片桐の逮捕後、母が覚醒剤に溺れ自殺したことを知り、片桐に黒い感情を持ち……
それぞれの片桐に対する思いがとにかく読ませる。元々薬丸さんの文章は読みやすいと、思っているのですが、この読みやすさと重厚なドラマを両立させるのは、やはりスゴいと言う言葉しか出てきません。デビュー作から一貫して、犯罪とその後の人々の苦悩を見つめ続けた薬丸さんだからこそできる芸当だと思います。
そして読んでいけばいくほど、片桐が再犯を繰り返すような凶悪な男にはどうしても思えず、彼が何を思って行動しているのか気になり、グイグイと読み進めてしまいます。
そして徐々に片桐をめぐる視点は核心へ。夜の街に立つ女性、そしてそれぞれの語り手をつなぐ謎の男。女性の章での一級品の犯罪小説のような緊迫感もさることながら、女性の過去と贖罪、そして片桐の言葉や行動に胸を打たれます。そして最後の男の章で、片桐のこれまでの行動の意味が明らかになったときの衝撃……
片桐の行動の意味もさることながら各語り手の話が見事に繋がるのも、薬丸さんの物語の構成力の高さを感じます。そしてミステリとしての出来に加え、罪と罰、贖罪と赦しをめぐる重厚な人間ドラマとしても、とにかく読ませます。
そして先にも書きましたが、これが結構ページ数が少ないのです。電子書籍で読んでいたので、後でサイトで確認したのですが文庫本で256ページ。このページ数でミステリとしての完成度も、犯罪をめぐる重厚な人間ドラマとしても洗練された作品を書くことができるのか、とそういう意味でも衝撃を受けました。薬丸さんはどこまで行ってしまうんだ……本当にムダのない作品だと思います。
読みやすい文章、手頃なページ数、それでいてミステリとしての完成度や、片桐の目的や真の人間性に興味を持たせ続ける展開、そして何より、犯罪をめぐる人間ドラマ……
薬丸作品を一つ誰かに勧めるとなったら、そうした総合的なバランスから一番がこれになりそう。ミルクボーイの漫才じゃないけど、栄養バランスの五角形みたいにこの作品を表すとしたら、メチャクチャ大きいものを書くだろうなあ。