紙の本
内田百けん氏による戦中の日記作品の第1巻目です!
2020/08/09 12:08
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、明治から大正、昭和にかけて、『冥途』をはじめ、『旅順入城式』、『南山寿』、『贋作吾輩は猫である』、『実説艸平記』、『阿房列車』などの小説や、独自のユーモア溢れる随筆『百鬼園日記帖』、『御馳走帖』、『新方丈記』、『百鬼園随筆』などを発表された内田百けん氏の作品です。同書は、「暫らく振りに蝋燭の明かりにて日記を書き続ける。こはいけれど空襲よりはいいだらう」という書き出しで始まる日記作品です。同氏のロングセラーである『東京焼盡』の翌日、昭和20年8月22日から21年12月末までの日記が収められています。掘立小屋にも編集者がおしかけ、毎日の酒の入手に苦労する日々を具体的かつ飄然と綴った貴重な記録です。中公文庫では全3巻シリーズで刊行されています。同書は、ぞの第1巻目です。ぜひ、読んでみてください。
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内田百閒の日記が全3冊で文庫化。
『この作家の最高傑作は、作家本人なのではないか?』と思わせる人物はなかなかいないものだが、内田百閒はそのなかなかいない1人である、少なくとも私にとっては。
小説も勿論面白いのだが、随筆もこれまた面白くて、どちらも面白いのだから、日記も矢張り楽しい。原稿の依頼を何故か断ってみたり(妙に断るという記述が目につく)、晩酌のネタが無くて文句を言っていたり(その気持ち、解るよ……)、何というか、内田百閒は愚痴を書いていても何処か明るいのだ。
読者が内田百閒を読んでいて楽しいのは、本人がなんやかんや言って人生を楽しんでいたからなんじゃないかな〜ということを考える。眉間に皺を寄せて歯軋りしている内田百閒なんて、想像つかないしねぇw
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『東京焼盡』の翌日、昭和二十年八月二十二日から二十一年十二月三十一日までを収録。掘立て小屋の暮しを飄然と綴る。〈巻末エッセイ〉谷中安規(全三巻)
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大好きな作家、内田百閒の日記。
戦後間もなくのころから昭和21年の12月31日までの日記。
戦後の雰囲気を感じるというよりも、百閒先生が書き記したその日その日の天候、その日飲んだお酒を知る。
毎日記す天気。冬の所では、暖かな日が続いた後、寒くなるというところでは、素人ながら、気圧配置などを考えた。
しかし、この日記は、誰かに読まれることを意識して書いたのか、否か。
ともかく百閒先生は、日記を書くのである。
「日記の記入の遅れたメモがたまつて限りが無いから今日(引用者註:昭和二一年十一月一日)から間に余白をあけてこの帳に記入する。間の余白は大体の見当なれば書き込みで行くと足りるか否か解らない。六月三十日以来、七八九十の四ヶ月分がメモに書きためてある。 」(274ページより)
余白にメモを残し、後日(上記のように何ヶ月後のこともあれば、数日後もあるが)しっかり書き記すのである。
ともかくも小説とは違う、内田百閒の魅力があふれた日記(の一部)である。