人間性を失わないために
2007/06/24 04:40
16人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人種や宗教などを理由として、人間が人間を見下す、差別することは、決してあってはならない。しかし、悲しいことに人類の歴史においてこのことは多く見られた。その中でもアメリカ黒人の歴史ほど、長期的かつ大規模に差別が行われた例は少ない。かつての奴隷制度といった、全く人道に反したいわれなき差別を受けてきたアメリカ黒人の歴史は、正しく記録されなければならない。そして、人類が同じ過ちを繰り返していくことの無いよう、その反社会性を明らかにしていかなければならない。
それは、日本人にとっても決して他人事ではない。
中曽根康弘氏「アメリカには黒人とかプエルトリコとか、メキシカンとか、そういうのが相当がおって、平均的にみたら(知的水準が)非常にまだ低い。」
渡辺美智雄氏「日本人は真面目に借金を返すが、アメリカには黒人やヒスパニックなんかがいて、破産しても明日から金返さなくても良いアッケラカのカーだ。」
このような言葉が平気で口から出る人たちの感覚を疑う。そして、このような感覚しか持ち得ない人たちを国会に送り込み、しかも一人は総理大臣にまで持ち上げた我々は恥じなければならない。差別者を国の代表として選び出した我々も、差別の共犯者と言われてもしかたがない。
かつて日本は、中国・朝鮮をはじめとするアジア諸国の人達をひどく差別した。そしてその差別意識と自分たちの誤った優越感を基に、それらの国々への侵略戦争を行った。低俗な差別意識が根底にあったからこそ、日本軍兵士たちは人間性を失い、その国の人たちに乱暴狼藉を働いた。
その差別感覚は、日本が敗戦により打ちのめされても完全にも消えることはなかった。現代においても、日本の首都東京の知事は平気でアジア諸国蔑視発言を繰り返す。その知事を支持する人が多い。
そんな日本人にこそ、この本をじっくり腰をすえて読んで欲しい。
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投稿者:In - この投稿者のレビュー一覧を見る
サークルで後輩の指導の関係上必要になったので読んだ。 今まで、アメリカの白人が黒人を態々アフリカのモンロビア(のちのリベリア)まで送り返していたのかが、分からなかったが、本書を通してその理由が明らかになった。 本書は階級闘争史観が滲み出ているが、その点を除けば事実関係などを確認するためによく学べる良書だと思う。
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プロローグで1991年当時のアメリカ黒人の現状・定義を述べたあと、植民地時代の奴隷制度からこの本の発刊される1991年までのアメリカ黒人の苦難の歴史をたどる。
簡単にまとめるなら、数々の運動を通して政治・社会的な平等を手に入れたものの黒人一般の経済状態は悪化しており、そういった意味ではアメリカの黒人問題は解決しておらず、これから実証的・理論的な解明が望まれるがむしろ発展したアメリカ資本主義の構造的な問題だとみるべきだそうだ。
著者が締めくくりに引用したキング牧師の最後の著作『黒人の進む道』から。
「《ブラック・パワー》というスローガンよりも、《貧しい人々のためのパワー》というスローガンのほうが、いっそうはるかに適当であろう。……要するに、黒人の問題は、アメリカ社会全体が、より大きな経済的正義に向かって新しい方向転換をしなければ、解決することはできないのだということである。」
全体的にわかりやすく時代ごとにまとまっていてよい。ただし二十年近く昔の本。
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イギリス植民地時代から現代(と言っても80年代)までのアメリカ黒人の歴史に関する概説書。公民権運動の部分を除いて、生々しいエピソードの紹介や著者の独自の視点や解釈といったものはあまりなく、史実とその背景、データを追いながら、黒人の歴史の概観を掴めるようになっている。アメリカを知る上で欠かせない黒人の歴史についていの基本的な入門書。(07/06/19)
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アメリカ黒人は、長い間植民地の奴隷となっていた。奴隷となった黒人は、長くきつい労働をさせられていた。現在では、奴隷制度はなくなっているが差別が完全になくなっているわけではない。法律上は平等となってはいるが、差別はいまだに残っている。その一例が、水泳大会では、あまり黒人がいないのはそのせいである。白人は、黒人の水には入れないという時代もあったという。差別はあってはいけないことである。人種も関係なく暮らしていくのが本当の平和ではないのだろうか。
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黒人の中でも、アメリカに住む黒人にスポットを当てている。キング牧師の公民権運動は、それまで幾多の黒人たちが繰り広げてきた闘争が結実したものである。
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●内容紹介
合衆国総人口の約十二パーセント、三千万人以上を占める黒人たち。人間としての、市民としての平等を求める彼らの闘いは、どのようなものであったのか。合衆国独立前から南北戦争を経て公民権運動へ、さらに真の解放を目指す現在までの長い苦闘の歩みを歴史的発展とともにたどる。旧版以後二十七年の変化を見据え、大幅に書き改めた。
●目次
プロローグ アメリカ黒人とは
1 植民地時代の奴隷制度
2 独立革命
3 南部の綿花王国
4 奴隷制廃止運動
5 南北戦争
6 南部の再建と黒人差別制度
7 近代黒人解放運動
8 公民権闘争の開幕
9 黒人革命
10 アメリカ黒人の現在
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[ 内容 ]
合衆国総人口の約十二パーセント、三千万人以上を占める黒人たち。
人間としての、市民としての平等を求める彼らの闘いは、どのようなものであったのか。
合衆国独立前から南北戦争を経て公民権運動へ、さらに真の解放を目指す現在までの長い苦闘の歩みを歴史的発展とともにたどる。
旧版以後二十七年の変化を見据え、大幅に書き改めた。
[ 目次 ]
プロローグ アメリカ黒人とは
1 植民地時代の奴隷制度
2 独立革命
3 南部の綿花王国
4 奴隷制廃止運動
5 南北戦争
6 南部の再建と黒人差別制度
7 近代黒人解放運動
8 公民権闘争の開幕
9 黒人革命
10 アメリカ黒人の現在
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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ゴスペルについて読んでたら、何となく行き当たった一冊。
ゴスペルの起源は黒人霊歌。
ふと、オバマの就任演説を思い出した。実に感動的だったんだがな。
黒人大統領。
その意味は実に大きかったんだがな。
黒人文化を、大雑把に掴む為の入門編ってところ。
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タイトル通り、アメリカにおける黒人の歴史を年代順に、分かりやすく解説した一冊。大きな事件だけをクローズアップするのではなく、それぞれの時代の様子が丁寧に説明されているので、大きな事件や各戦争へ繋がって行った経緯がよく分かる。
さらに、最後の章で述べられている通り、アメリカにおいて黒人問題は未だ、解決してはいない。貧困という問題と絡み合いながら、より複雑化しながらも歴然と存在するのだ。形は違っても、格差という社会問題は日本にとっても他人事ではない。そのことがよく分かる内容だった。
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モントゴメリーでのローザパークスの行動が、マルチンルーサーキング牧師の非暴力的抵抗に繋がっていく,黒人運動の歴史を知るのによい。
黒人大統領の登場を含む,改定版が出るのを期待する。
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差別の本質とは何だろうと考えてみると、自らの経済状況や生活を脅かす存在を排除しようとする気持ちがその大きな要因の一つではないかと、少なくとも本書を読んで感じた。だとしたら、理想的な平等主義を唱えることでは、差別は根絶できない、ということを認識すべきだろうと思う。
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1863年のリンカーンの奴隷解放宣言に始まり、
100年後の1964年にようやく公民権法が成立する。
このあたりで差別は無くなったかと思ってしまうが、
まだまだアフリカ系アメリカ人を取り巻く状況は厳しい。
未だ差別による負の遺産は残っているのだ。
アメリカという国が成立した時点で、
この国における黒人奴隷という歴史もまた始ったのは
何とも不幸なことだと思う。
ちょっと内容が古いので、
最新の状況については別の本で補完する必要がある。
ただ、建国前後と奴隷解放宣言以降数十年の記述については
非常に参考になった。
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(2014.10.04読了)(2009.06.30購入)
黒人が大統領になっているアメリカですが、相変わらず、黒人に対するあからさまな差別行為が治まらないようです。自分のことを考えても、外国人にどう接したらいいのかというとまどいが、無いわけではないので、差別意識をなくすというのは、そんなに簡単なことではないとは思います。
この本は、アメリカで黒人がどのように扱われてきたのかを歴史家が書いたものです。
奴隷というと、黒人というイメージがありますが、歴史的に見ると、黒人だけが奴隷だったわけではないといわれると、確かにそうだったなと思います。
アメリカ大陸の発見が行われた後、アメリカ・インディアンとかインディオといわれる人たちが、労働力として使われていたのですが、ヨーロッパから持ち込まれた病気のために、多くの労働力が失われてしまいました。
その失われた労働力を補うために、アフリカから黒人が運ばれてきて、労働力として使われるようになりました。インディオも黒人も、人間として扱われることがなかったという点では、一緒です。
白人も黒人も同じ人間である、と認めると建国に理念に反してしまうので、認めるわけにはいかないし、白人が信仰しているキリスト教の教えにも反してしまいます。
アメリカ南部の主要産業は、綿花の栽培でした。綿花の収穫には、安い大量の労働力が必要でした。そのために、奴隷労働者としての、黒人が必要だったのです。
南北戦争の結果、奴隷制度の廃止が宣言されましたが、差別は残りました。
リンカーンも、白人と黒人を対等に扱う気は、最初からあったわけではなさそうです。黒人を開放し、アフリカに帰そうという考えに共感していたとのことです。
奴隷制度が廃止されても、法律の上で、差別することは許されていた。例えば、選挙権を字を読み書きできない人には、与えなくてよいとか。
バスや食堂、トイレ、学校なども、白人と黒人では、分けられており南アフリカで行われていた、アパルトヘイトと同じような状況でした。
公民権運動として、対等に扱ってもらうための運動が行われ、ケネディ大統領のときに法案がつくられ、死後、成立しています。
それが、1964年ですので、今年で50年ということになります。
その後、黒人の社会進出が行われ、黒人の市長や知事などが実現し、大統領まで実現しています。その分、黒人の間の格差も広がって来たということにはなりますが。
【目次】
はしがき
プロローグ アメリカ黒人とは
1 植民地時代の奴隷制度
2 独立革命
3 南部の綿花王国
4 奴隷制廃止運動
5 南北戦争
6 南部の再建と黒人差別制度
7 近代黒人解放運動
8 公民権闘争の開幕
9 黒人革命
10 アメリカ黒人の現在
アメリカ黒人史略年表
●黒人奴隷(71頁)
黒人奴隷とは、一切の権利を剥奪され、獣の水準に引き下げられて、法律上はたんなる動産にすぎず、人類の同胞関係の圏外に置かれ、人間族から切り離された人間存在である。彼ら黒人奴隷には、これが自分のものだといえるものは、何一つない。
●リンカン(115頁)
この戦争におけるリンカンの最高目的が、奴隷解放にではなく連邦の統一護持にあったことが示されている。
●リンカンの考え(118頁)
奴隷解放のことが日程にのぼらざるを得なくなったときにも、リンカンは、できることなら奴隷は漸進的に解放し、その所有者には補償金を支払い、なおかつ解放された黒人はアフリカかどこかに植民させるのがよいと考えていた。だが、黒人の側からの強い反対と国会における共和党急進派の活躍が、このようなリンカンの考えを粉砕した。
●選挙権の剥奪(143頁)
1890年から20世紀初頭にかけて、ミシシッピ州を皮切りに南部諸州を席巻した黒人選挙権の剥奪は、こうして起こった。そのミシシッピ州では、憲法修正第15条に抵触しないように、黒人選挙権の剥奪は、州憲法の中に「人頭税」や「読み書き試験」を取り入れることによって行われた。
●バス乗車拒否運動(179頁)
1956年11月13日、連邦最高裁判所は「バスの人権隔離は違憲である」との判決を下し、その命令が12月20日にモントゴメリー市当局に通達されて、この抵抗運動は黒人側の全面勝利をもってその幕を閉じた。
☆関連図書(既読)
「アメリカの階梯」西垣通著、講談社、2004.09.07
「キング牧師とマルコムX」上坂昇著、講談社現代新書、1994.12.20
「物語アメリカの歴史」猿谷要著、中公新書、1991.10.25
「黒い積荷」マニックス著・土田とも訳、平凡社、1976.03.18
「ぼくの肌は黒い」吉田ルイ子著、ポプラ社、1978.07.30
「ハーレムの熱い日々」吉田ルイ子著、講談社文庫、1979.01.15
「怒りの葡萄(上)」スタインベック著・石一郎訳、角川文庫、1956.09.10
「怒りの葡萄(中)」スタインベック著・石一郎訳、角川文庫、1956.09.20
「怒りの葡萄(下)」スタインベック著・石一郎訳、角川文庫、1956.11.05
「風と共に去りぬ1」ミッチェル著・大久保康雄訳、河出書房新社、1960.03.
「風と共に去りぬ2」ミッチェル著・大久保康雄訳、河出書房新社、1960.03.
「風と共に去りぬ3」ミッチェル著・大久保康雄訳、河出書房新社、1960.03.
(2014年10月15日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
合衆国総人口の約十二パーセント、三千万人以上を占める黒人たち。人間としての、市民としての平等を求める彼らの闘いは、どのようなものであったのか。合衆国独立前から南北戦争を経て公民権運動へ、さらに真の解放を目指す現在までの長い苦闘の歩みを歴史的発展とともにたどる。旧版以後二十七年の変化を見据え、大幅に書き改めた。
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1991年刊行。米国の黒歴史、あるいは現代をも貫く闇の部分。黒人奴隷、差別、そしてその軽減・解消と、その限界・現代的課題を史的事実をビビッドに交えつつ、検討していく。本書の起点は17世紀初頭の黒人輸入。終点は1968年のキング牧師暗殺で、その後は黒人の分権化・二極化を粗描するのみ。独立戦争、南北戦争と各々の要因等は、米国史を理解している方が取組やすいかも。ただ、本書の叙述も判りよいことは間違いない。著者は一橋大学教授。黒人解放運動と、労働運動との連関性にも言及。個人的には、➀米国綿花等プランテーション。
②南北戦争における黒人の意義。③南北戦争後の南部大地主+北部の資本家に対抗した黒人その他と、その行動の歴史と挫折に関心を払いたいところ。