紙の本
石原慎太郎
2020/03/19 00:39
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の主眼は、なぜ旧体制への批判者として現れた石原慎太郎が国家主義的な路線へシフトしていったのか、ということにあると思う。石原は戦後を生きる中で、日々に(つまりは戦後に)虚脱感を覚えるが、それでも健康的に生きるには国家という手がかりが必要だったのだろうと考えた。
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石原慎太郎の辿ってきた道がよくわかった。
「成熟」の難しさ。大人になることの難しさ。
幼児のまま大人になった男性に委ねられている日本という国。
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書くという行動手段があったのに、政治家になるという行動手段を選んだことに興味がありました。しかし、政治家として特別な成果を出すことは難しく、確かに、「声高にナショナリズムを叫ぶ。着地しない。(P138)」印象が拭えません。知覧に行って、特効隊員一人ひとりの家族の物語を思い至ることはあっても、そこから国家が浮き彫りになるロマンティックな物語が私には見えてこなかったです。
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日本語表現・分かりやすさ3/3。内容の価値3/3。
「幾度もの挫折の末に、彼がたどり着いたのはナショナリズム」(p,113)は、少し違うと思う。たどり着いたのは政治家という仕事であり、それをやっていくための芸風がナショナリズムである。
参院選に初めて出て当選したのが68年。その2年前に肝炎で入院しているが、絶対安静でありながらベッドに身を起こして原稿を書いていたという。何故かといえば、そうでもしないと食えない、そういう仕事をしているから。この時彼は34歳ぐらいのはずで、経済的な意味での将来への不安は大きかったであろう。人間30代で仕込みを終わらせておかなければ、40代50代で楽に大きく稼ぐことはできない。芥川賞なぞ取ってもしばらくすればすっかり忘れ去られる人は少なくないわけで、そんな例も身近にたくさん見ていたであろう。
就職をしていないから、今さらサラリーマンにはなれない。ビジネスを起こす才覚も度胸も経験もない。が、知名度はある(事実、初当選時、史上最高得票数を獲得している)。彼にすればごく自然な転職であったろう。つまりこれは「文学から政治への転向」などというものではなく「小説家から政治家への転職」。ただそう見えてしまっては「政治家」の方の稼業がなりたたないから、文才を生かして、それらしいことを言ってるだけ。
彼のチック、自己愛性人格障害についてまで踏み込めればもっと面白い文になったと思うが、本書の趣旨(NHK出版の「シリーズ・戦後思想のエッセンス」)の紙数ではそれは無理だったでしょう。